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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



最近、NHKでマイケル・サンデルの「ハーバード白熱教室」というTV番組が始まりましたね。
ちょうどこの前、「コミュニタリアニズム」の記事でサンデルを紹介したところだったので、グッドタイミングと思いました。はやりの話題からはほど遠いこのHPにしてはめずらしい(笑)。

「白熱」・・・までしているかはわかりませんが(笑)、とりあえず、サンデル先生は話がうまいです。感心した人も多いのではないかと思います。

米国では、質疑応答のスタイルで、聴衆とインタラクティブに授業を進める「ソクラテス方式」という手法がよく採用されています。
サンデルの講義は、入門的な授業の性格、人数の多さから、一般の講義スタイルに近いですが、それでもかなりインタラクティブに授業を展開しています。あれだけの人数を相手にこれだけたくみに実現するのはさすがです。ビジュアル教材の使い方や演劇的な話し方も効果的です。

もっとも、彼に限らず、米国人の先生は総じて話術のレベルが高いという印象があります。学生を退屈させる講義をするのは教師の能力不足、とみなされるような雰囲気が全体的にあるようです。
もっと言うと、講義に限らず、一般的に、話術の重要さが強く意識されているんですね。
話のうまさは、誰もが身につけるべき基本スキルとみなされている感覚があって、政治家はもちろん、ビジネスマン、学生みんな熱心に技術を磨きます。メソドロジーが確立しており、プレゼン、スピーチの授業や研修も多いです(私もいくつか受けたことがあります)。

留学したり、米国人と仕事をする機会があると、先方の話のうまさや押し出しの強さに圧倒される場面もあるかと思います。
人の話なんて内容よりもイメージというところは現実としてあって、たとえ内容の精緻さに劣っていても、そっちが優先されることなんて結構あるものですよね。
それもどうかとは思いながら、やはり一つの力ではあって、こういうところを日本ももう少し見習えないものかと、文化的背景もあるようですが、思ったりもします。

裁判を例にとっても、米国では、おおざっぱに言って、書面での資料提出以上に法廷の場でのプレゼンに重きを置かれる傾向があります。
まさに映画で見るようなドラマチックな法廷が展開されて、書類作成担当と法廷担当で分けて、後者は弁護士になる前は俳優をやっていた、なんてことも、実際にあるそうです。
その場の証言の心証でかなりの部分を決める、それをもって真実とする、ゲームのルールをそんな風に決めているわけですね。日本における書面の重視とは対照的です。
これも、どっちが正しいというものではなく、善し悪しがあって、いずれの側でも反省しているところでもあります。たまたま先日も裁判官の方とそんな話をしたところでした。

・・・
ところでTV番組といえば、『龍馬伝』。面白いですね。

ストーリーや演出もさることながら、俳優の躍動感が素晴らしいと思います。

岩崎弥太郎を演じる香川照之が絶賛されてますが、私が目を離せなかったのは、吉田東洋を演じる田中泯。
『たそがれ清兵衛』に出てた方ですが、もともとはあの「暗黒舞踊」の土方巽の弟子にあたる舞踏家とのこと。顔も身体も所作もどこか違うというか、美しいんですよね。すごい存在感でした。物語の序盤で暗殺されてしまったのが残念でなりません。

そして武市半平太を演じる大森南朋。
前回の龍馬伝では、岡田以蔵(佐藤建)に暗殺を(黙示的な指示で)命じるようになり、いよいよ鬼の道を突き進み始めましたね。
実際に武市半平太の日記を見ても、ドラマと同様、直接的な証拠を残さないもので、非常に不気味です(最終的には以蔵の自白が決定的な証拠となってしまいますが)。
ちなみに、ドラマには描かれませんでしたが、岡田以蔵ら土佐藩士による暗殺は、実際には極めて陰惨なやり方で行われました。制裁や嗜虐趣味もあったのでしょうが、見せしめの意味も強かったのでしょう。
異常な人体破壊は、古今東西に通じるもので、その真の目的は、恐怖によって、生き残っている者の心を折ることにあります(前に、ユン・チアン『マオ』の書評でも書きましたが、毛沢東はそうした恐怖を政治的に利用した天才の一人)。暴力(テロ)の真の恐ろしさはここにあるのですね。
そして、京都におけるこんな凄惨な暴力の横行が、松平容保の京都守護職就任、新撰組の結成につながっていくわけですね。
話がそれました。大森南朋。この人は最近でこそ『ハゲタカ』の鷲津とか『タイガー&ドラゴン』の業界人とか、役柄は広いとはいえ都会的でクール、かっこいい役の人という印象ですが、私にとっては、『殺し屋1』(三池崇史2001)で、主人公であるド変態の殺し屋イチを演じた人。三池監督の持ち味が全開となったとんでもない作品でしたが、そのインパクトが強すぎて、最近の役柄の方が逆に新鮮です(笑)。

・・・
龍馬を主人公にしたドラマや映画といえば、たくさんありますが、最近私が見たのが、『竜馬暗殺』(黒木和雄1974)。

原田芳雄が演じる猥雑なエネルギーに満ちた龍馬。さわやか福山龍馬とはかけ離れたイメージです(笑)。
石橋蓮司、中川梨絵らロマンポルノ俳優のアングラ的な妖しさ。
少年のようなあどけなさを残す松田優作、大久保利通を演じる田村亮。
ここには「龍馬伝」にはあり得ないような、濃さ、泥臭さ、切なさがあります。その青春の情景、時代の感覚、ATGのにおいにドキドキする。そんな作品でした。

・・・
それにしても鳩山邦夫といい著名なビジネス・リーダーといい、龍馬に憧れる人は多いですよね。
司馬遼太郎や坂崎紫瀾が描いた、時代を動かす英雄としての龍馬はたしかに魅力的です。
ただ、実際龍馬はどんな人で、何を成し遂げたのか。そういうのを実証的・学問的にながめてみるのもたまには面白いかと思います。
研究書は山のように出ていますが、私が読んでみたのはこんな本。

■ 平尾道雄 『坂本龍馬海援隊始末記』
戦前に書かれた大変古い本ですが、龍馬研究の古典とも言える名著。下記の本でもよく引用されます。
著者は、龍馬関連文書をまとめた代表的人物。明治の坂崎紫瀾、大正の岩崎鏡川、昭和の平尾道雄と並べてあげられる。

■ 宮地佐一郎 『龍馬の手紙』
当たり前のことですが、歴史は資料から生まれます。この本はその資料の宝庫。
ここからどのような解釈が生まれ、物語が紡がれるのかと考えながら読むと、なかなかいい気分になります。ここにある手紙がそのまま『龍馬伝』に出てきたりするし、平井加尾のエピソードなどの元ネタも確認することができます。
(ちなみに平井加尾は何度か手紙に登場し、その中には二人はどういう関係だったのだろう?と思わせるものがある。一方で、龍馬は姉乙女への手紙で、千葉佐那を「かほかたち平井より少しよし」と述べて紹介している(笑)。)
手紙は色々なところで書かれているので、順を追って手紙を読んでいくだけで龍馬の旅の足跡をたどることもできます。
『ファインマンの手紙』もそうですが、手紙というのは、文面(と字の形?)から人間性が見えるものですね。龍馬の手紙には、ユーモアと思いやりが詰まっていて、これを見るだけで、たしかに魅力のある人だったのだろうと思わせます。

■ 松浦玲 ①『検証・龍馬伝説』 
■ 同 ②『坂本龍馬』
著者は横井小楠と勝海舟の研究者。そのためか①の時点では少し遠慮がある印象。しかし松本健一らとの論争を激しいタッチで書いている。これに対し②では腰を落ち着けて、バランスに配慮した本格的な評伝とした印象。①は刺激があるが②の方が安心して読める。
脱藩の意味、勝海舟との関係、薩長同盟とその後の境遇、船中八策(大政奉還)の「伝説」、また吉川英治や司馬遼太郎の書く「歴史」とは何か、といった主題化と、それに対するドライな目線の議論が面白い。

■ 飛鳥井雅道 『坂本龍馬』
古い本だが、なかなか面白い。
必ずしも龍馬の行動や視点を中心とすることなく、マクロな視点で、時代の中での龍馬の位置付けを描いている。史料を重視しながらも、文体に躍動感があり、文学的で読ませる。
ただ上記の松浦氏の視点よりは思い入れが感じられ、それもあってか上記①の本では批判されている部分もある。
この本の方でも松浦氏の本(『勝海舟』など)へのコメントがあり、合わせて読むと面白い。

■ 遠山茂樹 『明治維新』
日本近代史研究の古典。古い本ですが、しっかりした学術書としての通史で、注や参考文献も充実しています。
コンパクトに龍馬の果たした役割や性格を論じた部分があり、ポイントをつかんでいてなかなか参考になります。

・・・
雪が降るような寒い日が続きましたが、ちょっとずつ暖かくなってきましたね。今週もがんばりましょう。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (key)
2010-04-19 11:05:10
こんにちわ。
また、お邪魔させていただきました。

わたしも「ハーバード白熱教室」観ましたが、
アメリカならではですね、色々と学ぶところが
あります。
機会があるなら参加してみたいものです。
(慣れてないので圧倒されそうですが…。)
 
 
 
そうですね (やじゅん)
2010-04-23 23:17:48
>keyさん
ご覧になりましたか。
面白く見られているのであれば何よりと思います。
あそこまで大人数でやるところでしゃべるのは、緊張するというか、ちょっといやですよね。
でも、ああいう空気がなつかしいというか、またやりたいなあと私も思ったりします。
 
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