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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



前回の記事と一緒に書こうと思ったのですが、長くなったので記事を分けました。

年末に、薮中三十二『国家の命運』を読みました。軽い感じの回顧録、というかエッセイに近いです。知識が増えたり勉強になったりするようなものではないですが、気軽に面白く読めます。

こういう立場の人は、変にかまえて固くするより、これくらいで良いんじゃないかと私なんかは思います。
組織のインサイダーが、部外者と比べて、知識や経験に関して圧倒的な優位に立つのは当然のことですよね。特に役所、それも外交みたいに原則「部外秘」で通していける世界はなおのことです。
ただ知識と経験というのは、その立場にいる人なら、誰であってもほとんど差は出ないもので、個人の個性で差が出るというものではあまりないんですよね。しいて言えば、どういう時期にその任にあったか、タイミングというか、運のようなものは影響します。ただ、自分しか知らない話は外には出せないという制約もかかりますね。
だから、こういう実務家のインサイダーで、それも高い地位にあった人の場合、細かい知識なんかで押すのではなくて、大きな視点や相場観を語るのがいいんだろうと思います。その場合、大事なのは思考の枠組みと説明のうまさですね。これはセンスなので、個人差が出ます。この本の著者は昔からプレゼン能力の高い方で、表現力が優れているということはいえると思います。

何にしても、組織を離れた人が一番高く売れるのは現場を離れた瞬間ですよね。そこから時間が経過してなお価値を保つのは、なかなかむずかしい。
それなりの地位にあった人が辞めたとき、回顧録を書くのは総決算、それで終わりというところがあって、そのあとの発信にはたいがい見るものはないものです。賞味期限の切れた過去の遺産の切り売り、自慢話に終わったりします。
特に、高い立場にある人に求められるのは、専門知識よりはバランス能力、常識人の感覚なので、なおのこと難しいですね。デカイ話ができるのはその立場にあったからこそとも言えます。地位や力を離れて大風呂敷をひろげても床屋談義に聞こえてしまう。むしろ、組織での地位は低くても、ひたすらにマニアックなことを追求した人の方が、あとあとまで付加価値を出せるものであったりします。

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高い地位にあった実務家と言えば、アフガニスタン・パキスタン担当特別代表の任にあったリチャード・ホルブルック氏が亡くなっていましたね。
米国というと、ポリティカル・アポインティーと公務員の地位の低さの印象が強いですが、国務省は別格で、優秀な人、学歴の高い人が行きます。ホルブルック氏やジョン・ネグロポンテ氏のように、プロパーの人でも相当なところまで出世します。最近まで、ウィリアム・ペリー元国防長官が日経新聞の「私の履歴書」を書いていましたが、その中に出てくるリビア朝鮮部長という人も好例です。この人は下記の東アジア太平洋局で長いこと要職を務めている東アジアのプロの人です。
(もっとも、国務省員といっても一概にいえなくて、日本のキャリア制と同じで、出世するかは入省時点のトラック次第。6個ぐらいあるトラックのうち一番出世するのは「political」。)
ホルブルック氏は、昔、東アジア太平洋担当国務次官補(Assistant Secretary of State for EAP Affairs)をしてましたが、このポストは日本の外交にとっては一番重要なポストですね。(そのまま対比はできませんが、国防総省(DOD)、ホワイトハウス(NSC)にも大体同じような部署とポストがあります。もちろん同様な意味で超重要です。)ホルブルック氏は、民主党系では、このポストにいた人の中で、たぶん一番有名な人の一人です。
ただ、以前にも書きましたが、米国の場合、ポストよりも人的要素が果たす割合が大きいです。このEAP国務次官補にしても、使えない人がくれば、相手にしてもしょうがないわけで、その場合担当のポストでなくても日本のために影響力を行使してくれる人に働きかけることになります。

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こんな天下国家な話はさておき、自分自身の卑近な立場に戻ると、組織の中で得られるものは大きいが、そこを離れて何かができるかというと難しいものです。もちろん組織で生き続ければいいんだし、何が良い悪いという問題でもない。ここは考え出すとよくわからなくなってきて、答えは出ません。ただ、問題意識は昔からずっと続いていて、このHPでも何度か触れてきました。これからも思うことがあったら書いていきたいと思います。

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最近読んだ本。

■ 木庭顕 『ローマ法案内』
これまで何度か言及してきた木庭氏の近著。これまで出してきた著書はいずれも1000ページを超え価格も1万円~3万円。凶器になるような重厚さ(笑)でしたが、今回は300ページ程度で価格も5500円。文章も平易で、ここまで一般向けに書いた本は初めてと思います。
冒頭から著者の巨大な歴史学、人文学の蓄積が炸裂します。あとでじっくり読もうと楽しみにしていましたが、ちょっとだけ読んだら面白すぎて止まらなくなりました。面白すぎて、もう序論(歴史的前提)の段階ですでに疲れているという(笑)。とりあえず今は時間がないので、ここから先は落ち着いたときの楽しみにとっておきます。

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