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やじゅんのページ/The World according to YAJUN



ヒラリー・クリントン国務長官の退任。
ホワイトハウス主導の外交の中、国務省の影が薄かったとも言われます。たしかに目を見張るような大きなレガシーを残したわけではありません。厳しい評論家は彼女の熱心な外国訪問はほとんど無駄だったとも言います
しかし、政権のintegrityを維持しながら、手堅い手腕でオバマの目指す外交を実現し、人間的魅力を発揮して米国のイメージアップに多大な貢献をしたことは誰もが認めるところでしょう。政治力と実務能力、バランス感覚とカリスマを兼ね備えた稀有な国務長官だったというのが正当な評価と思います。
実際、国務省内での彼女の人気は絶大なものがありました。就任当時から国務省にいた人から聞いたことがありますが、多くの国務省員が彼女の魅力に惹き付けられ、ファンになったということです。その精力的な活動、献身的な取り組みは党派を超えて讃えられています。
果たして2016年の大統領選に出馬するのか。本人は今のところ否定していますが、大いにあり得ることでしょう。そのときこの国務省での経験が大きなアセットになることは間違いありません。

翻ってチャック・ヘーゲルの次期国防長官指名。
議会の公聴会で承認の議論がされましたが、同僚だった共和党議員からさんざんに叩かれ、暗澹たる様子。
大統領と異なる政党の人物を閣僚に起用するのは珍しいことですが、ないわけではありません。こちらにリストがありました。ネオコンの元祖ともいえるカークパトリックなど大物が並んでなかなか興味深いですね。最近では、ゲイツ国防長官(前政権から留任)とペトレイアスCIA長官(一時は将来の大統領候補とも言われたがスキャンダルで失脚した軍人(以前書いた記事))がいました。ヒラリーのあとを継いで国務長官に就任するジョン・ケリーが2004年に大統領選に出馬したときは(以前書いた記事1)、共和党のマケイン上院議員が副大統領候補になると取り沙汰されました。
民主党から指名されるくらいですから、当然のことながら共和党の中では相当な穏健派で、過去にイラク派兵やイラン制裁をめぐってブッシュ政権を激しく批判したこともあります。公聴会ではこの点が激しく追及されました(特に上記のマケイン議員はヘーゲルを激しく追い詰めました)。ヘーゲルは、かつて外交委員会に所属し、現副大統領のバイデンや重鎮ルーガーとともに外交政策に関与した経験から、きちんと対応するだろうと予想されたのですが、予想外に準備不足。醜態をさらし、大荒れになったようです。
さすがに承認がとれないという事態はないでしょうが、今後の議会との関係を含め、要注目ですね。

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■ 亀井勝一郎 『大和古寺風物誌』
ずいぶん昔に読んだ本だが故あって再読。
この本と和辻哲郎『古寺巡礼』などを見ながら大和の古寺や仏像を見て回ると、飛鳥白鳳天平の文化、古代史の豊かさ(凄惨な時代ではあったが)を味わえる。「マタイ受難曲」を聞いて中世に思いを馳せるのに通じる感覚か。
梅原猛『隠された十字架』にも書かれているが、法隆寺夢殿の救世観音についての著者、和辻哲郎、フェノロサ、高村光太郎の感想がまるで異なる。仏像の鑑賞に美術、信仰、歴史観が投影されるのが面白い。

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ちょっと過ぎた話になってしまいましたが、劇的な演説でしたね。
同性愛、銃規制、社会福祉など国を二分する議論を真正面から取り上げ、大きな哲学と理念を格調高く提示しました。
これは、あのクリントン以上にリベラル色を全面に出したものであり、ある意味で米国の分裂を象徴・促進するものといえます。
ただ、この議論を大統領就任式という舞台で出すのは、勇気と覚悟があってこそであり、それ自体は保守派の知識人も感服しているようです。保守派の代表的論客であるDavid Brooksは「過去半世紀において最も優れた演説」と言っています。
2期目に入る大統領は歴史に残るレガシーに心が向くと言われますが、この就任演説も、歴史的意義を強く意識したものなのでしょう。
ただ、演説とはちょっと離れてしまいますが、米国は、上記の国内問題や歳出削減などに直面して、自分のことで手一杯という感じですね。アルジェリア(マリ内戦)や日米関係を見ても、どうもリソースを割く余裕がない印象を受けます。
例によって次は2月に予定される一般教書演説が注目されます。

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GoogleがスマートTVでのyoutubeを通じた配信に力を入れるという報道(1月19日付日経新聞)。
これは結構興味がありますね。
最近私もスマートTVを利用するようになりました。ネットにつないだら、youtubeは画像のきれいさに驚きましたね。40インチでも全然問題ありません。
映画の購入もできるようになっており、ラインアップが充実すれば、ユーザーの視聴スタイルにかなり大きなインパクトがあるように思います。
たとえば、前の記事で書いていた英米のTVドラマ。英米で流行っているもので見たいと思うものは結構あるのですが、日本ではなかなか見られなかったりします。これは、DVDレンタルにせよ放送局にせよ、日本のサプライヤーを通したものでないとなかなか手に入らないということがあると思うのですね。
仮にgoogleのネット配信がスマートTV上で国境に関係なく一斉配信すればそういう問題はなくなるでしょうし、日本向けの配信にする必要があるとしても、従来型の供給と比べればずっと簡単に迅速にできる気はしますね。
そういう方向に進んでいくのでしょうか。自分自身の趣味に沿った希望的観測ですが(笑)。

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最近読んだ本。

■ セバスチャン・マラビー 『ヘッジファンド』
開示情報が少ないため神秘的で謎につつまれたイメージのあるヘッジファンド。その歴史を膨大な取材と資料に基づいて解説。
セバスチャン・マラビーは自分がワシントンDCにいたときにワシントン・ポスト紙にコラムを書いており、エコノミスト誌の元東京特派員ということもあって、なじみ深いジャーナリストだった。ストーリーテリングが秀逸で、この本も無味乾燥・散発的になりそうな主題を、AWジョーンズ、ビッグスリー(スタインハルト、ソロス、ロバートソン)、ジュニアスリー(PTジョーンズ、コフナー、ベーコン)、ドラッケンミラー、メリウェザー、イェール(スウェンセン、ステイヤー)、数学とコンピュータサイエンス(シモンズ、ショー)、グリフィンといったキーパーソンの活躍を摘出することで流れるような物語に仕立て、インフレ、為替ペッグ、資産バブルという時代の流れに応じて発展するヘッジファンドのイノベーションをエキサイティングに語る。
ヘッジファンドのビッグ・ダディ(生みの親)と言われたAWジョーンズが元外交官で社会学者だったというのは面白い。ヘッジファンドが米国内においても排他的な特権階級として社会から白眼視されていたのは少し意外だったが、その設立の主な理由が規制をかいくぐることであったことからすれば自然なことではある。著者は、レバレッジの過剰の問題はヘッジファンド特有のものではない、ヘッジファンドの破綻は大手金融機関と異なり政府予算負担をもたらさない(too big to failの逆)ことを指摘して悪玉論に警鐘を鳴らし、あえて規制をしないことの意義を説く。異なる投資スタイル(アービトラージ、トレンドサーフィン)がITバブルへの対応に差を生み、それが市場の合理的価格形成に異なる影響を及ぼしたとの指摘は興味深い。著者は、この点をとっても、ヘッジファンドが経済を攪乱して利益を得る集団であるとのイメージは一面的で誤っていると指摘する。
以前紹介したプライベート・エクイティ・ファンドの歴史を描くデビッド・キャリー他『ブラックストーン』と併せて読むと米国の金融史の概観に役立つ。

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アルジェリアの人質事件。
これだけの国、数の人命が一度に失われるのはかなりの衝撃でしたね。

事件の原因としてこのHPでも触れたマリでのクーデターが指摘されます。マリのクーデターは、トゥアレグ族制圧強化を主張する軍がこれに同調しない大統領ATT(アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ)に対して起こしたものですが、結果としてイスラム原理主義とアルカイダの勢力拡大を生みました。フランスがこれらの勢力への攻撃を決定したことにテロリストが反発したというものです。

もっとも、アルジェリアでは、91年の世俗主義を掲げる軍のクーデター以来、イスラム原理主義者によるテロが頻発していました。
私は90年代末に多少アルジェリアに関わる縁があったのですが、当時私のいた組織で、アルジェリアで勤務することは、数ある危険地の中でも最もリスクが高くハードと言われていました。おおざっぱに言えば、駐在したとしても、現地にいるのは1年のうち半年が限度、あとの半年はパリで外勤できると聞きました。

こういう根深い背景に加え、リビアのカッザーフィ(カダフィ)政権の崩壊が挙げられます。
これにより武器が流出しテロリストを含む反政府勢力に渡ったということが大きいのでしょう。
ワシントンポストなどでは、今回のグループが本当にアルカイダと結びつきがあるかも疑問視する記事を見ます。
フランスのメディアは、フランスのマリでのクーデター介入が理由であったことを明確に否定しているようです。

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マリは、前記記事や「マリ紀行」でも書いたとおり、思い入れがある国なのですが、アルジェリアも昔から関心がある国でした。

古代には、フェニキア人が活動し、ローマの有力な属州となり、キリスト教の世界化の対象となった地域です。
当時世界的に発展していたマニ教を信仰していたアウグスティヌスは、この地域の出身ですが、カルタゴに留学していたとき、キリスト教に回心しました。そして教父神学を大成して、キリスト教史を通じて最も影響力のある神学者となったわけです(彼の業績の一つに教会とサクラメントの教理があり、その理論が現代行政法の官職制の理論につながっていることは以前「法から見た歴史、宗教」で書きました)。

その後、イスラム化、フランスの植民地化、独立戦争に至りますが、アルジェリア独立戦争は、ドゴールの復活と第五共和政の成立(大統領権限の強化とコアビタシオン)をさせたという意味でも重要ですね。
映画『アルジェの戦い』(ジロ・ポンテコルヴォ1966)も有名です。
アルジェリア独立の理論的支柱となったフランツ・ファノンは、ネグリチュードを批判し、ポストコロニアル理論を展開した代表者として知られます。
ジダンなどフランスの優れたサッカー選手の多くがアルジェリア移民であるのはご存じのとおり。

音楽では、「ライ」というアラビア語の現代ポップ音楽が世界的に有名です。
私は学生時代結構好きで、シェブ・ハレド、シェブ・ハスニ、シェブ・マーミー、Cheb Sahraoui、Cheba Zahouaniaといったアーチストをよく聴いていました。
想像できると思いますが、こういう音楽もイスラム原理主義の攻撃対象になります。シェブ・ハスニは94年に暗殺されました。
キング・オブ・ライと言われるスーパースター、シェブ・ハレドは2010年南アのワールドカップに登場し、代表曲「Didi」を歌いました。アフリカ初のワールドカップにふさわしい躍動感あるパフォーマンス。



最近はPitbullとコラボしていて驚きました。カッコイイですね。



情勢の不安定さもあって、まだ行く機会には恵まれていません。
学生時代にアフリカ旅行を計画したときは、エジプトからまずスーダンに南下し、チャド、ニジェール、マリ、モーリタニアを通過してセネガルに抜けるという迂回したルートを考えたものでした。もっともこのルートは、トゥアレグ族がいるアルジェリア南部という最も危険な地域に接近するリスクを負うことになります。トゥアレグ族は大変好戦的で、旅行者にとっては砂漠の海賊(砂賊)のような人たちです。アフリカを旅行したときアルジェリアの砂漠で身ぐるみをはがされたという旅行者に会ったこともあります。
今の状況を見ると暗鬱な気持ちになりますが、いつかは行ってみたいものです。

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最近読んだ本。

■ ウィリアム・ハーディー・マクニール 『疫病と世界史』
マクニールの『世界史』が売れているらしい。ヘーゲル、シュペングラー、トインビーを受け継ぐ世界文明史の王道であり、面白いし、豊富な参考文献を含め、教科書としても優れた一冊。しかし、西欧・非西欧を軸に置く整理(中心周縁モデル)は、今となってはフクヤマやハンティントンもいるし、今読んで何か目を開かされるような発見があるわけではない。
むしろ、今読んでも刺激があるのは、この本のように、切り口を絞った精緻な社会史ではないかと思う。
疫病史は近年発展しているグローバルヒストリーの中でも主要な分野の一つであり、マクニールはグローバル・ヒストリーの生みの親の一人とも言われ、本書はジンサー、クロスビーの主著とともに疫病史の古典とされている。ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』にも大きな影響を及ぼしている(この本のタイトルはクロスビーの『Germs, Seeds, and Animals(病原菌・種子・動物)』が元ネタ)。
もともと文明史は人文学のアプローチ(テキスト解釈)に依拠してふわふわした物語に終わりがちのように思う。これに対し近年のグローバルヒストリーは、疫病、環境、人口、生活水準、賃金、物価、人・モノ・情報の移動(交易、市場)など統計を中心とする社会科学のアプローチを利用できるところを主題とする。その内容は経済史に近い。ノーベル経済学賞をとった経済史家であるダグラス・ノースもグローバル・ヒストリー研究者の一人と言われる。(水島司『グローバル・ヒストリー入門』、クロスリー『グローバル・ヒストリーとは何か』は近年の研究を包括的に整理しており便利。)
この本も、病原菌が具体的で細かく取り上げられ、自然科学と密接に関係していることもあり、現代につながっていることを強く実感できる(HIVを追加すればそのまま現代版として改訂できる)。人の密集・移動(人口、都市、農耕、家畜)、戦争(スペインのアステカ征服)、統治、宗教との関わりの記述には歴史学ならではの醍醐味を感じる。
世界文明史についていえば、自分が最も知的刺激を受けた本は岡田英弘『世界史の誕生』。様々な評価があるが、面白さでいえばダントツ。最も美しい文明史といえばなんと言ってもフェルナン・ブローデルの『地中海』だろう。

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ハンマーヘッドシャークの大群@与那国島

新年明けましておめでとうございます。

ちょっと驚いた、というかあきれたのですが、去年は7本しか記事を書いていなかったのですね。
新年の挨拶を書こうと思ったら、あれ、前に書いたのはそんなに前ではなかったような気がするぞ、と思ったので、気づきました。
記事を沢山書くことにあまりこだわりはないのですが、それにしてもこれは情けない。とりあえず今年の目標は去年の記事数を上回ること。今決めました(笑)。

昨年末は、引越、パラオ、与那国島でダイビング、さらに沖縄本島で挨拶回り、その後ぐっちーさんと一緒に岩手県に行くなど、あわただしく過ごしました。

 
待ちに待ったハンマーヘッドシャーク。必死に食らいつく。

 
再び訪れた海底遺跡。

昨年は、ほとんど研修で一年が終わりました。これまで述べてきたように、そのうち10ヶ月くらいは沖縄にいました。
それも全て終了し、今年から本格的な活動が始まります。
これまで色々な形で関わってきた世界、職場ではあるので、まったく真っさらな状態からのスタートというわけでもないのですが、新しい世界への挑戦、自分の理想に近づく第一歩ではあります。そのことを思うと胸が躍ります。

まずは新しい活動に全力を投入したいという気持ちです。少なくとも一年は、24時間365日仕事に没頭するぐらいの気持ちで臨みたいですね。
もっとも、仕事に集中する中で、書きたいことは自然についてくるような気もします。
ここ数年はインプットというか傍観者的に情報に接することが多く、それもあってなかなか筆が進まなかったのですが、これからは再び能動的な立場になり、刺激も多くなるでしょうから、かえって書く頻度も増すように思います。たぶんですが(笑)。
書きたいことのイメージはあるので、あとは経験を積みながら、色んな人と話をして、考えを深めてみたいというところです。マイペース、好きなときに好きなだけ書くというスタンスに変わりはないのですが、もう少しアウトプットを意識してみたいと思っています。

そんなわけで、簡単な近況報告になりました。
新年の抱負も、毎年述べている自然体のスタンスに変わりはないのですが、とにかく今年は萌える!じゃなくて、燃える!ぐらいシンプルにとどめます。
私を直接知っている方で、ご無沙汰している方は、ぜひお気軽に声をかけていただければと思います。
仕事の話でもそうでない話でも、飲みでもゴルフでも大歓迎です。

ということで、本年もよろしくお願いいたします。

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最近読んだ本。

■ ダニエル・ヤーギン 『探求-エネルギーの世紀』
『石油の世紀』で有名なヤーギンの最新著作。
湾岸戦争後の新しい世界、エネルギー安全保障、天然ガス(LNG、シェールガス革命)、電気(インサルの送電網、ニューディール)、原子力、気候変動、再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオ、地熱、水力、VC、オバマ政権、中国)、省エネ(スマートグリッド)、自動車(蒸気、エタノール、電気)など、石油と歴史に主眼を置いた前著と比べ、テーマは広く最新の問題もカバー。福島原発事故もフォローされている。
歴史的な視点は健在で、大きな流れと見取り図を見渡せる。中央アジアのパイプラインをめぐる駆け引きはピーター・ホップカークの名著『ザ・グレート・ゲーム』を思い返せばイメージがふくらむし、GE(PWR)とウェスチングハウス(BWR)の軽水炉の主導権争いはエジソンとウェスチングハウス(ニコラ・テスラ)の電流戦争の再現とみるのも面白い。

■ 黒木亮 『エネルギー』
サハリン2、アザデガン、中国航空油料事件を軸に国際エネルギービジネスの現場を描く経済小説。
黒木亮は、ジャンルとしては城山三郎や高杉良の流れを組むのだろうが、彼らや真山仁などよりもドライで抑制の効いた筆致に特徴がある。この作品も、小説の体裁をとってはいるがほとんどノンフィクション。経産官僚や外務官僚の動向、ワシントンDCのベルトウェイやイラン内政の描写など内部にいた自分も納得できる生々しさ。人間ドラマやマクロの視点に頼らず、事務的ですらある個別の細かい動きに集中しながら、スケールの大きな物語を骨太に紡ぎ出す手腕は見事。
古くなった記述もあるが、ダニエル・ヤーギン『石油の世紀』、藤和彦『石油を読む』のように、歴史と見取り図を知る上で今でも参考になると思う。
『巨大投資銀行』など同じ著者の他の作品も密接に関連しているので併せて読むと面白さが深まる。

■ ウォルター・アイザックソン 『スティーブ・ジョブズ』
ペーパーバックで安くなっていたので読んだ。
真新しい話はないがよく整理されていて、バウハウス的な機能美を目指すジョブズの姿勢がマッキントッシュからiクラウドのデザインにつながっていることなど、ジョブズの仕事を有機的な連関でとらえることができる。パーソナル・コンピュータからクラウド、オープン対クローズドのテック史をあらためて見渡す上でも有益。
それにしても初代マッキントッシュ、発売されたときのブームをおぼえているけど、こんなに不完全な製品だったんだなあ・・・。

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(沖縄での自分のマンションからの風景。沖縄の雲は美しい。大好きだった。この風景が見られなくなると思うと切なくなる。)

私を直接知っている方へのご報告ですが、今月26日に那覇を出て、東京に戻ることになりました。
10ヶ月という短い時間でしたが、たくさんの素晴らしい人たちと会い、色んなことを経験しました。その一つ一つがかけがえのない思い出になりました。自分にとって新しい故郷ができたような思いがします。お世話になった方々とは、これからも親交を続けていければと願っています。
東京にいらっしゃる方々におかれては、しばらくぶりになりますが、忘れられていないことを祈っています(汗)。よろしくお願いします。

It's finally time to leave Okinawa. On Wednesday 26th, I'm going to leave Naha for Tokyo. Although I lived here for only 10 months, I met so many wonderful people and gained a lot of experiences.
Every single moment of my life here turned into a precious memory. I believe this place has now become my second hometown.
I'll definitely come back "home" quite often. I would appreciate it if you could take your time to hang out with me. In fact I'm coming back as early as December. If you come to the Tokyo area, please let me know.
I can't feel anything but gratitude for everyone around me. Thank you, thank you so much.
(The photo below was taken at dusk just before my room on the 9th floor. I love beautiful clouds in Okinawa, which I'll certainly miss in Tokyo...)

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最近読んだ本。

■ ブライアン・グリーン 『隠れていた宇宙』(2011)
『エレガントな宇宙』『宇宙を織りなすもの』に続くB.グリーンの最新著作。
ひも理論、時空論に続き、今回は多宇宙(multiverse)を中心とする最先端の宇宙論を展開する。
一般相対性理論から導かれるパッチワークキルト多宇宙とインフレーション多宇宙、ひも理論(余剰次元)を加えて導かれるブレーン多宇宙、サイクリック多宇宙、ランドスケープ多宇宙、量子力学から導かれる量子多宇宙、ブラックホールと情報理論(エントロピー、最小情報容量)から導かれるホログラフィック多宇宙。これらの多宇宙に関する議論をまとめて知ることができる。
ここで紹介される現代物理学の最高峰は、観測不能な知的創造という点でもはやSFと変わらない。その発想の飛躍と結晶化には哲学的・文学的なロマンすら感じられる。著者がノージックの哲学に世界観を揺さぶられたというエピソードも示唆に富む。
光速度不変の原理と不確定性原理を脅かした最近の発見(「世界観をめぐる論争」でも触れた。発見自体は後で否定されたが。)を見てもわかるとおり、この世界は数年で議論の様相が変わってしまう。その最新の状況をフォローしてくれているのがありがたい。最近話題になったヒッグス粒子についてもインフレーション多宇宙の説明の中で言及される。
議論の前提となる相対論やビッグバン、ひも理論の解説もあり、これら理論の応用を知ればかえって理解もしやすくなるから、最初にこの本を読んでから前2作を読むのも良いと思う。
余談になるが、素粒子物理学の権威で、あと数年生きたらノーベル物理学賞をとったとも言われる故戸塚洋二東大教授は大学の部活の先輩。この方のブログは、ガンとの闘病の記録が有名だが、科学入門、自然や世界の考察も読み応えがある。平易な文体の中に厚い思索と暖かい思いやりが込められていて、胸を打つ。

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与那国島の岬から見た海

ツイッターやFBでは結構まめに書いているのですが、ブログを書くのはだいぶ久しぶりになってしまいました。

こちら沖縄では台風が猛威をふるっています。
記録的規模、最大級の警戒という激しい文字が躍ります。日曜朝から暴風域に入り、激しい風音で目が覚めました。それからはもう一日中引きこもり。買い出しは昨日済ませて、久々に自炊。
このところずっと、週末はダイビングとゴルフをやったり、ちょっと連休があると旅行に行ったりで、せわしなく過ごしてきたので、こういう風に一日家にいるのは久しぶりでした。週末がつぶれるのは残念ですが、良い機会ととらえて、ゆっくり休むことにします。

その旅行ですが、8月中旬に一週間、沖縄の八重山といわれる離島をめぐりました。
今回行ったのは石垣島、波照間島、西表島、与那国島でした。

●石垣島
石垣島は、宮古島と並ぶ人口と西表島に次ぐ面積を有する大きな島です。
八重山諸島のハブになっており、だいたいの島にここから飛行機と船で向かうことができます。
7月にも行ったことがあり、そのときにはダイビングしながら海中でマンタを見ましたが、今回はシュノーケリングしながら海面からマンタを見ることができました。距離的には海面の方が近く、真正面から見えるので、ダイビングのときに見たのとは違う迫力がありました。


見えにくいですが、2尾のマンタが写っています。

●波照間島
波照間島は、有人島では日本最南端に位置する島。
石垣島から船で行くしかないのですが、風向きや波の状態によって欠航することが多く、7月に行こうとしたときは3日間すべてが欠航で行けませんでした。今回も、朝の第1便は石垣島を出港しながら、高波のために途中で引き返すというまさかの事態。2便と3便も欠航し、諦めかけたところで、奇跡的に波が穏やかになり、最後の便が運航。ようやく上陸できました。
「波照間ブルー」とも言われる透明度の高い海でダイビングとシュノーケリングをしました。



でも、なんと言っても印象的だったのは、海辺で見た満天の星。夜12時から夜中の2時まで西浜で寝そべって星を見続けました。ペルセウス座流星群の時期にあたり、1時間に45本の流れ星を見ることができました。

●西表島
西表島は、自然の美しさで有名ですね。
ダイビングを2日間、ピナンサーラの滝を見に行くカヌーとトレッキングを一日かけてやりました。絶景と多様な生物の生態を楽しむことができます。


ピナイサーラの滝の頂からの風景。

●与那国島
ここは日本最西端にある島。台湾はすぐ近くで、天気が良ければ最西端の岬から見えるほどです。
旅行中に中国人による魚釣島上陸事件がありました。那覇の検察庁は大変な様子でしたね。
ドラマ『Dr.コトー診療所』のロケ地としても有名です。診療所のセットは今でも残っていて観光地になっています。どこの宿にも原作の漫画が置いてあって、夜に読みふけりました。実際に沖縄で生活して、離島に行ったりすると、この漫画の描く世界、魅力や苦労がリアリティをもって伝わってきます。
ダイビングでは、有名な海底遺跡に行くことができました。夜は遺跡を開拓された方がパーティーをやってくれました。


海底遺跡。雲のように見えるのは海面の波の動き。

沖縄といっても、本島以外にも沢山島があり、それぞれの自然、文化に個性があります。
ダイビングも含めれば、今回の旅行以前には、石垣島、竹富島、黒島、宮古島、水納島、粟国島、慶良間(座間味島など)に行きました(本島と陸続きのところも入れれば、伊江島、瀬底島も)。
実際に行くと、自然や食べ物から、人の顔立ち、雰囲気、姓氏まで、色んな発見と確認ができて面白いです。ここまで深く突っ込めたのも1年近く滞在できたおかげで、ラッキーだよなと思います。
そんな沖縄にいられるのもあと1ヶ月くらい。さびしい・・・でも、東京に戻るのも楽しみではあります。関東で育った自分にとっては、遠く離れた南方に、第二の故郷みたいなものができたのもうれしいことですね。

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最近読んだ本。

■ ニコラス・ハンフリー 『ソウルダスト』(2012)
離島旅行中に読んだ。
意識とは、自分自身が脳の外の世界について意見を述べ、それが脳の別の部分に影響を与える劇場のような現象である(デネットが『解明される意識』で批判する「デカルトの劇場」とは、外の世界の「複製」にとどまらないという点で異なる)という考え方を、ネーゲルの「being like something」を説明するための「理論」として導入する。理論の存在根拠として、意識という幻想の存在が進化的に理に適うことを説く。
意識ある自己、すなわち、自分自身(脳の一部)の表象行為(情報と志向性)を自分(脳の他の部分)が眺める(そして私秘化し、生存に生かす)ことは、自己必要条件としての他者の存在、創発(認知と身体・環境との相互作用)、身体と言語にも通じる議論。
クオリアの主観的属性については、時間の経過とともに起こることを統合する計算、アトラクター状態になるループ形式の再帰(ホフスタッター『ゲーデル、エッシャー、バッハ』参照)という脳の活動から説明できるとする。時間が鍵となる着想が興味深い。時間と死の関連についての記述はベルクソンとハイデガーを想起させる。
文体はシンプルで(デネットやチャーマーズ、ノーレットランダーシュの著作にある回りくどさ、ペダンティシズムは少ない。物足りなさも残るが。)、文学的センスもあり(タイトルの「ソウルダスト」とは自己の感覚の世界に対する投影)、とっつきやすい。何となくはぐらかされたような感もあるが(意識が、自然淘汰を回避し、生存に役立つ、というのは、デネットも『自由は進化する』で同旨のことを述べていたが、厳密な存在根拠にはならないような。ただこれは心の理論にも言われている話で、致し方ないところか。)、意識の話に興味ある人なら読んで損はないと思う。
心の哲学について、見取り図を得たい人には、ジョン・サール『マインドー心の哲学』、ホフスタッター、デネット編『マインズ・アイ』

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進化論といえば、こないだ、映画『プロメテウス』(リドリー・スコット2012)を見ました(強引・・・笑)。
『エイリアン』のプリクエルということで、何となく検討はついていたが、ある意味で期待にこたえてくれたトンデモ映画。エイリアン好き、GANTZ好き、映像好き、強い女の人好き、なんか凄いものみたくて心の大らかな人、それが全部当てはまる自分のような人なら楽しめるでしょう。そうでない人は、なんかやらかしてしまった映画という印象しか残らないかもしれませんね。あ、自分もそういう印象でしたけど。
リドリー・スコットといえば、トニー・スコットの自殺にはびっくりした。彼の映画は、まさに80年代ブロックバスターを象徴するようなものばかりで、どの作品も青春の1ページのように思い出深い。一つ挙げろと言われたら『トゥルー・ロマンス』か。この頃のクリスチャン・スレイターの壊れっぷりは素晴らしかった。転校生がトレンチコートマフィアのような格好で同級生を殺しまくって最後に校庭で爆死する『ヘザース』とかヤバすぎて最高でしたね。



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もう5月。早いですね。沖縄はゴールデンウィークの連休から梅雨入りしましたが、かえって天気が良くなりました。
連休では、本島北部で2泊、宮古島で3泊しました。
北部では伊江島に行ったりゴルフしたりバーベキューをしたり。宮古島ではゴルフしたりダイビングしたり。まあさながら部活の合宿のように体力を使う毎日でした。ハードでしたが、やり切った感はありましたね。

だいぶ前になってしまいましたが、セネガルの大統領選、なんとか現職のワッド大統領の三選が阻まれましたね。
ワッドが勝者のサルに祝福のメッセージを送ったのは立派。これでアフリカに誇るべきセネガルのガバナンスが守られました。こういう当然のことがなかなかできないのがアフリカですからね。
しかし、これで、一度大統領選出馬を表明しながら、ワッドが敗北すれば音楽を続けると言っていた国民的英雄ユッスー・ンドゥール、彼の政界進出はおあずけですね。

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最近読んだ本。

■ ミシェル・フーコー 『ミシェル・フーコー講義集成8 生政治の誕生』
数あるフーコーの知的遺産の中で、地域を超えて、現代においてなお(現代だからこそ)最も現実に活かすことのできるものは、「生-権力(bio-pouvoir)」ではないかと個人的には思う。
(現実に役に立とうが立つまいが、面白ければどうでもいいのだが(実際フーコーのプロジェクトの多くは性質上実践から遠い)、フランスのような国は、実学から遠い思想、哲学、歴史を語る知性が統治エリートとなって実務も捌くところだから、こういう視点もまんざら野暮ではない、と思う。)
現代福祉社会は、フーコーの言う「生を与える権力」(近代以前の「死を与える権力」との対比)、「生の政治学」という統治性(gouvernementalite)の概念で巧妙に説明できる。給付行政が自由を奪うという逆説は、日本を含む先進国が直面する現代的問題(沖縄も一つの例)。その理論化と規律は大きな知的挑戦で、現代公法学においても熱いフィールドとなっている。
この本は、1979年におけるコレージュ・ド・フランスでの4ヶ月間の講義の記録。生政治の理解の前提となる自由主義と統治理性を現代史(『知の考古学』からの方法論)と同時代の経済思想(オルド自由主義、シカゴ学派の新自由主義に重点)を重ねつつ語る(こんな講義をタダで一般開放するのがフランスのおそるべきところ)。
『言葉と物』で語られた西欧の思考の転換(表象と人間)が統治術の世界でも姿を現す。30年も前の言説にもかかわらず、先に述べた自由の逆説という現代的問題(「統治の過剰」)の意識をもって読むと、また新たなものが見えてくる。時代を経てますます説得力を増すテクストの凄さを思い知らされる。

■ 木村榮一 『ラテンアメリカ十大小説』
お手軽に南米文学のエッセンスを味わえる便利な本。
コンパクトな書評の中に、翻訳の大家である著者ならではの哲学(歴史の断絶・欠落と時間の洞察がポイント)、時代と地域を超えた縦横無尽な文学論が光る。カイヨワ、ジョージ・スタイナー、開高健等、ラテンアメリカ文学以外で言及される作品も興味深い。
ブラジル文学が入っていないのが残念なところ。余談になるが、自分にとってブラジル、「南米」の熱さを最初に感じさせてくれた作品は、高校生のときに読んだ船戸与一『山猫の夏』。世界への関心と冒険心を激しくかき立てられた。興奮のあまり、大学に入った後、グアテマラでスペイン語を学び、メキシコとキューバを回った。どうしようもなく無邪気で楽しかったあの頃。
船戸作品で一番好きだったのは『砂のクロニクル』。日本人でもこんな壮大な物語が描けたとは。血と硝煙の果てに訪れる、詩情に満ちたラストシーン(表題の言葉が初めて登場する)は忘れがたい。

■ 川合康三 『曹操 矛を横たえて詩を賦す』
曹操に関する本は、正史を含め随分読んだが、この本は、武人、政治家、詩人という多彩な姿をバランスよく論じている。
吉川幸次郎『三国志実録』は言わずとしれた不朽の名著。堀敏一『曹操』は最新の研究までフォローした参考文献が良い。三国時代全体からとらえるなら最近出た講談社の『中国の歴史4 三国志の世界』(このシリーズはどの巻も読み応えがある)。『蒼天航路』は表現力が素晴らしい(たとえば、曹操は風采の上がらない小男で、それにまつわる渋いエピソードもあるのだが、この作品は、曹操をこれ以上ない絶世のハンサムに描きながら、随所で、実は容姿に恵まれないことを暗示し、それを逆手にとってカリスマを引き立たせるという絶妙な表現に成功している。そのディテールにこだわりながら物語を盛り上げる手腕の見事さは、正史や学問的研究を知れば知るほど伝わってくる。)。
高島俊男『三国志 きらめく群像』は、その軽い装丁からは想像もつかない濃密な内容を含んだ好著だが、中でも皇帝と詩との関係を論じた章は最高に面白い。
数ある曹操の名詩の中で、自分が一番好きなのは「歩出夏門行」。秦始皇や唐太宗を自分より下に見た帝王・毛沢東、その彼すら認めざるを得なかった壮大な気概と詩才(以前書いた記事「毛沢東と現代中国~ユン・チアン『マオ』」参照)。中華最高の英雄だからこそ描ける精神の美がここにある。

■ 古屋兎丸 『インノサン少年十字軍』
穢れを知らず、聖地を目指す少年たちの十字軍。その栄光と末路を描く歴史絵巻。
非情な展開と凄惨な描写。その果てに訪れる奇跡と静謐。それは目を背けたくなるほど痛ましく、そして美しい。
万人に勧められる作品ではない。ただ、中世とは、むきだしの力が横行し、暴力と嗜虐、非合理に支配された世界だった。同時に(だからこそ)信仰に依存し、精神世界と日常の現実が分かたれない時代だった(フーコーのいう「表象の空間」に通じる)。その、途方もなく暗く、しかし神、魂、永遠が人々にとって真理だった、失われた世界の姿をこの作品は伝えてくれる。
作品中の少年たちの扱いに違和感をおぼえる人には、フィリップ・アリエス『<子供>の誕生』を勧めたい。中世において、年少者は、知恵も力も劣る不完全な大人(動物)としか見なされなかった。純粋無垢とされ、成長されるまで庇護されるべき存在としての「子供」が誕生するのは近代である。

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慶良間諸島でのホエールウォッチング

先週、突然起こったマリでのクーデター。衝撃でしたね。
「マリ紀行」で書きましたが、マリには、昨年7月に訪問したばかりでした。渡航する当時、トアレグとアルカイダの影響力が増している北部には注意が必要でしたが、統治自体は極めて安定していました。それだけに今回の事態はショッキングでした。
この記事でも書いたとおり、大統領アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ(通称ATT(アー・テー・テー))はマリ史上に残る英雄、現代アフリカを代表する優れたリーダーでした。どういう経緯でこのような事態になったのかよく分かりませんが、非合法的な形で統治の座を追われることになったのは残念なことです。体制の不安定と予見の困難が示されたことで、発展にも影響が出るでしょう。2年前のニジェールのようにソフトランディングができればまだ良いのでしょうが。アフリカの厳しい現実が明らかにされた印象です。

私はといえば、休日は、ゴルフとダイビングばかりしています。先日は、慶良間諸島でクジラを見に行きました。
昨日は宜野湾での沖縄国際映画祭に行きました。毎年やっていて、今回4回目ということですが、なかなかの盛況でした。吉本興業が中心に開催しているのでお笑い芸人が沢山来ており、私も色んなライブを見ました。今日は今人気のAKB48も来るそうです。

映画と言えば、私の近所には桜坂という大変渋いところがあり、ここには桜坂劇場というまた渋い劇場があるのですが、ここで来月、エミール・クストリッツァの『アンダーグラウンド』(1995)が上映されるということです。「映画バトン」でも好きな外国映画の一つとして挙げましたが、数あるクストリッツァの名作の中でも、個人的にはこれが一番の傑作だと思いますね。


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最近読んだ本。

■ 佐野眞一 『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』
戦後沖縄の政治、経済、社会、文化を彩る人物群像。
情報量が凄い。沖縄とダイエーや奄美との関係(と創価学会)、川平家と文化行政・ラジオ放送史など初めて知った。
暴力性と黒社会に重点が置かれてはいるが(ホワイティング『東京アンダーワールド』と併読すると良い)、それによりこの地独特の開発、ビジネス、金融、芸能の特質や構造を理解できる。
沖縄に来ると日常から触れるキーワード(言い回し、ニックネーム、ビーチパーティー、模合、オリオンビール、どなん等々)、なじみになる場所(波の上、辻、桜坂、泉崎、ハーバービューホテル(金門クラブ)、公設市場、ジミーズカフェ、琉球ゴルフ等)のありし日の姿や変化が次々に描かれる。これを見るのも楽しい。
他の佐野作品に見られるストーリー性も薄く、個別テーマの集合にとどめる姿勢も好印象(佐野としては、満州国と沖縄という視点から初めて戦後は理解できるとして、前著『阿片王』『甘粕正彦 乱心の曠野』との連続性を強調しているが、このへんはあまり気にする必要はないように思う)。

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嘉手納基地の中を走る

先週末、沖縄マラソンに参加しました。人生初マラソンです。

その二週間前、名護ハーフマラソンに参加していました。日頃10キロくらいは軽く走っていたので、ま、21キロなんて余裕でしょ、と思って、前日も朝まで飲んでいたのですが、これが完全な油断。10キロを普段と同じかそれより速いペースで走るという愚行もあり、12キロ過ぎたあたりで足が動かなくなりました。それでも、歩くことだけはしまいと意地を張り、なんとか2時間そこそこで完走。とにかく足が痛かった。息が上がるというより、足の筋肉が大変なことになるんですね。ただ、あとでフルマラソンをやって思ったのですが、遅いペースでも歩かないで走り通したというのは、実は正解でした。

そんなわけで、教訓を得て走った今回のフルマラソン。
筋肉のサポートのためにコンプレッションスーツ上下も着て万全の状態。これ、体にぴったりフィットして筋肉の無駄な動きを抑えるウェアなのですが(勝手に「ガンツスーツ」と呼んでいました笑)、結構効果がありました。
とにかくペースを抑えることに気をつかいました。おかげで嘉手納基地に入る30キロ地点ぐらいまでは快調。しかし、38キロぐらいになって、いよいよ足の重さにたえられなくなります。ここからは歩いたり走ったり。しかし、この段階になると、いったん止まったり歩いたりした場合、走り始めるのが滅茶苦茶きついのです。どんなに遅くても、とにかく足は動かし続けた方が良いのですね。ということで、歩いたのは1キロぐらいで、あとは何とか走り通しました。タイムは5時間オーバーでしたが、まさか自分が人生でマラソンをやるなど、沖縄に来る前は想像もしていなかったので、やりきっただけで満足でした。

マラソンでは、嘉手納基地の中も3キロほど走ります。
基地と言えば、仕事で絡むことがあり、先日は辺野古にも行きました。
ここ最近、ラムジー事件の判決が出たり(驚きの実刑判決!)、環境アセスメントがもめたり、防衛局長の講話が問題になったり、野田総理の訪問があったり、色々起こってますね。
環境アセスメントや講話については、こういう問題が起こることは、他省庁ではちょっと考えられないところです。「沖縄の冬」で紹介した『普天間交渉秘録』でも触れましたが、防衛省というところは、こんな不器用というか素朴なところがあるんですよね。

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ところで、明日(現地時間26日)、アカデミー賞の受賞式が行われますね。
「Documentary Short」の候補の中に、『Saving Face』という作品があるのですが、この映画の監督、なんと私の留学時代からの友人なんですね。
Facebookで教えてもらいましたが、本当にびっくりしました。
受賞していればパキスタン作品としては初の快挙という。
大学院にいる当時から、映画を作って賞をとったりして、まあ色んな意味で破格な人でしたが、パーティーが大好きな今時の女の子でもありました。バカ騒ぎしたり、計量経済学の課題を手伝ったりしてあげたのがなつかしく思い出されます。
明日が楽しみです。

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映画といえば、ジャック・ケルアックの『On the Road』が今年映画化される(た?)らしいですね。
監督はロードムービーの名手ヴァルテル・サレス。『セントラル・ステーション』は今はなき恵比寿ガーデンシネマで観ました。いまだに強い印象が残っている作品ですが、あれはもう10年以上前になるのか。
ビートジェネレーションは、自分にとって、ヴォネガットやアーヴィングとともに、生々しい、リアルなアメリカの世界の象徴でした。子どもの頃から親しんだ映画や音楽から垣間見えた米国の姿、その原風景がそこにはあった。
ビートの映画といえば、『ビートニク』(チャック・ワークマン1999)は映像が良かった。『死にたいほどの夜』(スティーブン・ケイ1997)はキアヌ・リーブスがやたら気合入っていた。『裸のランチ』(デヴィッド・クローネンバーグ1991)は普通にクローネンバーグの作品でした。

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それと、シリア。すごい状況が続いてますね。
ホムスのみならずアレッポまで衝突が拡大しているとのこと。両方とも、父親のアサドの時代ですが、行ったことがあります。あの普通に機能していた、それなりに近代化した都市が、ここまで混沌に陥るのを見ると、何とも言葉を失います。
シリアのみならず、サウジや湾岸の国々も、昔から言われていますが、一見安定しているようで、実は非常に危ういところがあるんですよね。特にサウジのようなエネルギー的にも地政学的にも極めて重要な国にこんな混乱が起きたら、日本もただではすまないでしょう。怖ろしいです。

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最近読んだ本。

■ ニーアル・ファーガソン  『マネーの進化史』
原題は「The Ascent of Money」。BBCのドキュメンタリー「The Ascent of Man」のもじり。
(1)マネーと信用制度、(2)債券市場(ネイサン・ロスチャイルドとナポレオン戦争)、(3)株式市場、(4)保険(「戦争福祉国家」としての日本の国民皆保険、ピノチェトとシカゴ・ボーイズの年金改革)、(5)不動産市場(『素晴らしき哉、人生!』、ファニー・ジミー・フレディから証券化)、(6)国際金融市場(チャイメリカ)の歴史を俯瞰する。タレブ『ブラック・スワン』やバーンスタイン『リスク』以前の紹介記事参照)のグローバル・ヒストリー版の趣。
興味をもった人は以下の動画(ファーガソンへのインタビュー)を見るのも良いでしょう。56分でこの本のエッセンスがつかめる。



■ ニーアル・ファーガソン  『憎悪の世紀』
散漫過ぎて新鮮味もなし。ただ序章とWWⅡ以降のまとめ方はまあまあ面白い。ブローデルのように現代史の教科書としては使えるかも。

■ ジャック・アタリ  『21世紀の歴史』
ポリシーメイカーとしても活躍する博学の経済学者・思想家・作家が描く歴史と未来と政策。
前半は20世紀までの世界史(グローバル・ヒストリー)の描写。人類の歴史を動かしてきた権力者は、宗教人(典礼)、軍人(皇帝)、商人(市場)だったが、個人主義(自由)の追求が市場民主主義の支配を生んだ。中心都市の変遷(ブルージュ、ヴェネチア、アントワープ、ジェノヴァ、アムステルダム、ロンドン、ボストン、NY、LA)を軸に歴史の動きを説明する。ポール・ケネディ『大国の興亡』やニーアル・ファーガソンの著作を彷彿させる内容。
そして21世紀の歴史に入る。米帝国の秩序は没落し、超ノマド(専門能力を駆使して劇団型・劇場型企業を形成するクリエイター階級)は中心都市の存在しない超帝国(国家の弱体、マネーの支配)の管理者となる。その後に起こるのは個人(下層ノマド)による超紛争(資源紛争、反グローバリズム、宗教原理主義)と超民主主義。最後に(実は一度も中心都市となっていない)フランスへの政策提言を述べる。
アタリは、ミッテランの補佐官、欧州復興開発銀行総裁、サルコジ政権の「政策委員会」のトップを務めた。政治屋ではなく、こんな本を書く知性が実務まで手がけてしまうのがフランスらしい。それが機能するのかは別として。

■ 浅田次郎  『中原の虹』
前の記事で紹介した 『蒼穹の昴』 に続く清末歴史小説。
ここまで脚色が進むと講談か少年漫画かと思ってしまう。『蒼穹の昴』ではまだ歴史そのものの醍醐味を感じることができたが、こちらはもうファンタジーの世界。
『蒼穹の昴』は日中共同ドラマになったが、この作品も中国人が見ることができるとしたら、どう感じられるのだろうか。

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昨年には、光よりニュートリノが速いという、特殊相対性理論に反する実験結果が発表されましたが、先週には、不確定性原理も否定されるという報道がありましたね。
この二つの原理は、言わずとしれた現代物理学の基本原理ですが、合理論と経験論を対立軸とする伝統的な認識論哲学にも影響を与えています。また、不確定性原理は、ゲーデルの不完全性定理とともに、人間の知性の限界を論じる上で重要な示唆を与えています。このように、物理学という一つの学問分野にとどまらず、人間の思想や世界観を左右する大きな広がりを見せているといえます。

この件について印象に残った本。

■ メンデル・サックス 『相対論対量子論』
相対論と量子論については、数々の本が論じているが、この本は、対話形式で二つの世界観の対立を説明しており、論争の熱気を伝えてくれる。文章は平易で簡潔だが内容は本格的。

■ ブライアン・グリーン 『エレガントな宇宙』
相対論と量子論の対立を止揚させる可能性をもつ超弦理論を解説。(以前の記事でも紹介。)
合理論と経験論の止揚に向けたカントの挑戦を彷彿させる(中身は全然違うので比べるものではないが、超弦理論も、実験で検証できない数学による仮説という点では形而上学的)。理論のみならず説明自体がエレガントな一冊。

■ 同 『宇宙を織りなすもの』
『エレガントな宇宙』に続く宇宙論。
時空論と宇宙の創生が中心テーマだが、前提として、相対論と量子論、超弦理論をコンパクトに説明してくれる。
これぐらい簡潔な方がかえって門外漢には分かりやすいかも。

人間の知性の限界については、以前の記事で紹介した『知性の限界』も参考になりますね。
前述の通り、これらの議論は人間の思想や世界観という根本的な問題を扱うものになっていますから、その前提が崩されるとなると、従来の議論の蓄積が無駄になってしまう気もして、なんだか怖いというか残念な気持ちになります。でも、そんな感傷は、科学における真理の探求とはまったく関係のない話ですね。これからの議論の発展を素直に楽しみにすることにします。

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それと、先週行われた台湾の総統選。
台湾経済の中国への依存は、10年以上前から言われていることですが、今回の選挙はその現実をあらためて示したものと言えそうですね。

■ 本田善彦 『台湾総統列伝』
この本は、歴代総統に焦点を当てながら、台湾の現代史をバランスよく描いています。
特務政治の黒幕と言われた蒋経国の肯定的評価や李登輝の複雑な性格などは他ではあまり見られない記述で新鮮。
多少古くなってしまったが(2004年、陳水扁時代まで)、今でも手元にあると役立つ好著。
ちなみに初代総統は蒋介石ですが、台湾人の考える「国父」は孫文ですよね。台湾=中華民国という「国」は、蒋介石が建国したわけではなく、国民党政府が中華民国の臨時首都として台北を定めただけの話ですから、建国者を孫文とするのは当然でしょうし、また、侵攻者である蒋介石に対する本省人の否定的評価もあるのでしょうが、昔、台湾人の友人からその話を聞いたとき、あーそうかーと納得した記憶があります。

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最近読んだ本。

■ デビッド・キャリー、ジョン・E・モリス 『ブラックストーン』
少数精鋭ながら大手投資銀行に匹敵する投資能力・資金力を誇り、ウォール街に君臨するプライベート・エクイティ。本書は、その雄ブラックストーンの物語、創設者シュワルツマンの一代記。
『野蛮な来訪者』で描かれたKKRによるRJRナビスコ買収を含め、セーフウェイ、ベアトリス・フーズなどの歴史的ビッグディール、その資金を支えたドレクセルのミルケン、ケミカルのジミー・リー、M&Aに対抗する弁護士など伝説的プレイヤーの活躍、カーライル、アポロ、TPGら他の代表的PEの興亡、21世紀後半からの資金力と影響力の巨大化という近況が語られており、PE業界の歴史を俯瞰できる。最後には、レゴランドやマダムタッソー等の事例をあげながら、市場経済を支えるPEの意義を理論的に評価する。
ブラックストーンの初期の発展を支えたのは日興證券だった。ソニー(CBSレコード、コロンビア映画)やブリジストンの買収も手がけ、大きな収益をあげている。80年代の日本の金融機関と企業の存在感も今から見ると興味深い。
ブラックストーンの名前の由来はシュワルツマンの「シュワルツ」(=独語、イディッシュの「黒」)とピーター・ピーターソンの「ピーター」(=ギリシャ語の「石」(ペトラ))の組み合わせ。
KKR(ブラックストーンに先行して最強の地位を確立したPE)とカーライル(最も有名なPEの一つ。元国防長官カールーチが会長を務めるなど政界、軍需産業との強い関わりでも知られる。)は小説『ハゲタカ』のモデルにもなっている(KKRは鷲津のいたPE。カーライルは『ハゲタカ2』の敵役。)。

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