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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



「米国産LNG輸出にシェル参入 米パイプライン大手と提携」(日経1月19日)、「米、日本にシェールガス輸出 3月にも解禁」(日経2月7日)、「シェールガス1兆円支援 政府、安値調達へ債務保証」(日経2月15日)等々、最近、米国のシェールガス輸出について盛んに報道がされていますね。

ご承知のとおり、シェールガス革命は米国のエネルギーコストを劇的に低下させたといわれます。
米国はこれまで主に天然ガスをパイプラインによって輸送していましたが、これからLNGによって積極的に輸出を拡大する様子。シェルのようなメジャーもこれに対応して推進していく流れのようです。

ところで、日本の貿易赤字は、東日本大震災と原発事故以来、化石燃料の輸入増大のため、急拡大していますね。
昨年の貿易赤字は約7兆円にものぼっています(時事通信の記事)。

以前紹介した黒木亮『エネルギー』にも描かれていますが、原発が停止するとLNG輸入が重要な役割を果たします。
もともとLNGは長期契約が締結され、取引価格は原油価格と連動するのが慣行ですが、原油高のためLNG輸入にも相当なコストがかかり、米国と比べて調達価格に大きな差が発生していました。
貿易赤字の急増の背景には、この高額なLNGの輸入増があるわけです。

冒頭に述べた米国のシェールガス輸出は、日本の貿易収支とエネルギーコストの改善に貢献する可能性があるものです。
もっとも、輸入ができるようになるのは2016年頃といわれている上、「北米産ガス、輸出価格駆け引き 欧米大手『石油連動で』 需要家けん制」(日経2月9日朝刊)という報道も出ているとおり、そう簡単に米国並の価格に移行できるものでもなく、どこまで期待できるかは難しいところがあるでしょう。

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ところで、LNGといえばカタール。

天然ガスの輸出については、もちろんロシアが圧倒的なシェアを誇り、ガスプロムは業界最大手、ロシア経済はガス輸出のおかげで成り立つぐらいの重みがありますが、LNGの最大輸出国といえば、これはカタールなんですね。

上記のとおりLNGは日本のエネルギー確保において重要な位置を占めているわけですが、カタールは最大の輸入先の一つであり、特にこの数年で輸出量は急増しています

カタールは湾岸諸国の中で比較的マイナーな小国のイメージがあるかもしれませんが、なかなかユニークで面白いところです。

現首長であるハマドは、1995年に当時の首長だった父がスイスで保養している間にクーデターを起こし、権力を握りました。
このハマド首長がなかなかの個性派で、女性選挙権を認め、米国の大学の中東分校を誘致するなど、現代化の改革を推し進めます。
米国に接近してCENTCOM(中央軍)の司令部を作り、アルジャジーラも設立します。
外交面では、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国にとってイランは不倶戴天の敵ですが、このイランにも接近するような独特の動きをします。
そして、経済面では、上記のとおり、LNGを基盤とするエネルギー巨人に国を変えました(このへんの経緯は以前紹介したダニエル・ヤーギン『探求-エネルギーの世紀』に詳しく描かれている)。

日本にとってカタールからのLNG輸入は死活的な重要性をもっています。
イランの核問題からホルムズ海峡が封鎖されれば、カタールからの輸入が途絶え、大きな影響が及ぶことになります。こういう意味でイランの問題は日本にとって他人事とはいえない切実な問題といえるわけです。

カタールの最大のエネルギー資産はノース・フィールドという海上ガス田ですが、これは海を隔ててイランと分け合っています。イランとの微妙な関係はこのガス田の隣接も影響しているのかもしれません。

カタール、サウジアラビア、UAE、バーレーン、オマーン、クウェートという湾岸諸国は、いずれも湾岸協力会議(General Cooperation Council, GCC)という機構に属しており、GCC諸国といわれることもあります(イエメンは加盟申請中)。
地域の大国であるサウジアラビア、一大投資地域であるUAEばかりに目が行きがちですが、ここで述べたカタールのように、いずれの国々も個性があって面白いです。これからこのHPでも紹介していくと思いますが、なんとなく注意してみると良いと思います。

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最近読んだ本。

■ 島田虔次 『朱子学と陽明学』
吉川幸次郎や宮崎市定が指摘するように、中国の思想には抽象的思考や体系的整理が弱いという性質があった。現実世界の利益・快楽を肯定し(キリスト教の原罪やインド仏教の四門出遊、五官の快楽の否定と対照的)、即物的・具体的感覚を重視する中国人の特性の現れともいえる。
中国の支配的思想であった三教(儒教・道教・仏教)の中で、特に理論が弱いのは儒教だった。その中で、例外的に西欧哲学にも比肩する理論体系を作り上げたのが朱子学である。
魏晋南北朝から唐代にかけて、道教と仏教の隆盛に押され圧倒的劣勢にあった儒教は、宋代になって再興を果たす。朱子学はこの時代の宋学の完成型といえる。
朱子学の高度な主知主義・理論性・宇宙論はその後の東アジア地域、特に日本と朝鮮に大きなインパクトを与えた(社会秩序構築に「礼」が有用だったためでもあるが)。朱熹は中国史上最高の哲学者といわれ、西欧においても評価される数少ない中国の思想家の一人とされる。
もっとも、朱子学の理論の多くは仏教から移植されたものだった。『唯識』の記事で紹介した仏教の精緻な「論」部の知的成果が活用されたわけである。一方で、加地伸行『儒教とは何か』でも説明されているように、仏教もまた儒教から強い影響を受けていた。ライバル同士が争う中で、お互いの思想のいいとこ取りをするという現象が生じたのだろう。
この本は、程頤・朱熹の性即理(客観唯心論)、陸象山・王陽明の心即理(主観唯心論)、張横渠の気の哲学(唯物論)という中国思想の三つの流れ(と現代への継承)を説明した上で、儒教界の反逆児・李卓吾の童心説を紹介する。仏教が李卓吾に与えた影響とともに、清末の龔自珍、康有為、譚嗣同、章炳麟と仏学との関係が指摘されるのが興味深い。
加地伸行『儒教とは何か』は、中国人の思想と儒教の意義(宗教性(魂・魄と祖先崇拝による死の克服)と礼教性)と歴史的発展、朱子学の革新性を明快に説明している。道教・仏教との思想的闘争、仏教の輪廻転生の中国化(祖先崇拝との融合、盂蘭盆会)など、儒教を超えて中国全体の思想史を眺めることができる。
中国文化史の中での宋学の位置づけを知るなら小島毅『中国思想と宗教の奔流』、宮崎市定『宋と元』。『礼記』中の一篇を『大学』として表章し「四書」の一つとして構成したのは朱熹の功績(その中の「格物」の解釈をめぐる王陽明との対立に主知/倫理、分析/直感といった両者の根本的な違いが現れる)だが、宇野哲人『大学』は朱熹の大学章句をベースにしているので、あわせて読むのに適当。

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