For English, check ABOUT ME below the CATOGORY on the right.
やじゅんのページ/The World according to YAJUN



昨今の日中関係について思うところを述べてみます。長くなるので便宜上2回に分けますが、一貫した文章となっていますので、ご意見などは一通り読んでいただいた上でお寄せいただければ幸いに思います。非常に難しい問題ですし、厳しいご批判もあるかもしれませんが、真摯に受け止めて、今後の思索につなげていきたいと思っています。素人が思いつく限りのことに過ぎませんので、勘違いや知識不足は寛大に見ていただければと思います。

・・・

ロバート・ローレンス・クーン『中国を変えた男 江沢民』という本を読みました。米国人が書いたとは思えないほど江沢民を手放しで賞賛している変わった本ですが、著者は中国研究者や専門家ではなく、報酬をもらって中国政府のアドバイザーも務めるビジネスマンであること、また、中国訳が中国国内で出版を許可されていることから分かる通り、その内容について中国当局の同意を得ていることには注意を要すると言われています。本の中で、江沢民が総書記を胡錦涛に譲ったあと、政治局常務委員会の9票のうち少なくとも5票が「江沢民の手の中に入った」、「江沢民は少なくとも5年間つまり2007年までは政策に影響を与え続ける」とし、「真の江沢民時代が始まった」と述べていることは驚きで、こういうことを中国国内で公にしていいのか?と思いますが、先に述べた事情を考慮すると、意味深なものがあります(ほか、「重要事項」については必ず江沢民の意見を求める、政治局内で意見がまとまらない場合には江沢民が裁定する、胡錦涛はまだ「第四世代の核心」にはなっていないなどと書かれています)。

中国の内政については、多くの専門家が、胡錦濤を中心とする対日関係重視派と「院政」をしく江沢民を中心とする強硬派のせめぎ合いという構図を指摘しています。中国で発信される公開情報は、すべて当局の許可を得たものであるため、そこから内部で起こっている権力闘争を読むことができるとも言われます。ただ、実際のところ全ては憶測にすぎませんし、現実にはもっと複雑な利害関係の錯綜や、集団指導体制における指導部内の規律・意思決定過程のルール化という側面もありますから、あまり権力闘争史観に束縛されないよう気をつける必要もあると思います。しかし、中国に限らない世の常として、政権を運営する主流派と反主流派との間で何らかの不一致が存在することは十分あり得ることと思います。クーンの本は、内部での政争の一端を知る上で、また外国人を情報操作のために利用する中国の戦術の一端を知る上でも興味深いと思います。

#なお、米中関係を描いた名作としては『米中奔流』(『Rise of the Vulcans』(参照)を書いたジェームズ・マンの著作)が挙げられますが、天安門事件以後の最近の情勢については、Robert Suettingerの『Beyond Tiananmen』がまとまっていて参考になります。クーンの『江沢民』もかなりの部分をこの本に拠っています。

・・・

首相の靖国神社の是非は、基本的には日本人自身が決めるべき問題だと思います。外国からとやかく言われる筋の話ではありません。一方で、国際問題に事実上の影響が及んでしまうのは現実であり、その平面で得るもの失うものを考えないわけにはいかないと思います。ですから、外交問題に影響するリスクを織り込んだ上で、日本としてどうしても譲れない、その価値があると日本人が考えるのであれば、やればいいと思います。その決断について私個人の考えはありますが、全体的視野に立った国としての判断はリーダーがするべきものですし、日本国民の考え方が重要ということであれば、世論調査などの方が私の意見より重要な判断材料になると思います。

ただ、靖国参拝が中国にとって譲れない問題となっているのは事実です。それは確かに彼らにとって合理的な選択ではありませんし、また中国国内の権力闘争を反映した結果でもあるのでしょう。日中国交回復の際、一部軍国主義者、特にA級戦犯のみの責任を問うこととし、日本国民や天皇陛下は戦争の犠牲者であったと整理することによって折り合いをつけ、また、ソ連への対抗上、首相の参拝に文句を言わない時期があったのも、日本の首相以外の閣僚の参拝を見逃してきたのも、現実的な妥協の結果であり、この問題が元来感情問題というよりは政治問題であったことを示していると思います(最近では米国との関係や台湾をめぐる問題もリンクしていると言われます)。

おそらく、中国からすれば、大きな問題は、こうした日中間の過去の経緯が無視されることで、指導部が一貫した論理を失い、国内における面子がつぶれることなのでしょう。日本がこれを「中国の国内問題」と見なすのは、確かに筋の通った考え方ではあります。ただ、交渉においてはお互いが当事者であったことは事実ですし、また靖国問題が中国にとって政治的に有効活用できる「カード」という存在ではなく、むしろこの問題が拡大するのをおそれていること、そして国内的に譲れない問題となっているのが本音であることは、日本が中国にどう接するかを考えるに当たって、現実の一側面として少なくとも意識しておく必要はあるように思います。

いずれにしても、日本の対中国戦略は、日本が中国をどのような存在ととらえるかという根本の認識にかかってくる問題と思います。そのことについて次回述べたいと思います。

コメント ( 8 ) | Trackback ( 1 )



« ブログ開設一... 日中関係につ... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (さつき)
2005-12-13 23:25:13
靖国問題で不思議に思うのは、海外のメディアが右も左も「靖国神社=右翼の巣窟」と一致してしまっていることです。それが遊就館の「一面的」な歴史観にあるとしても、その主張自体は歴史学という観点からは許容範囲のはずなのに、いざ第二次大戦に関する限り「戦勝国」のメディア論調は単純な善悪論(つまり、枢軸国は絶対悪)から一歩も出ることが出来ていない気がします。時間が経たないと歴史は政治から自由にならない、ということなのかもしれませんが、日々プロパガンダを聞かされているようで憂鬱になりますね。
 
 
 
前原代表訪中について (mitsu)
2005-12-14 04:26:37
やじゅんさま、

重たいテーマですのでなかなか筆が進まないのでしょうか。日中関係がこういう時期だからこそ、やじゅんさまのどっしりとした論考を楽しみにいたしております。

時事的なトピックになりますが、今回の前原代表の訪中への中国当局の対応は致命的なミスではなかったかと思っています。日中関係の悪化が小泉首相一人の責任であり、問題点が靖国参拝の一点であると主張するならば、中国政府は靖国問題が解決したならどのように他の懸案が解決するかを指導者の口からきちんと説明する必要があったでしょう。

前原代表の行動が性急に過ぎたとの批判もありますが、中国側としては氏の思想信条などは当然調べていてしかるべきですし、そもそも氏が取り上げた日中間の懸案は日本で一般的に認識されているものです。それに対応できなかったということは、指導部内で対日路線を整理できないまま責任を小泉首相一人に押し付けている、つまり中国首脳にはその程度の指導しかないことを意味するのではないかと思います。少なからぬ日本の有権者は「靖国参拝を取りやめたとしても何も変わらない」と感じたでしょう。

この夏の政局で民主党が郵政法案の審議に応じなかったことが衆院選の劇的な結果に繋がったことを想起します。数年後に振り返ったとき、今回の件が旧い日中関係のLast Strawだったということになるのでしょうか。
 
 
 
どうもありがとうございます (やじゅん)
2005-12-14 20:28:31
>さつきさん

そういう「偏見」を取り除く努力の大切さは、まったくその通りだと思います。それでも昔と比べると段々と良くなっているのではないかな、と個人的には思いますが、引き続き努力を続けることが大切と思います。

いずれにしても、靖国の問題が外交上の問題となってしまうこと自体が不幸なことと思います。そうならないように工夫することは、日本にとっても重要な課題であるように思います。



>mitsuさん

激励どうもありがとうございます。

いつも思いつき程度の考えで書いていますが、筆が重いかと言われると、そうかもしれません(笑)。

私も未熟者ですので、mitsuさんや他の方々のご意見もお聞きして考えを深めたいと思います。

前原代表の件についてですが、中国側からすれば、これまでは対中強硬論が自民党のどこかから出れば、それに対して必ずバランスをとる勢力が現れたのに、今回はそうした勢力となると思われる最大野党が、自民党以上に厳しいスタンスをとっているような状況にフラストレーションを感じているのではないかと思います。軍拡の問題に関しては、日本が一丸となってプレッシャーをかける構図の方が良いのだろうなと個人的には思います。

「指導部内で対日路線を整理できないまま責任を小泉首相一人に押し付けている」というのは、その通りかもしれません。ただ、馬立誠の論文など見ると、彼らも相当つらいのかと思います。対日政策が中国にとって死活的な重要性を持っているのは確かであり、日本にとっては、中国の内政事情をふまえた外交が、新しい日中関係を築く上で重要ではないかと思うのですが、そのへんについて次回述べようと思います。
 
 
 
補足させてください (mitsu)
2005-12-15 09:48:16
やじゅんさま、

レスありがとうございます。序論のところで何度も申し訳ないのですが、自分のコメントを読み直してみて論旨がごっちゃになっているのに気付きまして。

私が書きたかったのは、前原氏を門前払いした中国側の理由ではなく、日本でのパーセプションです。中国側の事情はやじゅんさまが本文で触れられたように簡単に窺い知れないものですから、本来は軽軽に結論付けるものではありません。ですが、日本の一般的な有権者がこの事件をどう解釈し、世論がどう動くかについては、それとは別の話かと思います。

と、ここまで書いて、あとは「日本が中国をどのような存在ととらえるかという根本の認識にかかってくる問題と思います」に続きます。後編(中編ですか?)楽しみにいたしております。
 
 
 
なるほど (やじゅん)
2005-12-15 23:46:50
>mitsuさん

ご丁寧に追加のコメントありがとうございます。

その通りですね。私もよく思うのは、中国の行動は自己破壊的というか、自分にとって利益にならないことをしているということです。ある意味、巧みに親中的ムードを日本で作り出したやり方よりも、ずっと稚拙になっているということかもしれません。そこには文化論から内政事情まで色々な理由があるのでしょうが、その辺も含めて次回の記事で自分なりの考えを述べてみます(何か引っ張ってばかりすみません・・・もったいをつける気はないのですが(笑))。
 
 
 
その2を楽しみにしてます (T君)
2005-12-16 10:37:57
はじめて書き込みさせていただきます。

中国の外交の硬直性は、世界でも迷惑なものに成ってきているのではないでしょうか?

これにストップを掛ける必要性が出てきた時に、おり悪しくブッシュ政権が弱体化して動きがとれない。

その為、日本にその役回りが回ってきていると考えています。

少なくともAPEC以後の日本は意識的に対立姿勢を強めているように見えます。

前原さんの発言も、中国の前に米国でアーミテージとかと会談してることからして、あるいはその意を体しているのかな、とか考えています。

従って、親中派の人が望んでも、しばらくは中国に歩み寄る事ができないのではないでしょうか?

稚拙な考えですので、はずれてるかもしれませんが。

 
 
 
どうもありがとうございます (やじゅん)
2005-12-17 22:57:15
>T君さん

楽しみにしていただいているとのこと、期待を裏切りそうで不安ですが(笑)、どうもありがとうございます。

中国の外交の硬直性、どういう風にすれば良くなるのかなと思います。歩み寄るとか、「親中」的になる必要はまったくないと思いますが、日本にとって都合の良い方向に向かせるよう努めることが重要なのかなと私は思います。

米国の視点に言及いただいたのは興味深いと思いました。米国から今の中国と東アジア情勢はどう見えているのでしょう。これは結構難しい話だと思います。

日本のスタンスは、敵対的ではないのでしょうが、一貫しているというか、ブレはないんでしょうね。
 
 
 
日本はぶれるでしょう (T君)
2005-12-18 02:35:24
イラク諜報の間違いを認めて、ブッシュ政権は窮地のようで、米国がこれからどう行動するかますますわかり難くなってしまいましたね。

日本はぶれるとおもいます。

東アジアサミットでの中国の影響力拡大は阻止したようですけど、今後どうするかは糢様見ではないでしょうか。

靖国の問題にしても、小泉さんが総理大臣でなければ、あんなにこだわったりはしなかったと思います。

でも、小泉さんが総理にならなくて靖国参拝をしなかったとしても、日中関係が良好であったかどうかは疑問でしょう。

経済発展をして、軍事力も政治力も大きくなった中国に対して、早晩、関係の見直しを迫られていたと思います。

ところが靖国の問題の為に、あまり冷静な分析がされてないように思えるんです。

そういうわけで、冷静な分析を期待しています。

 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。
 
ピンポン外交 福原愛 (中華 状元への道)
 月曜日にアンテナ22とかいう番組で卓球愛ちゃん 素顔の17歳というのをついつい見ちゃいました。ほんとファンになっちゃいましたよ。ちっちゃなころからマスコミの寵児となったにも関わらず、奢れることなくひたむきに練習しオリンピック選手にまでなった。しかもめちゃ