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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



昨年には、光よりニュートリノが速いという、特殊相対性理論に反する実験結果が発表されましたが、先週には、不確定性原理も否定されるという報道がありましたね。
この二つの原理は、言わずとしれた現代物理学の基本原理ですが、合理論と経験論を対立軸とする伝統的な認識論哲学にも影響を与えています。また、不確定性原理は、ゲーデルの不完全性定理とともに、人間の知性の限界を論じる上で重要な示唆を与えています。このように、物理学という一つの学問分野にとどまらず、人間の思想や世界観を左右する大きな広がりを見せているといえます。

この件について印象に残った本。

■ メンデル・サックス 『相対論対量子論』
相対論と量子論については、数々の本が論じているが、この本は、対話形式で二つの世界観の対立を説明しており、論争の熱気を伝えてくれる。文章は平易で簡潔だが内容は本格的。

■ ブライアン・グリーン 『エレガントな宇宙』
相対論と量子論の対立を止揚させる可能性をもつ超弦理論を解説。(以前の記事でも紹介。)
合理論と経験論の止揚に向けたカントの挑戦を彷彿させる(中身は全然違うので比べるものではないが、超弦理論も、実験で検証できない数学による仮説という点では形而上学的)。理論のみならず説明自体がエレガントな一冊。

■ 同 『宇宙を織りなすもの』
『エレガントな宇宙』に続く宇宙論。
時空論と宇宙の創生が中心テーマだが、前提として、相対論と量子論、超弦理論をコンパクトに説明してくれる。
これぐらい簡潔な方がかえって門外漢には分かりやすいかも。

人間の知性の限界については、以前の記事で紹介した『知性の限界』も参考になりますね。
前述の通り、これらの議論は人間の思想や世界観という根本的な問題を扱うものになっていますから、その前提が崩されるとなると、従来の議論の蓄積が無駄になってしまう気もして、なんだか怖いというか残念な気持ちになります。でも、そんな感傷は、科学における真理の探求とはまったく関係のない話ですね。これからの議論の発展を素直に楽しみにすることにします。

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それと、先週行われた台湾の総統選。
台湾経済の中国への依存は、10年以上前から言われていることですが、今回の選挙はその現実をあらためて示したものと言えそうですね。

■ 本田善彦 『台湾総統列伝』
この本は、歴代総統に焦点を当てながら、台湾の現代史をバランスよく描いています。
特務政治の黒幕と言われた蒋経国の肯定的評価や李登輝の複雑な性格などは他ではあまり見られない記述で新鮮。
多少古くなってしまったが(2004年、陳水扁時代まで)、今でも手元にあると役立つ好著。
ちなみに初代総統は蒋介石ですが、台湾人の考える「国父」は孫文ですよね。台湾=中華民国という「国」は、蒋介石が建国したわけではなく、国民党政府が中華民国の臨時首都として台北を定めただけの話ですから、建国者を孫文とするのは当然でしょうし、また、侵攻者である蒋介石に対する本省人の否定的評価もあるのでしょうが、昔、台湾人の友人からその話を聞いたとき、あーそうかーと納得した記憶があります。

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最近読んだ本。

■ デビッド・キャリー、ジョン・E・モリス 『ブラックストーン』
少数精鋭ながら大手投資銀行に匹敵する投資能力・資金力を誇り、ウォール街に君臨するプライベート・エクイティ。本書は、その雄ブラックストーンの物語、創設者シュワルツマンの一代記。
『野蛮な来訪者』で描かれたKKRによるRJRナビスコ買収を含め、セーフウェイ、ベアトリス・フーズなどの歴史的ビッグディール、その資金を支えたドレクセルのミルケン、ケミカルのジミー・リー、M&Aに対抗する弁護士など伝説的プレイヤーの活躍、カーライル、アポロ、TPGら他の代表的PEの興亡、21世紀後半からの資金力と影響力の巨大化という近況が語られており、PE業界の歴史を俯瞰できる。最後には、レゴランドやマダムタッソー等の事例をあげながら、市場経済を支えるPEの意義を理論的に評価する。
ブラックストーンの初期の発展を支えたのは日興證券だった。ソニー(CBSレコード、コロンビア映画)やブリジストンの買収も手がけ、大きな収益をあげている。80年代の日本の金融機関と企業の存在感も今から見ると興味深い。
ブラックストーンの名前の由来はシュワルツマンの「シュワルツ」(=独語、イディッシュの「黒」)とピーター・ピーターソンの「ピーター」(=ギリシャ語の「石」(ペトラ))の組み合わせ。
KKR(ブラックストーンに先行して最強の地位を確立したPE)とカーライル(最も有名なPEの一つ。元国防長官カールーチが会長を務めるなど政界、軍需産業との強い関わりでも知られる。)は小説『ハゲタカ』のモデルにもなっている(KKRは鷲津のいたPE。カーライルは『ハゲタカ2』の敵役。)。

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