太陽光発電シニア

太陽光発電一筋、40年をはるかに過ぎたが何時までも興味のつきない厄介なものに関わってしまった。

シンポジウム余話孫さんのこと

2016-09-10 07:28:49 | 仕事に関すること

SBの孫さんが設立した財団のシンポジウムを聴きに行った。東京フォーラムという超一流の場所で内外の超有名識者を集めたシンポで会場は1000名の聴衆で溢れていた。スピーカー個別のと言うよりシンポのテーマについて感想。財団は福島の原発事故の経験から孫さんが自然エネルギー社会の構築を目指して政策提案やビジネスモデルの提言、自然エネルギーの認知向上の広報活動をするために設立された。

財団が普段行っている諸問題に対するアドボカシー(政策提言)のタイムリーなこと、発信力、説得力には感心していたので期待を持って参加した。孫さんについては彼がまだ若く、色んな事業を始めた頃、勤めていた会社のトップ(今は誰もが認めるカリスマ経営者)と何か接点があったらしくカリスマ経営者から直接話を聞いたことがある。「彼は頭が良く、時代の流れを読む力も素晴らしい。ただ、あまりに事業欲が強過ぎて危うさも感じた。一緒に仕事をするというより応援はしましょうと言うことになった(私の記憶ではこう言った内容)。」とのこと。かって孫さんの部下であったSBIホールディングの北尾さんがカリスマ経営者の私塾に講師として招かれたこともあり、SBIグループとはそれなりに良い関係であったのだろう。

その後の孫さんの活躍についてカリスマの感想を聞いたことは無いが、事業欲が強過ぎて社内で潰れて(クビ)行った何人もの人達を思うと、両雄相並び立たずで良かったのかなあとも勝手想像している。私の中で膨らんでいた孫さんのイメージは強烈なリーダーシップで皆をグイグイ引っ張って行くというものだったが、ウェルカムスピーチで登場した孫さんはイメージと可也違っていた。

自然エネルギーに対する考えや財団の活動に対して、熱くまくしたてると思いきや、彼のスピーチは一語一語慎重に選び、時には微妙な間(マ)をとって抑制した語り口だった。誰かの喋り方に似ている。慣れ親しんだカリスマ経営者の語り口だ。自分の知っている事、思いの丈を立て板に水、速射砲の如く浴びせかける私とは大違いだ(だから私はカリスマにもゴマスリにも成れなかった)。孫さんは多岐にわたる事業活動の中で多くの異分野の人と出会い、どう伝えれば相手も理解し、シンパシーを感じてくれるのだろうと腐心し、経験から辿りついたのは、情熱が熱ければ熱いほど冷静に伝えなければならないと言う事だったのだろう(カリスマ経営者は多分持って生まれた特質)。

各セッションで気を惹いた発言では「北アフリカの日射の良い地域に光発電や太陽熱発電所を建設し、地中海に海底ケーブルを敷設しヨーロッパに電力を送るというデザーテックプロジェクトは南ヨーロッパの日射の悪い地域に発電所を設置しても海底ケーブル敷設するより安い事が分かりプロジェクトは頓挫した。」私もかってモロッコに光発電所を設置してジブラルタル海峡の海底ケーブルを通してヨーロッパのFITに電気を売るという(モロッコはFITと土地代で稼ぐ)構想に出くわしたことがあるが海底ケーブル増設費用やFITタリフの下落で頓挫した。

中国の電網公司の前会長は「中国は内陸部に送電網を敷設し、発電所建設を誘地する。そのため可也送電網は西に伸びている。」これは面白い、私鉄が沿線を郊外に伸ばし、周辺の土地の価値を挙げて開発するというかつてのディベロッパーに似ている。今や日本は開発され尽くした地域への送電網の増強や新設に苦労している。

IEAの元事務局長(日本人)は再エネ推進者という雰囲気で講演したが、記憶に間違いが無ければ彼が事務局長だった時代IEAは再エネに懐疑的で決して積極的では無かったように思うが、時代の変化に即応するのは良い事。

今回メインテーマは日、韓、中、露を送電網で繋ぐアジア・スーパーグリッド構想だった。既に各国の著名な機関がその推進に賛同し、MOUが結ばれたという。云わばエネルギーの集団安全保障だと。しかし、各国のスピーカの発言には利権が見え隠れする。パイプラインのバルブを閉めるようなことは起こらないのか、やたら高い託送料を主張しないのか、やたら高い土地代にならないのかという不安もある。孫さんも政治的困難さは十分認識しているようだが・・・。さらに九州電力の再エネ電力を関西に送ることも、北海道の再エネ電力を東京に送ることもできない日本の送電網をそのままにして国際連系線を優先しても果たして日本のメリットは?という疑問も残る。

もっと現実味があるのは巨大筏を洋上に浮かべて、PVや風力を設置する国際宇宙ステーションのようなものを作ることだ。公海上でも良いし、領海を貸し出す国もあるかも知れない。洋上発電所から海底ケーブルで近隣国と接続してもよし、筏の一部を切り離して曳航し、必要な国の陸上送電網に接続、あるいは参加国で余剰在庫となったパネルは筏の増設に回す。いよいよはオンサイトで水素を作り、タンカーで運ぶ。国際宇宙ステーションが出来て、国際洋上ステーションできない訳が無い。7つの海に巨大筏、孫さんならできそうな気がするが。

シンポ全体は立派なキャリアを持った有識者でそれなりに啓発と言う意味はあったが何か物足りない。事業者の視点、技術的視点がボヤケテおり評論家的まとめになったことがやや残念。多くの人が仕事として聞きに来ていたが、果たして会社に戻りどのような報告をしたのだろうと自由人には少し心配でもあった。



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