太陽光発電シニア

太陽光発電一筋、40年をはるかに過ぎたが何時までも興味のつきない厄介なものに関わってしまった。

老いと息子

2017-09-16 09:22:20 | 日記

ブログのタイトルに「虎」という文字を入れたためか、昨日のブログは読者が急増した。可能性があるのは阪神タイガースか。残念ながらアメリカを虎に喩えたので内容は野球とは異なる。結構真面目に北朝鮮問題を考えたのだが。さておき、話題はやはりTVになってしまう。朝TV欄を見るとまず録画して見ようと思う番組があるかどうか探す。地上波ではやたら火薬ドンパチか荒唐無稽なサスペンス仕立ての怪獣ものなど、如何にも権利を安く買ったものが目立つ。録画して夜視て消去というだけなので選別というほどのものでは無いが、偶に当たりがある。特にNHKBSプレミアムでは良かったと思う作品が結構ある。先日はアメリカ映画で「ネブラスカふたつの心をつなぐ旅」という比較的新しいが白黒で撮影されたものが印象に残った。

年老いてアルツハイマーか物忘れが激しくなった無口で頑固な父親と息子の物語りである。父親に100万ドルの宝くじが当たったという手紙が届く。息子はインチキだと直ぐに分かったが父親は信じて疑わない。どうしても100万ドルを受け取りにネブラスカ州のリンカーンに行くと言って歩いて(行ける距離ではないが)出掛ける。見かねた息子は諦めさせるために車で送って行く約束をする。ストーリーはネブラスカまでの道中の様々な出来事を描いている。登場人物はほぼ年寄りばかりである。アメリカ映画特有のグラマーなちょっと能天気な娘などは一切登場しない。

途中父親の生まれた町にも立ち寄り、古い知り合いが沢山登場する。全員爺婆で昔話をするが、父親は何の興味も示さない。生家に立ち寄っても懐かしい感情は微塵も出さない。頭は宝くじのことで一杯である。息子は、無口で頑固でアル中のだらしない父親だと思っていたが、ふとした事からその父親が朝鮮戦争では優秀なパイロットだったこと、若い頃には村の娘と恋愛もし華かな過去があった事を知る。この辺りから息子の父親に対する考え方が変わってくる。父親は宝くじが当たったと古い仲間に漏らしてしまい、金の無心をするものが現れたり収拾がつかなくなる。

息子は逃げ出すように町を出る。道中で諦めさせて帰るつもりだったがこれはもうリンカーンまで行って本当のこと(当たっていないこと)を見せるしかないと思うようになる。車の中で父親に、100万ドルで何をしたいのかと聞く。父親は(ピックアップ)トラックを買いたいと言う。息子は、100万ドルもあればトラックなど簡単に買えるし既に無免許ではないか、それで残りはどうするのと聞く。父親は暫く考えた後、お前達に残したいと言う。父親のセリフは極端に少ないが胸を打つ。

結局リンカーンに行くと案の定息子が思っていた通り100万ドルは広告のための引っ掛けで当たってはいない。特に父親は落胆する素ぶりもなく帰路につく。途中息子は寄り道をして父親に相談もせず、乗ってきたスバルのバンを中古屋でトラックと交換する。生まれ故郷を通る時父親に、安全なまっ直ぐな道だから少し運転を代わろうと父親に代わる。最初は不安そうな顔でハンドルを握るが、道沿いに古い知り合いが声を掛けて来る。父親は少し笑顔になって満足そうにハンドルを握る。街を抜けて荒野の一本道に差し掛かった所で息子が運転を代わる。一本道の遠景の中でトラックの姿が小さくなりエンディング。

アメリカ映画でこんなに地味で淡々としたストーリーのものもあるんだと。広大な西部の寂れた田舎街を舞台にして、老いとか父子の関係を見事に描いた秀作だった。