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やじゅんのページ/The World according to YAJUN




もう5月。早いですね。沖縄はゴールデンウィークの連休から梅雨入りしましたが、かえって天気が良くなりました。
連休では、本島北部で2泊、宮古島で3泊しました。
北部では伊江島に行ったりゴルフしたりバーベキューをしたり。宮古島ではゴルフしたりダイビングしたり。まあさながら部活の合宿のように体力を使う毎日でした。ハードでしたが、やり切った感はありましたね。

だいぶ前になってしまいましたが、セネガルの大統領選、なんとか現職のワッド大統領の三選が阻まれましたね。
ワッドが勝者のサルに祝福のメッセージを送ったのは立派。これでアフリカに誇るべきセネガルのガバナンスが守られました。こういう当然のことがなかなかできないのがアフリカですからね。
しかし、これで、一度大統領選出馬を表明しながら、ワッドが敗北すれば音楽を続けると言っていた国民的英雄ユッスー・ンドゥール、彼の政界進出はおあずけですね。

・・・
最近読んだ本。

■ ミシェル・フーコー 『ミシェル・フーコー講義集成8 生政治の誕生』
数あるフーコーの知的遺産の中で、地域を超えて、現代においてなお(現代だからこそ)最も現実に活かすことのできるものは、「生-権力(bio-pouvoir)」ではないかと個人的には思う。
(現実に役に立とうが立つまいが、面白ければどうでもいいのだが(実際フーコーのプロジェクトの多くは性質上実践から遠い)、フランスのような国は、実学から遠い思想、哲学、歴史を語る知性が統治エリートとなって実務も捌くところだから、こういう視点もまんざら野暮ではない、と思う。)
現代福祉社会は、フーコーの言う「生を与える権力」(近代以前の「死を与える権力」との対比)、「生の政治学」という統治性(gouvernementalite)の概念で巧妙に説明できる。給付行政が自由を奪うという逆説は、日本を含む先進国が直面する現代的問題(沖縄も一つの例)。その理論化と規律は大きな知的挑戦で、現代公法学においても熱いフィールドとなっている。
この本は、1979年におけるコレージュ・ド・フランスでの4ヶ月間の講義の記録。生政治の理解の前提となる自由主義と統治理性を現代史(『知の考古学』からの方法論)と同時代の経済思想(オルド自由主義、シカゴ学派の新自由主義に重点)を重ねつつ語る(こんな講義をタダで一般開放するのがフランスのおそるべきところ)。
『言葉と物』で語られた西欧の思考の転換(表象と人間)が統治術の世界でも姿を現す。30年も前の言説にもかかわらず、先に述べた自由の逆説という現代的問題(「統治の過剰」)の意識をもって読むと、また新たなものが見えてくる。時代を経てますます説得力を増すテクストの凄さを思い知らされる。

■ 木村榮一 『ラテンアメリカ十大小説』
お手軽に南米文学のエッセンスを味わえる便利な本。
コンパクトな書評の中に、翻訳の大家である著者ならではの哲学(歴史の断絶・欠落と時間の洞察がポイント)、時代と地域を超えた縦横無尽な文学論が光る。カイヨワ、ジョージ・スタイナー、開高健等、ラテンアメリカ文学以外で言及される作品も興味深い。
ブラジル文学が入っていないのが残念なところ。余談になるが、自分にとってブラジル、「南米」の熱さを最初に感じさせてくれた作品は、高校生のときに読んだ船戸与一『山猫の夏』。世界への関心と冒険心を激しくかき立てられた。興奮のあまり、大学に入った後、グアテマラでスペイン語を学び、メキシコとキューバを回った。どうしようもなく無邪気で楽しかったあの頃。
船戸作品で一番好きだったのは『砂のクロニクル』。日本人でもこんな壮大な物語が描けたとは。血と硝煙の果てに訪れる、詩情に満ちたラストシーン(表題の言葉が初めて登場する)は忘れがたい。

■ 川合康三 『曹操 矛を横たえて詩を賦す』
曹操に関する本は、正史を含め随分読んだが、この本は、武人、政治家、詩人という多彩な姿をバランスよく論じている。
吉川幸次郎『三国志実録』は言わずとしれた不朽の名著。堀敏一『曹操』は最新の研究までフォローした参考文献が良い。三国時代全体からとらえるなら最近出た講談社の『中国の歴史4 三国志の世界』(このシリーズはどの巻も読み応えがある)。『蒼天航路』は表現力が素晴らしい(たとえば、曹操は風采の上がらない小男で、それにまつわる渋いエピソードもあるのだが、この作品は、曹操をこれ以上ない絶世のハンサムに描きながら、随所で、実は容姿に恵まれないことを暗示し、それを逆手にとってカリスマを引き立たせるという絶妙な表現に成功している。そのディテールにこだわりながら物語を盛り上げる手腕の見事さは、正史や学問的研究を知れば知るほど伝わってくる。)。
高島俊男『三国志 きらめく群像』は、その軽い装丁からは想像もつかない濃密な内容を含んだ好著だが、中でも皇帝と詩との関係を論じた章は最高に面白い。
数ある曹操の名詩の中で、自分が一番好きなのは「歩出夏門行」。秦始皇や唐太宗を自分より下に見た帝王・毛沢東、その彼すら認めざるを得なかった壮大な気概と詩才(以前書いた記事「毛沢東と現代中国~ユン・チアン『マオ』」参照)。中華最高の英雄だからこそ描ける精神の美がここにある。

■ 古屋兎丸 『インノサン少年十字軍』
穢れを知らず、聖地を目指す少年たちの十字軍。その栄光と末路を描く歴史絵巻。
非情な展開と凄惨な描写。その果てに訪れる奇跡と静謐。それは目を背けたくなるほど痛ましく、そして美しい。
万人に勧められる作品ではない。ただ、中世とは、むきだしの力が横行し、暴力と嗜虐、非合理に支配された世界だった。同時に(だからこそ)信仰に依存し、精神世界と日常の現実が分かたれない時代だった(フーコーのいう「表象の空間」に通じる)。その、途方もなく暗く、しかし神、魂、永遠が人々にとって真理だった、失われた世界の姿をこの作品は伝えてくれる。
作品中の少年たちの扱いに違和感をおぼえる人には、フィリップ・アリエス『<子供>の誕生』を勧めたい。中世において、年少者は、知恵も力も劣る不完全な大人(動物)としか見なされなかった。純粋無垢とされ、成長されるまで庇護されるべき存在としての「子供」が誕生するのは近代である。

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コメント
 
 
 
御久し振りです (スタッツ アリス)
2012-05-18 21:23:26
 名前変えました!どうでもいい話ですが…。

 それはともかく、ラテンアメリカとか東ヨーロッパ、ロシアというと欧米における文学への貢献は大きいらしいですね。でも東ヨーロッパやロシアと異なり、日本ではあまり注目されていない気がします。
 私もさっぱりなのですが、やじゅんさんはそこまでしっかり勉強しているのですね~。さすがです。

 私も今度、 『ラテンアメリカ十大小説』読んでみます。
 
 
 
お久しぶりです (やじゅん)
2012-08-26 14:07:06
>スタッツアリスさん
すっかりご無沙汰してしまいました。すいません!
ラテンアメリカ文学は面白いですね~私もそこまで詳しくないですが、あの独特の世界観、活力、文化には惹かれます。
年末に南米旅行しようかなと思っています。
 
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