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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



「マリ紀行」の続きです。

ロンドンには3週間いました。ここでは、自分が勤める組織の本社で、仕事(研修みたいなもの)をしていました。

国際的な仕事をした経験はありましたが、日本人がまったくいない環境で、外国人(主に英国人)とまったく同等の立場で働くというのは初めてのことでもあり、なかなか面白い体験ができました。特に、1,000人を超える人たちが一つの高層ビルに働くという、巨大な組織の動きを見るのは、この業界ではなかなかお目にかかることができるものではなく、非常にためになりました。

  
左:ダブルデッカーのバスの2階からの風景。彼方に見えるビル群が職場。 右:32階のオフィスの風景。

ロンドンには10年くらい前に行って以来だったので、町もずいぶん変わっていました。
テート・モダン、新市庁舎、ガーキン、ヘルター・スケルター(建設中)といったところはなかったですね。全体的に、organizedされたというか、綺麗になったような印象があります。もっとも、地下鉄は相変わらず狭くて暑くて小汚い様子でした。

  

観光は、昔行ったときになかったテート・モダンなど見たぐらいで、それほど熱心にしませんでした。その代わり、音楽や劇をよく見ました。
プロムスを聴きに行ったり(「シベリウス6番」、オラモ指揮、王立ストックホルム・フィル、「グリーグ・ピアノ協奏曲」、アリス=紗良・オット)、ロイヤル・オペラ・ハウスでのバレエ(「アンナ・カレーニナ」、マリインスキー・バレエ)を見たり、グローブ・シアターでシェークスピア劇(「お気に召すまま」)を見たりしました。

  
左:ロイヤル・アルバート・ホール。プロムスの会場。 右:ロイヤル・オペラ・ハウス。

  
左:グローブ・シアター。シェークスピアの時代そのままに再現した劇場。映画『恋に落ちたシェークスピア』を思い出す。 右:ボロ・マーケット。

あとは、色んなマーケットに行ったり、夜な夜な職場やバーで酒を飲んだりしてました。

それから、古くからの友人に会えたのが良かったですね。結構ロンドンに住んでる人が多かったのです。ある意味、これが一番の収穫であったかもしれません。

特筆すべき点としては、滞在中に、暴動がありました。
家や車が燃えるショッキングな映像もあり、日本でもずいぶん報道されたのではないかと思います。
ロンドン市内で略奪が起き、しかもそれがどんどん拡大したのは、見ていて、本当に驚いたというか、恐ろしいことでした。
英国のような成熟した社会でこんなことが・・・と思いますが、一つの要因には、移民の増加とそれに伴う社会の変化、失業率の上昇などがあるといわれます。
ご存じのとおり、欧州は、欧州統合という壮大なプロジェクトを推し進めており、昨今はまさにユーロが問題となっているところですが、そのプロジェクトの一つの目玉は、人の移動の自由化です。労働市場の流動性を高め、国境を超えた企業活動を容易にし、経済成長に資するところは大きいと思いますが、反面、社会の変化、不安定化という負の側面も受け入れざるを得なくなっています。
今回、私は自分が住んでいたところも含め、マイノリティや貧困層が多く住むエリアに訪れる機会が多く、10年前と比べてどうとはたやすく言えないのですが、なんとなくこういう現実を肌で感じたような気がしました。そして、今回起こった暴動は、まさにそんな現実がはらんでいた問題の顕在化であったような気がして、こんなのにぶち当たってしまったのは不運なことでしたが、それはそれで貴重な体験ではありました。

次回は最後、「欧州(フランス、ベルギー、オランダ)紀行」です。

・・・
最近読んだ本。

■ ナシーブ・タレブ 『ブラック・スワン』
最近といっても、結構前に読んだ本ですが、映画『ブラック・スワン』を見たこともあり、(映画とはまったく関係ないんだけど笑)再読。
各論(統計学、科学哲学)においては目新しい点は少ないし、叙述のくどさもあるけど、ここ数年出た本の中では群を抜く面白さ。
金融、経済、統計に関心がある人のみならず、歴史、知性、懐疑、経験、帰納、予測、認識論、心理学、人間に興味のある人であれば誰でも楽しめる。人によっては世界の見方が変わるような刺激を得られるかも。
この本の訳者はスティーブン・レヴィットの『Freakeconomics』(『ヤバい経済学』)も訳している。ちょっと古くなったが、これも同様の関心がある人には楽しめるはず。訳も丁寧でなかなか読ませる。
不確実性と統計については、やや古いが、ピーター・バーンスタイン『リスク 神々への反逆』も、歴史的視点から把握できるものとして楽しめる。本書と重複する部分もあり、理解が深められる。副題の「Against the Gods」がとてもクールですね。

映画『ブラック・スワン』(ダーレン・アロノフスキー2010)は、前述のとおり、本書とはまったく関係ないですけど、最近見ました。
主人公の動作・環境の描写、音楽、細かいカット、スローモーションの使い方とか演出が『レクイエム・フォー・ドリーム』『π』とそっくり。ほんとにクセの強い監督ですね。

■ アンリ・ポアンカレ 『科学と仮説』
■ 同 『科学の価値』
■ 同 『科学と方法』
■ 同 『晩年の思想』
ポアンカレの科学思想集四部作。中でも、「科学と仮説」は『ブラック・スワン』でも大きな紙幅が割かれ絶賛されていた歴史的論文。
ポアンカレは、言わずとしれた数学、物理学の巨人。トポロジーを確立し、アインシュタインより前に相対論、ボーアより前に量子論を考え出していた。
しかし、それだけでなく彼は、四部作に書かれているように、科学哲学、認識論、知識の哲学、論理学等においても、当時の最高の知性バートランド・ラッセルはおろか、現代人であるタレブを驚愕させるほど徹底した懐疑主義・経験主義を展開していた。20世紀初めの時点でカオス理論を予見し、『空間の謎・時間の謎』前に書いた記事参照)のメインテーマである関係説の力学(絶対時空の否定)にも踏み込んでいる。
実際読んでみると、その明晰で包括的な内容は、現代においても遜色ない。この時代にここまで語り尽くしていたのかと思うと言葉を失う。

なお、『世界の名著・現代の科学1』『世界の名著・現代の科学2』は、1970年に出た古い本だが、「科学と仮説」(ただし第三部が収録されていない)を含め、物理学、化学、生物学、数学、科学哲学において歴史に名を刻む超ド級の論文が約30本も詰まっている。数学の基礎論をめぐりポアンカレと激突したヒルベルトの論文「公理的思考」も入っている。人類史上に残る偉大な知性の対決を論文で見るのはスリリングである。湯川秀樹、作田啓一、井上健の科学思想史の解説も素晴らしい。お買い得。

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コメント
 
 
 
Unknown (Alice)
2011-10-04 23:33:17
ホームズ様のロンドン♪霧がすっかりなくなってしまったけど、暴動なんていうロマンチックの欠片もないものが…。

とにかく、やじゅんさんが巻き込まれなくてよかったです。死者は出ているし、怪我人は出ているし、店は破壊されているし、本当にここはロンドンですかという感じでした。ヨーロッパの中ではまだ治安がよさそうなイメージもありましたし、イギリスも自認している節がありましたよね。

それはともかく、『ブラックスワン』といい私好みの本がズラリ☆
何やら嬉しいです(^▽^)
 
 
 
ブラック・スワンの翻訳者 (星の王子様)
2011-10-05 20:11:20
ブラック・スワンの翻訳者とは研究会で複数お顔を合わせたことがありますが、ユニークな方です。ヤバイ経済学も良かったですね。小生は最近春頃出たリチャード・フロリダ著 グレート・リセツトを読みましたが、この本も悪くないです。
 
 
 
ありがとうございます (やじゅん)
2011-10-07 13:06:30
>Aliceさん
今回は行きませんでしたが、ロンドンにはホームズ博物館ありますよね。住所は221Bベイカー・ストリート。ホームズは大好きでした。原作はぜんぶもってます。NHKでやっていた海外ドラマもよくおぼえてますね。
好みの本、といっても、統計に関してはAliceさんのような方には物足りないかもしれませんね。私ももっと勉強したくなりました。

>星の王子様さん
そうなのですか!それは素晴らしいですね。大和投資信託の審査部の方ですよね。一線で仕事をされながらこんなに翻訳をされて、すごいなと思います。
グレート・リセット、面白そうですね。読んでみようと思います。
 
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