Jun日記(さと さとみの世界)

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ダリアの花、154

2017-04-29 14:33:00 | 日記

 「それは気になる事だろう。」

光君の自尊心の強い気性を知っている祖父は、彼に慰めの言葉を掛けるのでした。

そして、幼い蛍さんに一瞥をくれると、内心やはりこの2人は合わないんだなと思うのでした。

 その時です、あなたもう帰って来てくださいと女性の声がして、光君と祖父の傍に女の人が1人現れました。

「もうそのくらいにして元の世界に戻って来てください。」

食事の都合もありますからと光君に言うと、彼の傍にいる祖父を見て彼女は軽く会釈をするのでした。

 祖父はその女性を蛍さんだと思い、しげしげと顔を眺め幼い面影をその顔に探してみるのでした。

「蛍さんでしょう。」

幼い頃とは全然似ていないと思いながら、その女性に祖父は声をかけてみました。

 「はい、お祖父様。」

へーと祖父は思います。『様なんだ。光の事はあなただし、如何やら呼び名は決まらなかったとみえる。』

彼はフフフと笑い、あのお互いの呼び名で揉めていた2人の幼い場面を思い出しました。まるで昨日のようです。

 祖父が蛍さんに元気そうですねと言うと、はい、お陰様で、ありがとうございますと、

蛍さんは至って礼儀正しくはきはきと答えてくれます。顔もにこやかで自分に対して優しい眼差しを向けてくれます。

祖父が受けた印象では、蛍さんは良いお嫁さんのようです。

笑顔や話し方が澄さんと似ているようでいて、また別の彼女独特の雰囲気が蛍さんにはありました。

 『育った時代背景の違いなのだろうな。』そんな事を彼は思いました。この子達は大きな戦争というものを知らずに来たのだろう、平々凡々としている。

 それはそれでよかったと祖父は思うのでした。そこで光君に聞いてみました。

「なぁ光、君達の時代には大きな世界戦争のような物は無くて来たんだろうね。」

それに対して光君は真顔になると、

「あったよじっちゃん、それはもう大きな奴がね、ドッカンと、ピカドンどころじゃなかったさ。それでじっちゃんもやられたんだよ。」

エー!と、祖父は驚き、顔をしかめると同時に酷く暗い気分に襲われるのでした。

 「光さん!」

叱るように蛍さんが夫を窘めると、光さんはニヤリと笑い、ぺろりと舌を出しました。

「嘘だよじっちゃん、戦争なんてなかったさ。平和な物だったよ、僕達の時代はね。世界というか。」

なんだ、と、祖父はほっとして胸を撫で下ろしました。

 


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