日劇のパンフレットのつづき
音楽評論家 大沼正さんが語るジュリー
「ジュリー!」のかけ声
沢田研二と日本劇場、これはもう浅からぬ因縁である。
いまから、十二、三年前、ザ・タイガースのころ、
GS(グループ・サウンズ)全盛時代、日劇は彼らのメーン・ステージであった。
テンプターズ・スパイダース、ワイルド・ワンズ、
いろんなGSが日劇のステージのセリから上がり、スライドで登場した。
名物、「ウエスタン・カーニバル」はおそらく当時の日劇年間のショーの中で、
最高の観客動員をしたのではないだろうか。
それこそ徹夜で並ぶ女の子もいて、早朝から日劇は幾重にも取り囲まれたものだった。
(自分の体験は朝一番の列車で行って並んでもチケットが買えないこともしばしば)
幕が上がれば、客席は華やかな応援合戦、ビートルズ来日から十年、
昨年暮のベイ・シティ・ローラーズのフアンの熱狂ぶりと、まったく同じ現象だった。
ロー・ティーンの女の子たちは
「ジュリー!」「ショーケン!」と身をよじって絶叫し、
果ては失神する子まで出る。
(失神って言葉が似合うグループは日劇には出演していなかったっけ)
ぼくは「ウエスタン・カーニバル」の客席にいて
いつも左右や後方の女の子たちの、ものの化に憑かれたような表情、
とくに目の色を見て、驚嘆したことを、今でも思い出す。
あれからGSブームは、いつしか去ったが、
それにしてもあのエネルギーは、すさまじかった。
ザ・タイガースに対するフアンのボルテージは、
いまのゴロー、ヒデキ、ヒロミなどより、はるかに高かったのではないだろうか。
この単純明快なフアン心理、
それを受けとめるGSのスターたちの心情はどうだったろうか。