Festina Lente.

日々の雑感と勉強の進捗状況の記録

私道の違法駐車と通行地役権

2005-03-29 | 雑感
<路上駐車>私道はダメ 最高裁が通行地役権認める逆転判決
 神戸市内の自治会所有の私道を通行する権利を持つ男性が、私道に路上駐車していた車の所有者を相手取り、「通行の邪魔になるから車を移動してほしい」として、通行目的以外の私道の使用差し止めを求めた訴訟の判決が29日、最高裁第3小法廷であった。上田豊三裁判長は、原告側敗訴の1、2審判決を破棄し、原告側の請求を認める逆転判決を言い渡した。公道と違い、原則として警察による取り締まりが不可能な私道の路上駐車を巡る判決は、同様のトラブル対処に影響を与えそうだ。
 原告は神戸市に住む弁護士の男性。男性の住宅から公道に出るには必ずこの私道を通らなければならず、住宅購入時に私道を通行する権利である「通行地役権」を取得していた。
 判決は、この私道が▽公道と住宅を結ぶ通路として開設された▽舗装されており通路以外の利用が考えられない――などの特徴を持つと指摘。そのうえで「こうした(生活道路に設定された)通行地役権は、道全体を自由に使用できる権利である」と初判断を示し、「現場に恒常的に車を駐車して独占的に使用することは許されず、通行地役権者はこうした行為の禁止を求められる」と結論づけた。
 1、2審は「駐車車両があっても通行可能な道幅が3メートル以上残っており通行に支障がない」と訴えを退けた。このため、男性は「使用できる道幅を制限するのは不合理」と主張していた。
 判決について、ある警察幹部は「同様のトラブルは多いが、通報を受けても車の持ち主に警告するのが精いっぱい。裁判所の判断は興味深い」と話した。【小林直】
 <通行地役権> 他人の所有地を通行できる民法上の権利。土地所有者との契約に基づいて設定される。通行地役権を妨害しない範囲で所有者も土地を利用できる。」
毎日新聞) - 3月29日12時18分更新
(平成17年03月29日 第三小法廷判決 平成15年(受)第1590号 車両通行妨害等禁止請求事件)


 地役権とは、「ある土地(要役地)の利用価値を増すために、他の土地(承役地)の上に支配を及ぼす権利」(民法280条)で用益物権である。そして通行地役権とは、要役地の利用価値を増すために、承役地の通行を内容とした地役権である。
 地役権も「一定の範囲において承役地に直接の支配を及ぼす物権であるから、その支配が妨げられた場合には、これを排除することを請求する物上請求権を生ずる。」(『民法講義Ⅱ』我妻栄著・有泉亨補訂(岩波書店)424頁)
 以上の点に鑑みれば、当然妨害排除請求権を行使できると思うのですが…「原審は,次のとおり判示して,上告人の請求を棄却すべきものとした。 本件地役権においては,本件通路土地のうちどの部分を通行すべきかの制約はないと解されるが,現況の道路全幅につき車両の自由通行を内容とするものとは認められない。そして,本件通路土地の入口付近の幅員は2.8mしかないのに対し,被上告人が本件車両を駐車させている部分の残された幅員は3m余りあること,2.5t車の幅員はせいぜい1.8m程度であって,本件通路土地を通行し得る車両は,本件車両の脇を容易に通過できることからすると,本件車両によって上告人が本件通路土地を通行することが妨害されているとはいえない。」として違うようですね。はっきりしませんが、通行が妨害されていない以上妨害排除請求権の行使は権利濫用であり、不法占拠(違法駐車)を保護すべきであるといっているかのようです。
 しかし、最高裁は、「本件車両を本件通路土地に恒常的に駐車させることによって同土地の一部を独占的に使用することは,この部分を上告人が通行することを妨げ,本件地役権を侵害するものというべきであって,上告人は,地役権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求権に基づき,被上告人に対し,このような行為の禁止を求めることができると解すべきである。本件車両を駐車させた状態での残余の幅員が3m余りあり,本件通路土地には幅員がこれより狭い部分があるとしても,そのことにより本件係争地付近における本件通路土地の通行が制約される理由はないから,この結論は左右されない。」として、原審を棄却しました。私としては支持できる判決だと思います。

 ところで、記事に「公道と違い、原則として警察による取り締まりが不可能な私道の路上駐車」とあるのですが、不動産侵奪罪(第二百三十五条の二)の構成要件には該当しないのでしょうか。
 確かに、自動車の保管場所の確保等に関する法律(昭和三十七年六月一日法律第百四十五号)第十一条では「道路」における駐車を禁止しているのみで「私道」は「道路」ではないので、自動車の保管場所の確保等に関する法律では取り締まり不可能であろう。
 しかし、本件の場合違法駐車であり、他人の不動産を侵奪、すなわち、「占有者の意思に反して不動産の占有を排除し、その不動産に自己または第三者の占有を設定」(『新版刑法講義各論・追補版』大谷實著(成文堂)219頁)したといえると思います。
 違うのでしょうか…まだまだ勉強が足りてないようです…



(参考条文)
民法
(旧)第二百八十条
 地役権者ハ設定行為ヲ以テ定メタル目的ニ従ヒ他人ノ土地ヲ自己ノ土地ノ便益ニ供スル権利ヲ有ス但第三章第一節中ノ公ノ秩序ニ関スル規定ニ違反セサルコトヲ要ス
   ↓
(新)第二百八十条
 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

刑法 
第二百三十五条の二
 他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。

自動車の保管場所の確保等に関する法律(昭和三十七年六月一日法律第百四十五号)
第十一条
 何人も、道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならない。
2  何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
一  自動車が道路上の同一の場所に引き続き十二時間以上駐車することとなるような行為
二  自動車が夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)に道路上の同一の場所に引き続き八時間以上駐車することとなるような行為
3  前二項の規定は、政令で定める特別の用務を遂行するため必要がある場合その他政令で定める場合については、適用しない。

第十七条
 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
二  第十一条第一項の規定に違反して道路上の場所を使用した者
2  次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
二  第十一条第二項の規定に違反した者

道路交通法(昭和三十五年六月二十五日法律第百五号)
第二条
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  道路 道路法 (昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項 に規定する道路、道路運送法 (昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項 に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。

道路法
第二条一項
 この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等道路と一体となつてその効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含むものとする。



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