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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



アルジェリアの人質事件。
これだけの国、数の人命が一度に失われるのはかなりの衝撃でしたね。

事件の原因としてこのHPでも触れたマリでのクーデターが指摘されます。マリのクーデターは、トゥアレグ族制圧強化を主張する軍がこれに同調しない大統領ATT(アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ)に対して起こしたものですが、結果としてイスラム原理主義とアルカイダの勢力拡大を生みました。フランスがこれらの勢力への攻撃を決定したことにテロリストが反発したというものです。

もっとも、アルジェリアでは、91年の世俗主義を掲げる軍のクーデター以来、イスラム原理主義者によるテロが頻発していました。
私は90年代末に多少アルジェリアに関わる縁があったのですが、当時私のいた組織で、アルジェリアで勤務することは、数ある危険地の中でも最もリスクが高くハードと言われていました。おおざっぱに言えば、駐在したとしても、現地にいるのは1年のうち半年が限度、あとの半年はパリで外勤できると聞きました。

こういう根深い背景に加え、リビアのカッザーフィ(カダフィ)政権の崩壊が挙げられます。
これにより武器が流出しテロリストを含む反政府勢力に渡ったということが大きいのでしょう。
ワシントンポストなどでは、今回のグループが本当にアルカイダと結びつきがあるかも疑問視する記事を見ます。
フランスのメディアは、フランスのマリでのクーデター介入が理由であったことを明確に否定しているようです。

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マリは、前記記事や「マリ紀行」でも書いたとおり、思い入れがある国なのですが、アルジェリアも昔から関心がある国でした。

古代には、フェニキア人が活動し、ローマの有力な属州となり、キリスト教の世界化の対象となった地域です。
当時世界的に発展していたマニ教を信仰していたアウグスティヌスは、この地域の出身ですが、カルタゴに留学していたとき、キリスト教に回心しました。そして教父神学を大成して、キリスト教史を通じて最も影響力のある神学者となったわけです(彼の業績の一つに教会とサクラメントの教理があり、その理論が現代行政法の官職制の理論につながっていることは以前「法から見た歴史、宗教」で書きました)。

その後、イスラム化、フランスの植民地化、独立戦争に至りますが、アルジェリア独立戦争は、ドゴールの復活と第五共和政の成立(大統領権限の強化とコアビタシオン)をさせたという意味でも重要ですね。
映画『アルジェの戦い』(ジロ・ポンテコルヴォ1966)も有名です。
アルジェリア独立の理論的支柱となったフランツ・ファノンは、ネグリチュードを批判し、ポストコロニアル理論を展開した代表者として知られます。
ジダンなどフランスの優れたサッカー選手の多くがアルジェリア移民であるのはご存じのとおり。

音楽では、「ライ」というアラビア語の現代ポップ音楽が世界的に有名です。
私は学生時代結構好きで、シェブ・ハレド、シェブ・ハスニ、シェブ・マーミー、Cheb Sahraoui、Cheba Zahouaniaといったアーチストをよく聴いていました。
想像できると思いますが、こういう音楽もイスラム原理主義の攻撃対象になります。シェブ・ハスニは94年に暗殺されました。
キング・オブ・ライと言われるスーパースター、シェブ・ハレドは2010年南アのワールドカップに登場し、代表曲「Didi」を歌いました。アフリカ初のワールドカップにふさわしい躍動感あるパフォーマンス。



最近はPitbullとコラボしていて驚きました。カッコイイですね。



情勢の不安定さもあって、まだ行く機会には恵まれていません。
学生時代にアフリカ旅行を計画したときは、エジプトからまずスーダンに南下し、チャド、ニジェール、マリ、モーリタニアを通過してセネガルに抜けるという迂回したルートを考えたものでした。もっともこのルートは、トゥアレグ族がいるアルジェリア南部という最も危険な地域に接近するリスクを負うことになります。トゥアレグ族は大変好戦的で、旅行者にとっては砂漠の海賊(砂賊)のような人たちです。アフリカを旅行したときアルジェリアの砂漠で身ぐるみをはがされたという旅行者に会ったこともあります。
今の状況を見ると暗鬱な気持ちになりますが、いつかは行ってみたいものです。

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最近読んだ本。

■ ウィリアム・ハーディー・マクニール 『疫病と世界史』
マクニールの『世界史』が売れているらしい。ヘーゲル、シュペングラー、トインビーを受け継ぐ世界文明史の王道であり、面白いし、豊富な参考文献を含め、教科書としても優れた一冊。しかし、西欧・非西欧を軸に置く整理(中心周縁モデル)は、今となってはフクヤマやハンティントンもいるし、今読んで何か目を開かされるような発見があるわけではない。
むしろ、今読んでも刺激があるのは、この本のように、切り口を絞った精緻な社会史ではないかと思う。
疫病史は近年発展しているグローバルヒストリーの中でも主要な分野の一つであり、マクニールはグローバル・ヒストリーの生みの親の一人とも言われ、本書はジンサー、クロスビーの主著とともに疫病史の古典とされている。ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』にも大きな影響を及ぼしている(この本のタイトルはクロスビーの『Germs, Seeds, and Animals(病原菌・種子・動物)』が元ネタ)。
もともと文明史は人文学のアプローチ(テキスト解釈)に依拠してふわふわした物語に終わりがちのように思う。これに対し近年のグローバルヒストリーは、疫病、環境、人口、生活水準、賃金、物価、人・モノ・情報の移動(交易、市場)など統計を中心とする社会科学のアプローチを利用できるところを主題とする。その内容は経済史に近い。ノーベル経済学賞をとった経済史家であるダグラス・ノースもグローバル・ヒストリー研究者の一人と言われる。(水島司『グローバル・ヒストリー入門』、クロスリー『グローバル・ヒストリーとは何か』は近年の研究を包括的に整理しており便利。)
この本も、病原菌が具体的で細かく取り上げられ、自然科学と密接に関係していることもあり、現代につながっていることを強く実感できる(HIVを追加すればそのまま現代版として改訂できる)。人の密集・移動(人口、都市、農耕、家畜)、戦争(スペインのアステカ征服)、統治、宗教との関わりの記述には歴史学ならではの醍醐味を感じる。
世界文明史についていえば、自分が最も知的刺激を受けた本は岡田英弘『世界史の誕生』。様々な評価があるが、面白さでいえばダントツ。最も美しい文明史といえばなんと言ってもフェルナン・ブローデルの『地中海』だろう。

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