独り合点(ひとりがてん)

きもの業界をステージとした、ビジネスと生活スタイル、および近況。

勉強会(4)スピード

2012-06-07 | きもの

辛口で言いますと、呉服業界にはスピードがない。「やりましょう」といってから、1年や2年はざらで、この勉強会も3年かけて、と司会の方がおっしゃっていましたが、それでは呉服の再生は覚束きません。私たちの「やりましょうは、3ヶ月です」。実際昨年11月に1階で開催した「ふふふ、ふろしき祭」は半年の準備です。ファッションデザイナーとコラボした企画ですが、非常に刺激的で、新しい発想、提案がたくさんありました。20代、30代の普段、きものや和には縁遠そうな人たちが、風呂敷をおもしろがって買ってくれました.④,000枚用意しましたが、1週間で80%売れ、そのうち30~40代の購入が60%でした。そして7階/呉服売り場へも足を運んでくれました。生活者のリアリティをもっと深く考えてゆかなければ。呉服関係者は、モノ作りにしても販売にしても生活者へのリアリティがないですよね。スピードと共に呉服業界にはおしゃれで発信力のある人が少ない。和の人は「止まっている」。そんな感じがします。今年の伊勢丹の浴衣のカタログ見て下さい。様々なこだわりと共に、いままでおはなししてきた生活者のリアリティ、そして「入り口と階段]となる提案をたくさん用意し、表現しました。是非、見て下さい。


勉強会(1)業界再生

2012-06-05 | きもの

本日は、東京織商の情報交流懇親会に参加。季刊きものの編集長/山里氏がコーディネイトしてゲストスピーカーは、いま旬の伊勢丹のMD/浅子氏と東京ますいわ屋ではなく新業態TOKYO MASUIWAYAのMD/桜井氏。テーマは、「きもの活性化、再生」。今回の新しい試みは、懇親会をオープンにしたこと。組合員以外は1人1,000円でしたが、この2人の話を間近に聞けるのであれば、安いモノ、と思って参加。しかし会場には行ってがっかり。東京織商は若手の呉服店に参加して貰い、話を聞いて欲しいがためにオープンにしたのに、呉服店の参加はゼロ状態。案内が届かないのか、業界人の情報感度やアンテナが悪いのか、とにかく60代、70代のお偉方ばかり。是で活性化が果たして図れるのだろうか。不安な参加者です。しかし、浅子さん、桜井さんの若いお二人の話は、刺激的で呉服の未来へのチャレンジを明るく語ってくれた。机上だけでなく、実施し、その現場に身を置いている同時進行のワクワクがうらやましいほど脈々と、熱く伝わって来ました。本当にこういう話をもっと呉服店の人に聞かせたい、作り手に聞かせたい。

 

お二人の話に共通することの1つは「生活者に寄り添う」。いわゆる業界目線(30年で7分の1、3,000億円に縮小した現実から言えば、もはや業界とはいえない。業界とは市場規模1兆円以上、だそうです。)ではなく、きものに興味ある人、着たい人、着始めた人に、どのようにきものに興味を持ってもらえるか、その「きっかけ」を作るか。その切り口として「着る人の生活を考える」ことから2社とも丁寧に生活者を見ることから始めています。例えば「入学式のきもの」。小紋、色無地、訪問着など、アイテムではなく、20代後半から30代の女性。1人目のお母さんなのか、2人目のお母さんなのか。お子さんは女の子、男の子。専業主婦、共働き、パートなど、生活者として分類してゆき、きものへの思いや価値観、価格、きものだからこそのお徳感や期待感、ファッションセンスは…などなど掘り下げ、提案して行きます。その結果が仕立て上がり10万円の無地感覚のきものであり、5万円の名古屋帯であったりする。この春のヒット商品はリバーシブルの名古屋帯。表は七宝柄で、裏はモダン柄。シーンを考えてオリジナルで制作したとか。その背景にはアパレルに学んだことが多いそうです。

アパレルでは、プロが見ていいものを思いを込めて作り、チカラのある販売員が売り、お客様も喜んで買ってくれた。さらに店内、店外でファッションショーやイベントを展開し、売る方も、買う方も楽しくてさらに売上げが伸びた。しかし、そうのうち売上げを上げるためのイベントになり、販促企画になってしまい社内は厳しく、お客様もつらい?状況に。そこから本当に生活者が必要な、求める提案型の商品やサービスを考えるようになって、復活してきた。この流れは呉服業界のパターンそのもので、このアパレルのケーススタディに学び、TOKYO MASUIWAYAのショップコンセプトを考えたそうです。それが従来の呉服屋を反面教師とするショップ作り。そのコンセプトは「きものフアンを作る店作り。着る人により添う店作り」です。


絞りの振袖

2012-03-10 | きもの

写真は、絞りの振袖の上前部分です。最近では見ることが少ない古典柄です。技術はいつの時代も進化するもので、絞りにしても絞りに見えるような型染や巧妙なプリントもある。しかし、手作りのものには、写真で分からないでしょうが、何か”伝わってくるもの”、存在感、オーラのようなものを感じます。この春の振袖展開催のために、仕入れに来た高名な呉服屋さんとに一緒に100枚近くの絞りの振袖を拝見させていただきました。まさに「眼福」という言葉にふさわしい時間でした。楽しい日でした。


うれしいサービス

2012-03-08 | きもの

先週は、新商品企画の発表のため、3日間京都でした。初日と3日目が雨。どうしても雨だときものを着るのを躊躇してしまうのですが、会場のメーカーの社長さんは年中きもの。そこにスーツというわけにはゆくまいと、きもので3日間過ごしました。最終日、東京まできもので帰ることも考えましたが、やはり雨の中、結構な荷物を持っての移動は不便。そこでダメ元で宿泊していたからすま京都ホテルのフロントに更衣室はないか、問い合わせたところ、あいている客室を着替えのために貸してくれた。とてもうれしかったですね。からすま京都ホテルは、ビジネスホテルですが、京都ホテル、オークラの系列なので、そのあたりのサービスがきちんとしているんでしょうね。それにしてもうれしい。部屋はビジネスホテル特有の味気なさだが、サービスは一流!

それにしてもおかみさんたちは、本当にきものを年中着ている。それに比べ男性は、ということもあり創る、売る人がもっと着物を着ないでどうする、と昨年、宮崎の児玉さんが室町の人はもっときものを着なきゃ、と取引先の問屋さんなどに話をしたとき、「よけいなこと、いいなはんな」とまで言われる始末で、がっかりした、というお話を聞きました。しかし1年過ぎて、何やらきものを着る業界人が増えてきたように思う。特に私の周りは、きものを着る人ばかり。しかもきものを着るようになって、きもののことはもちろん、お客様のこともなるほど、と合点するものや発見するものが多いと口をそろえて言います。きものを扱う人が、着ないでモノ言うことほど、説得力がないものはない。今年は大島紬イヤー。来年は絞りイヤーなど、テーマを決め、業界人が着物を着たら、産地はどれほどすごいことになるか。100軒、1,000軒の呉服屋さんはじめ、それぞれが着用で購入し、その実感できものの良さを伝え、販売したら、すごいでしょうね。そういう時代が近付いてきた、と最近お会いする産地の若手経営者とお会いする度に感じます。


季節を演出する

2012-03-07 | きもの

京都・室町、西陣の問屋、メーカーは、毎月初旬に一斉に発表会を開催します。とくに三大集散地といわれる東京、名古屋、京都は、昭和60年代までは全国の呉服屋さんや地方問屋さんが全国から一斉に仕入れに集まり、縁日のような賑わいでした。平日でも朝晩は運送会社の車が荷物の搬入搬出で道は歩くこともままならない、それはすごい大混雑でした。しかし今は、市場規模が10分の一に縮小し、全国でも京都・室町だけが往時の賑わいを感じさせます。今回は3日間、藤井絞さんに間借りして、アレコレプロジェクトの新商品を発表したのですが、藤井絞の社屋は大正年間に建てられた町屋。1歩社屋に入り、ガラス扉をあけるとそれは壮観でした。代々のひな人形が部屋いっぱいに飾られ、春1色。さらにいくつもの部屋にもひな人形や額、屏風などが。写真は応接間のコーナーに飾られていたものですが、藤井絞さんは、いつお伺いしてもきちんと季節の”室礼”がされていて、とても気持ちがいい。四季の国、二十四節季、歳時記がある国に生まれた幸せ、心の豊かさをつくづく感じます。


貸しミシン空間

2012-02-18 | きもの

日本縫製機械工業会、いわゆるミシンの製作会社の組合の発表によるとミシンの国内生産のピークは1968年、400万台。普及率は85%前後。しかし現在は6万3000台。それでも普及率は70%前後と高い。しかし我が家を例にとると当時最新鋭の非常に高額なミシンがあるが、子供が入園、入学したときに指定の運動靴袋や画材袋などを作って以来だから10年は、物置状態にあります。今朝の東京新聞には、やはりこの時期に入園・入学グッズ作りで、レンタルミシンが大忙し、と報じられていました。普段あまり使わないので、ミシンを持っていない人も多いし、手芸教室は時間の都合で通えないし、という母親のために、1時間500円からミシンをレンタルをするお店が人気とか。このお店は、ミシンを楽しんでもらえる環境作りにと、カフェも併設されているそうです。

さてそこで、ですが、いま月刊アレコレ・着る人委員会の3回目のアンケート「きもの周りのベスト1&ワースト1」の回答を集計中ですが、いろいろ面白い発見や疑問が出てきた。たとえば「安全ピン」。半襟留めはじめ、そこそこに活躍する構便利な小物?で人気なのですが、今ひとつ掘り下げて聞いてみると、ピンの先が「甘い」ものがあり、なかなか布地に刺さらなかったり、生地に穴をあけてしまったり、挙句は裂いてしまうような鈍らな安全ピンがあり、安全ピンならどれでもいい、というわけではないこと。それは、いろいろなものにも言えることで、掘り下げると安全ピンの「ブランド」まで確認しないと、便利ですとは紹介できない。そこが悩みです。帯の花邑さんや仕立ての直やさんなど、日常的に針やハサミを使ってらっしゃる方に聞くと、なるほどというものが多い。ミシンが家庭になくなり、裁縫道具が無くなりつつある現在。裁縫道具といえば100均や粗品のような裁縫道具では、みんなその場しのぎのものばかり。そんな針やハサミで裁縫なんかできるわけがないし、そんなつもりもないと思うのですが、いい道具はそれなりの金額はしますが、使い勝手は納得できます。ここらで呉服屋さん、一流の針やハサミをそろえ、和裁教室、というほど大袈裟なものではなく、チクチク教室、中学生の裁縫教室程度のものを開催されたはいかがでしょうか。肝は一流の、使っていいものをそろえること。ついでに悪いものも比較でそろえる。案外、参加者は多いと思うのですがー、どうでしょうか


2月14日は、ふんどし記念日

2012-02-10 | きもの

2月14日は、いわずとしれたバレンタインデーですが、2月14日を「2=ふん、14=とし」と読み「ふんどし記念日」ともいうのを知っていましたか。本日の東京新聞に、ステテコブームに続き、和の下着、ふんどしがブームで、しかもその購入者はギフト用に女性が6割、と紹介されていた。しかも「日本ふんどし協会」まであるそうな。綿ではなく、リネンを素材にし、カラフルに7色。しかも紐の太さは16タイプ。「SHAREFUN」というネーミングだそうです。

落ち込んでいた時、友人に勧められ、「締めているうちに、しゃんとして、気持ちが前向きになった」という体験から、すっかり魅了され、赤白しかないのに不満が募り、あらゆるメーカーのものを試した結果を、メーカーに持ち込んで作ったのが「SHAREFUN」。男着物の愛好者には、ふんどしファンも多いのですが、まるっきり?かどうかは分かりませんが、呉服屋さんの盲点ですよね。今、「アレコレ着る人委員会」でも、「着物周りの、小物などのすぐれもの」をアンケートしていますが、どれも着物を着るための必需品や便利グッズですが、呉服屋さんではその75%が扱っていないもの。「着物を着ないから、知らないのでしょ!」との言葉には、考えさせられます。

 


近代着物の歴史(7)紅型①

2012-02-10 | きもの

インドに発祥した絣が、海のシルクロード、別名「絣ロード」を通り、久米島、沖縄諸島、そして沖縄本島に至り、豊かに織物の花が開きます。また中国、薩摩、京都、江戸の染織技術が伝えられ、沖縄の染織に鮮やかな彩りを添える染色。その沖縄染色の代表といえば「紅型・びんがた」。しかし沖縄での紅型の歴史は分からないことが多くて、1700年代半ばには技術は定着したそうですが、その経緯はいまだに不明なのだそうです。何しろ先の大戦では焦土となってしまい、希少な文化財は消失してしまっていますから、研究は至難ですよね。

 

古くは「型付き、カタチキ、色差し、美形」などさまざまに記されており、「びんがた」という音に「紅型」の字を定着させたのは沖縄文化の研究者として活躍し、後に型絵染で人間国宝になった鎌倉芳太郎だそうです。また紅型は王族や貴族しか着られなかった、という説がありますが、芭蕉布、絹、綿、上布など、あらゆる布が素材としてつかわれていることから、かならずしも高位者のみのきものではなかったようです。

 


呉服屋さん、探検隊!?

2012-02-08 | きもの

呉服屋さん=敷居が高い、怖い、という言葉をよく聞きます。一方でマイ呉服屋さん欲しい!の声も。ライターの雨宮みずほさんは、きものビギナーの自身が、呉服屋さん探しに苦労したことからグルメガイドのように、呉服屋ガイドブックがあればと書いたのが「東京きもの案内」。知り合いの呉服屋さんに聞くと、結構この本を持って訪ねてくる方が増えたということです。道しるべがあると、敷居も低くなるんですね。最近はホームページも充実してきているのですが、やはり自社からのメッセージだけでなく、信頼できる第3者の視点からの紹介は影響力が大きいですね。仕事柄多くの呉服屋さんをしていますが、それぞれが個性的で、家業店は特に1軒1軒が個性的です。その個性は店主の個性でもあり、きもの観が如実に店頭やスタッフに反映されています。どのお店も甲乙つけがたいのですが、今回は「呉服屋さんを怖がってばかりいないで強い味方にすることができたら最高!数を頼みに敷居の高いお店に見学会にゆきたい」という声に応え、あえて1歩踏み込んで、呉服屋さん紹介を企画しました。初めての試みですが、どのようになるのか、やってみて1つ1つを分析し、続けられるようならシリーズで個性豊かな家業店を紹介してゆこうと思っています。題して「呉服屋さん探検隊」。少しでも敷居が低くなればと願っての企画です。

 

満員御礼! 2/9定員になりました!

 

 

第1回の探検する呉服店は、長年お付き合いし、その商品知識のみならず、きものへの思いの熱い、最近は熱すぎるくらい想いの強い、東京大田区蒲田のひつじや呉服店。その人柄の一端を知りたいという方は、12月4日のアレコレ「着る人委員会」のイベントの模様、或いはあづまやきものひろば てれびじょんでアーカイブ放送していますので、アクセスしてみてください。

 

10人の募集ですが、このブログをご覧の方で興味ある方はどうぞ参加ください。10日24時まで2名の枠を押さえておきますので、ご応募の際には「合点」と添えてください。もちろん何か「買う」必要はありません。

 

<開催要項>

■日時/33日(土曜日)15:00~19:30

■内容/

1部・ひつじやさんを見る、聴く、体験会/15001715

店内を見学し、店主の蘊蓄を聞きながら呉服屋さんを体験します。きもののこと、呉服屋さんのこと、お手入れやお直し、この機会になんでも普段疑問に思っていること、不都合など…直接、店主にお聞きください。

2部・ひつじやさんを楽しむ、食べる 173019:30

2部は場所を移して、若旦那が腕をふるう洋食“hitsuji Kitchen“を貸し切りし、店主、編集長を交え、おいしいお食事ときもの談義で楽しいひと時を過ごします。

■人数/10人限定(定員になり次第締め切ります)

■会費/おひとり5,000円(食事代も含む)

■申込方法/info@arecole.comまたはFAX 03-6808-1819


夏物・ゆかた発表会(2)

2012-02-01 | きもの

すっかり有名になった「雪花絞り」。むかしからある絞りで、昭和30年代くらいまではちょっと高級な赤ちゃんのおむつとして、使われていたそうです。何しろ木綿で、絞ってあるので肌に優しく、藍で虫よけにもなって…なんてこともあって、今考えると贅沢ですね、昔の赤ちゃんは。しかし1970年代から急速に需要は落ち、忘れ去られていたような絞りでしたが、8年前に藤井社長が注目し、力を入れて売り出してきました。それが功を奏して、といっても5年目くらいに七緒の表紙で紹介され、ご存知のサントリー金麦のコマーシャルで壇れいが着て、大ブレイク。苦節、なんて悲痛な話ではありませんが、藤井さんのプロデュース感覚が見事に花開き、ロングセラーになりつつあります。しかし「売れれば、真似る」業界で、しかも悪いことに藤井さんより手を抜き、価格を安くして、売り出すから始末が悪い。昔からある柄で、特許もなにもないやろ、というが業界。同業者の仁義、というものが、ない。全く残念なことで、便乗することしか考えていない。「マネされたら、その上をゆく工夫をするまでで、「かまへん」とは藤井社長。その創意工夫が写真の2012年の新・雪花絞り。生地が透けているのがわかりますか。絹、しかも紗に雪花絞りを施したもの。今までだれも考えなかった、あるいはできなかったのか、木綿の絞りを絹に生かした当意即妙さが、面白い新商品です。