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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



「セネガル紀行」の続きです。

マリには6日間滞在しました。

首都バマコに着いて、その日のうちにモプチに移動(後述しますが、このバスが不意打ち的に夜行バスになりました笑)し、モプチをベースにして、バンディアガラ(ドゴンの村)とジェンネに日帰り旅行するという形をとりました。

マリは、UNDPの人間開発ランキングでも最下位に近い国で、世界の最貧国の一つです。

ガバナンスは、90年代はじめにクーデターがありましたが、それ以降は極めて安定しています。
このクーデターに参加し、元首となった軍人アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ(通称ATT(アー・テー・テー))は、現在の大統領です。しかし、クーデターからずっと居座ったわけではありません。彼は、元首に就いた後、1年後に民政移管を実現し、すぐに権力の座から降りたのです。そして、10年後、正々堂々と大統領選に立候補し、当選しました。「セネガル紀行」で述べたとおり、権力の座に数十年も居座る為政者が多い中、自らを律して民主主義を実現し、公正なプロセスで再び国の指導者となったATTは、まさにアフリカの良きgerontocracyの体現者といえます。マリ国民の支持は絶大であり、今回私が旅行した中で会ったマリ人の中で、彼を悪く言う人は一人もいませんでした。

また、マリ人は非常にまじめで、優しい人が多いです。
今回の旅行でも、フランス語がろくにできない私に親切にしてくれた人は数多く、バスの案内をしてくれたり、ひまつぶしの世間話に付き合ってくれたり、軽いご飯をくれたり、帰国後メールをくれたりしました。旅行者を騙したりぼったくるような人もほとんどいません。そのホスピタリティには深い感銘を受けました。
そして、なんと言っても子どものかわいらしさが格別です。マリの子供たちは、なぜか皆外国人が大好きで、「サバ(こんにちは)!」「トゥバブ(white=白人の意味。黒人以外は皆こう呼ぶ。)!」と言って、猛烈に手を振って、どんどんこちらに集まってきます。物乞いをする子どもは一人もおらず、ただ純粋に好奇心と親しみの情から接してくれるのです。握手をして、一緒に写真を撮ると、それはもう大変な喜びようです。この純粋無垢なかわいらしさには、本当にやられました。

  

政治が安定し、人々もまじめであれば、発展してもいいんじゃないか?と思うかもしれません。しかし、砂漠ばかりで、とにかく国土が貧しく、産業が発達しないようです。セネガルなどと違って、海がないのも大きなハンデとなっています。貿易が大きく制限されますから。ASEANを見ても、島嶼国と内陸国ではその発展に雲泥の差がありますよね。気の毒ですが厳しい現実です。

マリの文化は、独特な魅力があって、世界的によく知られています。
音楽では、世界的に人気のあるミュージシャンとして、サリフ・ケイタが挙げられますね。「セネガル紀行」で述べたユッスー・ンドゥールらはグリオ(吟遊詩人)出身ですが、サリフ・ケイタは、マリ王国の王族出身といわれており、西アフリカでは珍しくグリオ出身ではないミュージシャンです。首都バマコには、私も好きな彼のアルバム『Moffou』と同名のライブハウスがあり、自身ひんぱんに演奏しているそうです。私も行きたかったのですが時間が足りませんでした。

観光資源は充実してます。
ハイライトの一つはドゴンの住むバンディアガラ。ドゴンは、独特の神話体系をもち、古代からの生活を維持している民族で、文化人類学者マルセル・グリオールの研究で有名になりました。今回、ドゴンの村をいくつか訪れましたが、そのある意味原始的な生活は他で見ることのできない魅力があります。「バンディアガラの崖」と言われる居住地域にある巨大な断崖は、圧倒的な景観を誇っており、世界遺産となっています。かつてドゴンはこの崖のかなり高い位置に土の居住施設を作っており、そのいくつかは今でも見ることができます。この居住施設も、神話をモチーフにした彫刻などが施されており、なかなか神秘的で味があります。

  

他、泥のモスクで有名なジェンネ、ニジェール川下り、古代都市ティンブクトゥも有名です。

  

ティンブクトゥは、その不思議な音感から、言葉だけは聞いたことがある、という人も多いと思います。ポール・オースターの小説に『ティンブクトゥ』もありましたね。そんなわけで非常に有名なところですが、今回は時間がないのと、アルカイダが活動している地域ということもあって、残念ながら訪問できませんでした。ただ、ティンブクトゥには、誰もが過剰な期待を抱く傾向があるらしく、そのため、英語のスラングで「dissapointment」を意味するそうです。そこまで一般名詞化するのも逆にすごいことですが。

正直、旅行は大変です。バックパック旅行の中でも難度は高いほうでしょう。
交通機関はバスしかなく、このバスがいつ出るか、どのくらい時間がかかるか、なかなか分からず、計算が立てにくいです。実際、私がバマコからモプチに行くバスは、1時に出ると言われたのに出たのは4時、その日のうちに着くと見込まれたのに、着いたのは翌日8時、なんと16時間もかかりました。暑さと湿気、人の混雑がひどい中での不意打ちのような夜行バス、これは30を超えた身にはかなり厳しかったです。笑

  

ご飯も、肉料理が多く、シチューのようにして食べますが、セネガルと比べるとかなり劣ります。
特に米にあたるもの(クスクスなど)がパサパサで、色んな途上国の食べ物を食べてきた私も、個人的にはちょっと、いや正直に言えば(笑)、かなり不味いと思いました。とてもこれだけ食うのは無理。日本の白米の美味しさ、ありがたみを思い知らされましたね。

  

宿は、モプチのようなところはバックパッカー向けの安宿しかないとはいえ(バマコには一つ二つ高級ホテルがあります)、それなりに整ってはいます。セネガル同様、Wi-Fiも通じます。

(ホテルといえば、バマコに異様な巨大建造物があって、マリの人に「これは何なんだ?」と聞いたら、「カッザーフィ(カダフィ)大佐がつくったホテルだ。趣味悪いだろう?」と言われました。「アフリカの王」を目指すカッザーフィはアフリカのあちこちでお金をばらまいていたことで有名ですが、まさにその典型例がこれかと妙に感心。もう何か本人のキャラが全開という感じの本当に特異なデザインでした。)

それから、セネガルもそうですが、蚊がうっとおしいです。刺されまくります。一応マラリアにも気をつけないといけません。予防のため、どこの宿にも蚊帳がついています。

  

しかし、前述のとおり、マリは魅力に満ちた国であり、こういった大変さを補ってあまりある面白さがあります。西アフリカに興味をもった人にはぜひ訪れてみて欲しいです。

なお、「セネガル紀行」でも触れましたが、随所で日本のプレゼンスの相対的な低下を感じました。中国に関しては、その経済規模の拡大、アフリカへの攻勢を見れば明らかですし、想定していたことですが、韓国がここまで食い込んでいたというのは意外でした。このことは、最後の欧州紀行文でまとめて書きたいと思います。

次回「ロンドン研修」に続きます。

・・・
最近読んだ本。

■ カーメン・ラインハート&ケネス・ロゴフ 『国家は破綻する』 
経済学のスーパースター、ロゴフの最新著作。
原題は「This Time Is Different」。国家のデフォルト(国外債務/国内債務)のみならず、銀行危機・通貨危機・インフレ危機を含め、66ヶ国、800年の金融危機を対象に定量分析を行い、「今回は違う」シンドロームを批判する。
結論はどれも常識的に見えるが、それを支えるデータ分析が凄い(キンドルバーガー『熱狂、恐慌、崩壊―金融恐慌の歴史』とは違うところ)。今起こっているギリシャ危機についてはもちろん、これから先も長く資料として重宝しそう。
国家のデフォルトは返済能力より返済意思にかかっているという指摘(国家への貸付・債権回収の特殊性:評判、制度、法的メカニズム)、資本移動の増加(国際金融のトリレンマと関連)と銀行危機の相関関係はなるほど。国内債務デフォルトの分析は、まさに個人的に最大の興味をそそられるところだったが、今後の課題。
それにしても、この本、訳はこなれて読みやすいけど、なんでこんなにフォントが大きいのだろう。

■ 伊勢田哲治 『疑似科学と科学の哲学』 
「疑似科学」との比較というアプローチによって、「科学」のエッセンスを巧みに浮かび上がらせている。読みやすく、科学哲学の入門書としてお勧め。
機械論/生気論+目的論、生物学と代替医療、Bayesian Ruleの明快な説明はなるほどなと深く腑に落ちた。ずいぶん昔にやったeconometricsの記憶がよみがえる。
それにしても、機械論(局在論)/生気論(ホーリズム)の対立のような根源的・哲学的難問(決定論と自由意志、心・魂の実在と裏表となる議論)は、前回紹介した『サブリミナル・マインド』にもあるとおり、心の哲学、認知神経科学、生理学から迫ると驚くほど地平が広がる。
ヴィトゲンシュタイン、アンスコム、デヴィッドソン、黒田亘らの行為論、刑法上の「責任」の体系も然り。そういうわけで、今この方面に猛烈な関心がわいている。
人文学も面白いが、結局テクストの収集・取捨選択の勝負という点で時々醒めるときがある(人文学の基盤はフィロロジー(クリティーク)にある)。それよりも、哲学(形而上学)とサイエンスが切り結ぶところ(そしてサイエンスの基盤としての科学哲学)を考えることが、今の自分には刺激に満ちている。

コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (Alice)
2011-09-21 00:48:50
 遺跡は魅力的ですが、やじゅんさんからみてきつい旅行は私には無理です…。
 けど、写真綺麗ですね。子供の表情もいいし。内陸国は大変だけど、頑張ってほしいです。とりあえず、インフラ整備したら、観光もっといけるのではないでしょうか。
 あとは…やはりインフラ整備したら、物流拠点もいけますかね?
 すべて思いつきですから有効性はないかもしれません

 韓国の欧米や中近東、アフリカへの浸透はすさまじいものがありますね。このフットワークの軽さと政府、大企業、芸能界、スポーツ界が一体となったパワーは凄まじいです。

 ただ、その裏側の競争の厳しさ、一部の勝者とそれ以外の格差は、私だったら死んでしまうレベルですね~。

 それはともかく、欧州編楽しみにしています。
 
 
 
Unknown (外務省出身某衆議院議員)
2011-09-22 00:05:32
バンジャガラの崖、行きましたか。私も13年前に行きました。
彼等の宗教感は八百万の神的でした。だから、イスラム勢力に押しやられて、あんな変な場所に住まざるを得なかったのでしょう。
あと、ジェンネのモスクとインドネシアのモスク、共通点は何処なんでしょうか。イスラム世界の多様性というのは日本にいると見えにくいですよね。
 
 
 
Unknown (やじゅん)
2011-09-22 11:45:01
>Aliceさん
写真入れたら、何かちょっとプロっぽいHPになりましたね。
私も、開発に詳しくないので、何とも言えないのですが、携帯やインターネットの普及、外国投資のあり方とか、ちょっと状況が変わりつつありますよね。何十年も期待を裏切り続けて、悲観論に傾きがちですが、成熟した地域の停滞、新興地域の急成長と世界経済の牽引という流れがありますから、アフリカにも期待したいです。
韓国は、グローバルな市場進出と国内での犠牲がある意味セットになった形なんでしょうね。一つのモデルでしょうか。
 
 
 
Unknown (やじゅん)
2011-09-22 12:05:08
>某衆議院議員さん
こんなところをご覧いただいて、しかもコメントまでいただいて、大変恐縮しています。汗

西アフリカに行ってみたいと強く思うようになったのは、実は、某衆議院議員さんの書かれた文章を読んだことが一つのきっかけになっています。とても魅力的な、エネルギーに満ちた文章で、多大な影響を受けました。

ドゴンの文化は興味深かったです。なるほど、その宗教観を守り続けたのはすごいことですね。西アフリカのイスラムですが、たしかに、頭では分かっていても、実際に行って初めて、そうか、この人たちもイスラム教徒なんだよな、という感覚を不思議におぼえました。アラブ、アジアとは全然違いますね。イランもそうですが、土着的なものを強く感じます。日本にいて「イスラム」なるものを固定的にイメージしていると、本当に、こういう姿は見えてこないように思いました。

ご活躍はいつも拝見しています。また、色々な人に、自分の先輩にはこういう人がいるんだと、自慢しています。微力ですが、これからも応援させていただきます。
 
 
 
Unknown (yagian)
2011-09-27 04:58:28
とある日本企業の内部にいると、リスクを取って大きな利益を得ようという姿勢があまりないように(なってきた?)感じます。

アフリカでのプロジェクトをする場合、危険はないのかしつこく問われますし、先行投資的なプロジェクトは歓迎されず、短期的にリターンが確保できなければわざわざアフリカで事業しなくても、というスタンスですね。

日本企業一般がこういった感じなのかはよくわかりませんが、当社ではアフリカに他に先んじて入り込もうという意欲はないですねぇ。リスクを取るのが賢いのかどうか、よくわからないですけど…。
 
 
 
Unknown (やじゅん)
2011-09-28 02:09:03
>yagianさん
ご経験に裏打ちされた、貴重なご意見をいただき、どうもありがとうございます。

私などが、企業の意思決定について何も言う立場にはないのですが(汗)、一つには、ターゲットをどこに置いているのかという点があるのかな、と思います。

yagianさんのお仕事は、国内(というより、非アフリカと言った方が正確でしょうか)にターゲットを定めて、そこで採算がとれているようにお見受けします。そうであれば、(おそらく今の多くの企業がそうであるように、財務状況が良くない中で)あえてアフリカに出てリスクをとることに合理性はないように思います。

でも韓国なんかは、おそらく国内にターゲットを置いても採算がとれないのだろうと思います。そうであれば、アフリカも含め、国外にターゲットを定めて売らないといけない。最初からそういう考えがあって、次にリスクを考え、行動に移す。それはそれで合理的のように思います。

日本企業も、韓国のように、(分野にもよりますが)かつては多くの企業が輸出に力を注ぎ、なりふり構わず、海外市場の開拓に全力を注いでいたのだろうと思います。でも、今は新興国の台頭(あるいは世界経済における役割の交代)から、国際競争力の低下があり、また、日本の国内市場も成熟し、内需でかなり稼げるようになった(そういう方向に誘導する米国の思惑もありました)。その上、不況もあって、拡大路線の余裕もなくなってきた。そんな変化もあるような気がします。

ただ、現在多くの企業が直面するようになった問題は、日本国内の市場の頭打ちにあるのだろうと思います。一方で、リスクをとる体力が削られている。(全ての企業や分野にあてはまるわけではないと思いますが)何となくここにジレンマか悪循環があるような気がします。

(もっとも、商社や一部の金融機関など体力のある企業は、円高を生かし、BRICSやアジアには進出しているようなので、単に、地域の特性を見据えた資源の配分をしている、ということかもしれません。それと比べると、韓国は、基本的な姿勢として、全方位展開の傾向が強い印象を受けます。)

かなりおおざっぱというか、粗雑なイメージですが、こんなことを考えました。的外れなコメントになってしまったら申し訳ありません。汗
 
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