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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



<映画『ロスト・イン・トランスレーション』>

今週の月火水3日間、CNNの「アメリカン・モーニング」で、CNN日本支部放送開始20周年を記念して毎朝日本からの実況中継が行われました。このようなライブはアジアでは初めての試みだそうです。番組ではTVを視聴できる携帯電話や輝かしい都市部の様子を驚嘆の目をもって報道していました。私自身も米国人の目線で携帯電話の発展などを見て大いに驚きました。まさかGPS機能まで備えているとは。また原宿がファッションの最先端を行く街として紹介されてました。ニューヨークのファッション雑誌が最先端のトレンドをチェックするために原宿にやってくることもあるそうです。

(余談ですが、中継の背景に映る外国人が、押し合いへし合いしながら一生懸命にピースをしているのがまるで日本人そっくりでうけました。米国人がそういうことをするのを見たことはほとんどないですが日本に行くと日本のやり方に染まるということかもしれません。)

日本にいると、ファッションなど色々な意味で、何となく日本は遅れているとか、米国人の方がおしゃれでかっこいいとか、漠然とそんな思いを抱く人は多いのではないでしょうか。

米国でおしゃれをすることは思ったより簡単ではないです。服を買おうと思い立つと、ショッピング・モールの選択肢がせいぜい2~3個に過ぎないことに気づきます(ワシントンDCの場合)。モールの中には沢山店がありますが、自分の求める服があるところは限られています。そのような店に行っても、サイズ、ブランド、デザイン、選択肢が思ったほどありません。日本にいた頃は、店も服の種類も必要以上にありすぎて、何を買えばいいのか困ったほどですが、米国にいると好みのものに出会うのが逆にまれです。

日本にいると米国には日本よりもおしゃれな人が多いのではないかと思う人が多いかもしれません。実際に米国に来ると思ったよりそんなことはないことが分かります。特に学生の無頓着ぶりにはすごいものがあります。女の子の中には化粧もしない人が沢山います。まあ学生は基本的に金がないし、いつも寮のような閉じた空間とクラスを行き来するような、一種の共同体生活を送るわけですから気にしなくなるという面はあるのですが(私もすぐに同化してサンダル履きの生活になりました)。お金のある若いビジネスマンでも、皆スタイルが似たり寄ったりというか、一般的にこだわりがあまりないように感じます。

ものの数、種類に関して、その選択肢が多いという点について言えば、日本はずっと先進的だと思います。多分探しても手に入らないものはほとんどないんじゃないでしょうか。米国のニューヨークですら手に入らないものが東京にはあるということも珍しくないと思います。米国産の物、例えば靴で言えばオールデンなんかは米国の方が安いし手に入りやすいのでしょうが、日本でも値が張るとはいえ探せば手に入らないことはないわけです。欧州の靴などはかえって手に入りやすいかもしれません。私は日本に一時帰国するとき買い物を沢山してしまいます。

かつての日本は米国文化に憧れ、追いつこうと必死だったのだろうと思います。私くらいの世代だと、本などを通してでしか分からない話ですが、70年代後半から、「ポパイ」をはじめとする雑誌やテレビが、スケボーやサーフィンなどの西海岸カルチャーを輸入して、これが時代の最先端であるとして米国文化をもてはやしたと聞きます。ところがおそらくある時点で、日本はそうした米国の文化を自分なりに消化し、さらに欧州等の他の地域の要素も取り入れて、どこの国にも負けない、ハイブリッドで先進的な環境を独自のやり方で作り上げたのでしょう。今日本の文化が映画、音楽問わず米国で評価されていることは「Japanese Pop Culture in the U.S.」で述べたとおりです。ファッションを中心とした若者の生活スタイルもヒップな(かっこいい)ものとして受容されつつあります(グウェン・ステファニの新しいアルバムには、「ハラジュク・ガールズ」という曲も入っています)。

昨年、映画『ロスト・イン・トランスレーション』が話題を呼びましたが、映画の中で描かれる東京の夜景を見たとき、2年以上日本を離れていた自分には、なんだか夢の中に存在するような、まぶしい未来都市のように見えました。監督のソフィア・コッポラはたぶん日本に詳しくない普通の米国人の目線で見たのではないかと思います。あの光と音があふれる都会のエネルギー、それでいて香港やバンコク等のように過度に雑然とすることなく、ニューヨークよりは清潔で、適度に洗練されながら、「ブレードランナー」のような近未来的サイバーパンクな一面もある、そんな東京の姿が、奇妙に魅力的に見えました。『ロスト・イン・トランスレーション』は日本国内ではあまり評判が良くなかったと聞きますが(米国人の友人も「変な映画を作ってすまん」と言ってました)、私はこれほど東京の雰囲気を魅力的かつリアルに描いた米国産の作品は意外とないんじゃないかと思いました(たとえば『ライジング・サン』と比べてみましょう)。プロットは陳腐で、退屈な映画だと思いましたが、製作者の日本に対する素朴な興味と、それを形にする技量には好感をおぼえました。

映画と言えば、東京ほど古今東西、様々な映画を見られる場所はないと思います。米国で外国映画を見る機会は思ったより限られています。ブラジル映画『シティ・オブ・ゴッド』が話題を呼んだとき、ぜひ見たい、と思って検索したら、ニューヨークでしか上映していませんでした。仕方なく日本の家族に頼んでDVDを送ってもらいました。コンサートにしても、確かにニューヨークは世界の先端を行っているところではあるのでしょうが、米国の中で例外的な存在ですし、むしろ、東京でのパフォーマンスのリストなどを見ると、そのニューヨークと比べても全く遜色ないどころか、多様な趣味に答えるという面では、もしかしたら上を行っているのではないかという印象すら覚えます。

・・・
とりとめもない話ですが、一つ言いたかったのは、外国に来て初めて日本(東京)の凄さが分かった、ということです。日本から離れると、日本にいるときに気づかなかった色々なことが分かるものですが、自分の国の魅力を再発見するというのも重要なことだと思います。

いま米国に住んで3年半になります。米国の生活に不満はなく、快適で楽しいですが、一方で、日本に帰って様々な刺激を受けるのが楽しみでもあります。一度日本を離れたことで、より日本の先進性の価値を理解し楽しむことができるのではないかと思っています。

(書いてみてから、自分の言う日本=東京であることに気づきました。このことは、私自身が東京地域で育った人間であることによるもので、全く他意はありません。ご容赦下さい。他の地域にお住まいの方のご意見などいただければかえってありがたいくらいです。)

コメント ( 12 ) | Trackback ( 1 )



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コメント
 
 
 
興味深く拝見しました。 (pontanu)
2004-12-18 15:40:05
とても興味深く拝見しました。私の仕事の関係でも日本が一番進んでいるといっても、みんな外国ではどうか?とか国際的に認められているのか?という話になることが多いです。よく言えば謙虚、悪く言えば地震がないということなのでしょうか。私は、今東京に住んでいますが、親の転勤と自分の転勤の関係で8つぐらいの都市に住みましたが、東京は日本の中でも、飛びぬけてますね。映画、芝居好きの私としてはほかの町にはすめません。でも、老後は実家あたりに帰ると思います。
 
 
 
そう言っていただけると (Junya)
2004-12-19 03:09:45
嬉しいですね。映画や音楽やファッションなどに関して、もっと日本は自信をもって主張して良いと思います。



私は東京近辺にしか住んだことがないので、色々なところにお住まいになったpontanuさんがうらやましいです。
 
 
 
Unknown (Max T)
2004-12-19 22:57:02
今回のJyunyaさんのレポートには、賛同7割、「ちょっと待てよ」3割ですね。メランコリックな傾向が強くて、必要以上に他尊自罰になりやすい日本の視点に対して、日米比較の視点で「日本文化の魅力、先進性」を語ったのは意味のあることです。しかしちょっと気になるのは、「先進性」「最先端」という言葉を安易に使っていませんか? テクノロジーについては先進と後進を言い得ると思いますが、文化現象に「先進・後進」を広げるのは危ない発想です。



あなたのことだから、こんなことは既に自分で気がついていると思いますが…。テクノロジーと物質的な供給において勝っている「文明人」が、その面で劣位にある社会の文化まで「後進的」と考える愚。文化は価値観と結びついているから、語るのが難しい。それでもある文化が魅力的だったり、そうでなかったり感じる現象をどう説明すればいいのか? 私もまだ良く判らないのですがね。
 
 
 
まったくです (Junya)
2004-12-20 01:56:14
実は私も、記事を掲載してから、「先進性」という言葉はどうかなあ、という迷いが出たのですが、Maxさんの指摘を聞いて、なるほどと思いました。



私もMaxさんの問題意識に全面的に同感です。どの文化がどの文化より質的にレベルが高い、という話は論争を呼ぶところでしょう。この点、まだまだ考える余地があると思いますが、とりあえずの自分の考えを申し上げると、ある文化がレベルが高い、ということを示すのは、価値観が無限に存在することもあって難しいと思いますが、逆に、レベルが低い、ということはできるのかなと思います。例えば、商業主義にまみれた文化(マーケティング志向)や模倣に終始する文化(音楽で言えばリミックス)は、それが誕生した初期の段階においては、それ自体新しい試みとして価値があるのかと思いますが、行き過ぎると何の刺激もなくなります。



音楽で言えば、90年代を通じて、コンピュータ技術を使って製作する音楽が、時代の一つの最先端として見なされましたが、過去の音源が掘り尽くされ、模倣の模倣という狭い世界に収束していったとき、魅力を失いました。一方で、アフロ・ビートやケルト、ネイティブ・インディアンといった、音楽理論ができる前から存在する、肉体で勝負する生々しい音楽は、時代を超えて評価され続けています。



Maxさんの指摘する物質文明とテクノロジーについてコメントすると、それらは、文化を発展させる一方で、退行させる可能性もある、両刃の剣なのではないかと思います(誰も、ブリトニー・スピアーズに音楽性を見いださないでしょう、僕はそれはそれでアリだと思いますけど)。答えになってないかもしれませんが、一つのヒントとなれば幸いです。
 
 
 
タイトルの訂正 (Junya)
2004-12-20 05:02:56
タイトルを、「日本人には気付きにくい日本の先進性」から、「日本人が見落としがちな日本の魅力」に変えました。単なる思いつきなんですが、Maxさんの指摘から、こちらの方が自分の意図が正確に伝わるかなー、と思いましたので。
 
 
 
Unknown (スープ)
2004-12-24 18:10:23
コンピュータ技術を使って製作する音楽は、

単に広がりすぎてそこら中で当たり前に使われるようになり、

空気のように当たり前の存在になっただけじゃないでしょうか。

テクノ/エレクトロニカ で世界的メジャーとなったunderworldなどにしても元々生で歌いまくってますしね。
 
 
 
そうですね (やじゅん)
2004-12-25 12:17:37
コンピュータ技術を使う敷居が下がったことには、そのこと自体を売り物にする音楽の衰退と、自分の音楽をより深く追求するための手段として利用することの発展、の両面の意味があると思います。後者にとっては、別にコンピュータが必要条件じゃないし、使いたいとき使えばいいだけのことですよね。ビョークやPortisheadを見れば、ボーカルが大きな要素を占めるのは明らかだし、Radioheadの「Kid A」のアプローチも面白い一例だと思います。
 
 
 
オーストラリアで (au)
2005-02-27 13:14:57
初めまして。googleから来ました。



今、オーストラリアの大学に通っているんですが、東京は、世界有数の都市というのは、

納得です。シドニーとメルボルンに行ったことがあり、その地域の最先端の流行がわかる

通りを歩いたのですが、メルボルンは、

日本の中規模の大都市レベルだし、シドニーでさえ、東京に近づこうとしているなぁと

感じられる程度です。



>みんな外国ではどうか?とか国際的に認められているのか?という話になることが多いです。



これ、オーストラリアみたいです。オーストラリアも、どちらかというと、アメリカやイギリスで成功したら、地位が上みたいな考えがあります。二コール・キッドマンやミス・ユニバースは、国民的な人気です。マスコミでも、誰であろうと、アメリカやイギリスに進出したとなると、誉めまくります。(w

この前、オーストラリアの人気歌手がアメリカでCDを出すというのを全国ニュースで報道していたのを観て、「ここは、日本か?」

と思いました。
 
 
 
こんにちは (やじゅん)
2005-02-28 05:53:01
>auさん

豪州ですか。シドニーとキャンベラにだけ行ったことがあります。素敵なところですね。



そうそう、豪州出身の俳優やミュージシャンで成功している人は結構いますよね。俳優だとメル・ギブソン、ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェットなど。ミュージシャンでは古いけどAir Supply、Men At Work(ヒット曲はそのものズバリ「Down Under」(笑))、Kylie Minogue、最近ではJETとか・・・。

カナダ出身のBryan AdamsとかShania Twainなども成功するとスーパーボウルに出たりして米国人みたいになってしまいますね。

メジャーリーグなどと同じで、やっぱりみんな米国を世界の中心と思ってるのでしょうね。
 
 
 
ケイト・ブランシェット (au)
2005-03-03 15:20:55
最近見たオーストラリアの全国ニュースでは

どこも

「ケイト、オスカー、

キタ━━(゜∀゜)━━!! 」

というのを取り上げていた。
 
 
 
日本と欧米では (りさ)
2012-07-06 20:14:37
おしゃれの感覚がちがいます。
アメリカでは、肉体性といいますか、
男は男らしく、女はセクシー、というのを好みます。
日本の男性のパーマをかけたようなロングヘアーは、ゲイのファッション業界のファッションににているような感じがします。
日本は、モード業界的なものを、一般に消化したと思います。

また、中産階級の白人の世界は、昼夜の服装は、厳格に区別されてます。
日本は、昼間から、キラキラした光物や、クラブに着て行くの?みたいな服装をしたりしますが、
基本的に、白人とって、それは、ないですね。
女の子達は、キャミソール、タンクトップに、デニム。
目の色や髪の色にあう、カジュアルなファッションを、着るのが一般的なアメリカンです。肥満率は高いものの、日本より、やせすぎたスキニーモデル体系は好まれず、体重より、筋肉トレーニングした体系が、おしゃれのうちに、はいります。

日本の考えた欧米風くせ毛ヘアーは、存在せず、みんな、まっすぐなヘアーにあこがれています。

大学にいくような、中産階級は、保守的な
ので、髪色も、人種別に、という感じですね。
ダウンタウンのガールズたちは、ハイライトをいれたりしたヘアースタイルにしてます。ブラックの子達は、ネイルには、こだわりがあります。それでも、日本のようなデコラティブなものではないですね。




 
 
 
そうですね (やじゅん)
2012-08-26 14:15:20
>りささん
肉体性の重視、まさにおっしゃるとおりですね。
ファッションによく現れているという点、そのとおりだと思いました。
昼夜の服装の区別も、記事に書いた、私が学生生活をしたときに体験したことと整合してますね。
エスニシティやバックグラウンドによって嗜好が異なるのもそのとおりで、派手なファッション一つをとっても傾向が現れますよね。
 
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