Jun日記(さと さとみの世界)

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三文小説(1)

2017-07-18 09:17:56 | 日記

 野原みどりさんは平凡なOLです。入社3年目で、建設関係の仕事をしています。今は個人の注文住宅を請け負う部署に配属されています。注文を受けて、顧客と相談の上でどのような家を建てるか決定して、契約するまでが野原さんの仕事です。新入社員の頃と比べ、会社にも慣れ、仕事にも慣れ、自分では、まあまあの腕前の社員だと自負し始めています。今朝も出社後、デスクでお客様に新築する家の書類提案の準備をしています。『入社して3年、この会社やこの仕事にも慣れたなぁ。』野原さんは手を動かしながらそんなことを考えていました。

 ふと目を上げると、自分のデスクの前のデスク、松山君と目が合いました。『今日も松山君は出社だ。』そこに居るんだなと思うくらいです。野原さんは特に彼に何思う事無く視線を元に戻すと、そのまま自分の書類の整理に戻りました。野原さんにとって松山君は、同じ部署でありながら単に顔を知っている、名前を知っているという程度の、同期の社員仲間でしかありませんでした。会社にはそれほどに沢山の人がいて、部署も多くあり、彼女が顔や名前を知らない同期の社員が大勢いました。いいえ、寧ろ彼女が顔や名前を覚えている人は珍しいくらいでした。その点から言うと、松山君は野原さんにとって何かしらの印象を持つ社員と言えるかもしれません。いえ、言えるのでした。その事について野原さんが自分で気付いていないだけなのです。


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