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先日、国立新美術館のモディリアーニ展に行きました。

展示物が思ったほど多くなかったようでしたが、モディリアーニの定番ともいえる長首、白目、なで肩の人物画のみならず、風景画(!)や彫刻家を目指した頃の立体的なフォルムにこだわった作品なども展示されており、中にはこれまでほとんど展示されなかったものもあるそうなのですが、彼の絵の変遷が分かるようになっていて、なかなか楽しめました。

私はモディリアーニの作品がけっこう好きなんですね。セザンヌみたいな構成とかたまり感とか、全体を貫くあやうさや不安感と気品に惹かれるようです。まあ、つきつめると絵は感性に訴えるものですから、理屈ではないのでしょうけども。

あと、劇的な生き様、インパクトのあるキャラクターのせいもあると思います。私のイメージは、『モンパルナスの灯』という1950年代の古い映画にかなり影響されています。

モディリアーニの生きた当時のパリの文化の中心はモンパルナスというセーヌ川の南側(左岸)にありました。世紀末から20世紀初頭まではムーラン=ルージュなどがあるセーヌ川北のモンマルトル(右岸)にあったのが移ってきたわけですが(そのあとサン=ジェルマン=デプレ界隈に移る)、そんな時代背景を反映したタイトルです。

(ちなみに、モディリアーニの生きた時代、彼を取り巻いていた環境も興味深いものがありますよね。モディリアーニが生きた時代、主として戦間期は、世界中から、エコール・ド・パリとも言われた優れた画家(シャガール、スーティン、藤田嗣治など)がパリに集まった時代でした。19世紀末から第二次大戦くらいまで(特に1920年代の狂騒の時代)のパリは、絵画だけでなく、文学(ゾラ、モーパッサン)、哲学・社会学(サルトル、デュルケーム、ベルクソン)、シュールレアリスムなど、様々な文化の分野において一流の人々が集まり、華々しく世界に向けて発信されるという熱い時代だったといわれます。ガーシュインの「パリのアメリカ人」は米国人の芸術家(ガートルード・スタイン、ヘミングウェイら「ロスト・ジェネレーション」)をイメージして作られたんですよね。ヴィンセント・ミネリ監督のミュージカル映画にもなりましたが、ロートレックの絵が動き出すシーンが印象的でした。こういう熱い時代の一コマに思いをはせるとなんだかトキメキます。)

この映画でモディリアーニを演じたジェラール・フィリップは、華奢で色白、いかにも病弱そうな二枚目で、それはもうイメージとぴったりでした。しかも制作翌年、モディリアーニのように36歳の若さで亡くなってしまいます。私はこの人のことが一時期異様に気になって、主演の映画を見まくったり(古いのでなかなか見つからない)、似顔絵を描いたりまでしたものでした。いったい何を考えていたのでしょうか。自分でも分かりません。ちなみに岡田真澄の愛称「ファンファン」はこの人の『花咲ける騎士道』という映画のキャラクターからとられたそうです。

映画はというと、ご想像のとおりで、とにかく暗い、やるせないんですね。うろおぼえですが、暗闇の中からぼやーっとジェラール・フィリップの顔だけが浮かんで一人語りを始めたりするシーンがあって、それもなんとも言えないハスキーで気品ある声で魅力的なのですが、それでも気分は暗くなる一方だったと記憶しています。この頃の色んなフランス映画に出てくるリノ・ベンチュラ(手塚治虫の漫画によく出てくる悪役のモデルだったとかどこかで聞いた気がするのですが、違ったか。でも似てます。『冒険者たち』の役が特に好きです。)、『男と女』で有名なアヌーク・エーメらが共演しています。

どうでもいいのですが、同時期に見た映画に『モンパルナスの夜』というのがあって、こちらはフランスの名探偵メグレ警部の話で、まったくの別物なんですけども、タイトルがあまりに似ているので時々混乱します。こちらは戦前の映画で、ナチス占領下でナチスに殺された(と言われる)アリ・ボールという、ジャン・ギャバンやルイ・ジューヴェと並ぶ伝説の名優を見ることができます。どうでもいいついでにいうと、『モンパルナスの灯』の監督のジャック・ベッケルの作品に『現金(げんなま)に手を出すな』(1955年)という映画があるのですが、これとキューブリックの『現金(げんなま)に体を張れ』(1954年)という映画もすごく紛らわしかったです。推測ですが、日本での上映時期が近かったのでこんな邦訳にしたになったのではないでしょうか。制作年も近いし。一時期乱発した『愛と哀しみ・・・』『愛と青春・・・』現象みたいなもんではないかと思います。さらにどうでもいい話を広げると、『現金に体を張れ』は『アスファルト・ジャングル』(無名時代のマリリン・モンローが出ている)という映画ととても似ています。主演が同じ人(スターリング・ヘイドン)というのもあるのですが、比べてみると面白いと思います。この頃は色んな犯罪映画あって、私は一時期はまってずいぶん見たのですが、どうも最後は救われない報われないという落ちにするのが定番だったみたいで、『現金に体を張れ』の衝撃的なラストは『アスファルト・ジャングル』の監督であるジョン・ヒューストンの『黄金』(ハンフリー・ボガードが小悪党を演じる)のラストとかぶります。ハラハラして見たあげく、これかい!というエンディング、とてもとても疲れます。

今はツタヤやDVD販売で何でも見つかりそうですけど、昔はこういう映画がなかなか見られませんでした。BSのオンエアをチェックしたり、大学に入ったら視聴覚室に古い映画のVHSがたくさん置いてあったので、ただで見られるということもあって、授業の合間に見まくったりしたものでした。あと銀座や渋谷でたまにやる上映に行ったりもしました。パゾリーニという監督の特集を見に行ったときは、自分以外の観客の人たちがいったいどういう人なのか、何を好きこのんでこんな特集を見に来ているのか、気になったものです。たぶん他の人たちも私を見てそう思っていたのでしょう。ただ、いくつかの映画館はもうなくなってしまったみたいですね。

もう文章が支離滅裂になってきましたが、強引にモディリアーニに戻ると、パリっていいですよね。私は二回しか行ったことないですし、フランス語もできませんが、いつかフランス語ができるようになって、短期間でもいいから何度も訪問して、フランスの文化につかってみたいと思います。たぶん多くのミーハーな日本人が抱くであろう浅薄な妄想なんでしょうけど、私のプチ・ドリームの一つです。

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