子犬子猫を親から引き離す適正な生後週齢について

子犬の社会化期に関する国内外の専門機関や、著名な専門家の見解をまとめてみました。

【 結 論 】

●生後10〜12週齢未満、少なくても生後8〜9週齢未満の子犬子猫は、
   親や兄弟から引き離してはならない。


【 解 説 】

・子犬や子猫を親や兄弟から引き離す時期の目安は、親から離れて積極的に経験を積む段階にいたる「社会化期」と「離乳済み」であることが条件とされています。
それゆえに「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」においても、犬猫共に「離乳前に譲渡しないように努めるとともに、その社会化が十分に図られた後に譲渡するよう努めること」とされています。

・「動物愛護社会化推進協会」と「米国動物愛護協会」に限っては、「12週齢以下の子犬は親や兄弟から引き離すべきではない」としています。

・この説は、1965年のJ.ScottとJ.Fullerが行った子犬の社会化に関する研究結果を、忠実に取り入れたものと思われます。スコットらの説の内容は、「社会化期は3〜12週まで」で「離乳は7〜10週」をふまえて、「子犬を親から引き離すのに最適なのは8〜12週齢」とされています。子犬の最善を踏まえれば、充分社会化し、離乳も確実に終わっている10〜12週齢ということになります。

・その後、子犬を親や兄弟から引き離す適正な時期は、8〜12週齢で定義づけられるようになりました。

・一方で、8週齢頃の感受期は身心の苦痛や恐怖に敏感であるため、譲渡を避けるべきとする説も根強く、8週齢ではなく9週齢以降を最適な譲渡時期とする説が出てきました。
(FoxとSteiznerの実験によって苦痛や困惑に対して、異常に敏感になる時期が約8週齢頃にあることが知られている)

・近年、社会化が不十分であることを起因とした殺処分による死因が、子犬の時にワクチンを受けずに罹った感染症による死因よりも、圧倒的に上回っている(1000倍以上とも言われている)ことが問題となり、社会化の重要性が再認識されるに至りました。

・社会化を積極的に行うためには、感染症を予防しなくてはなりませんが、以前はあまり早くからワクチン接種ができませんでした。

・近年になりワクチンを早くから接種できるようになったことで、そのジレンマが解消されるに至りました。

・その結果、欧米では社会化訓練を受講する場合、(慎重になる8週齢前の)7〜8週齢のできるだけ早い段階から始めることが、基準として挙げられるようになりました。

社会化訓練を受講することを前提とせず、新しい飼い主に引き取られて生活する場合は、(慎重になる8週齢を含めて)プロのブリーダーによって充分に社会化される10〜12週齢まで、少なくとも生後8〜9週齢までは過ごすべきとされるようになりました。

・なお、2011年に行われた米国獣医師会理事会において、社会化訓練とワクチン接種を同時に実施する方針は、社会化期は重要であり、そのような方針は必要ないとされて却下されました。

・よって、日本では社会化訓練を前提とすることは飼育環境として馴染まず、加えて、獣医師会が却下するような方法を取るべきではないため、理想として生後10〜12週齢、少なくとも離乳は済んでいる時期として、生後8〜9週齢未満の犬猫は、親や兄弟から引き渡してはならないとするのが、最も妥当な基準といえるでしょう。



8週齢はこんな感じ。

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【 国 内 基 準 】

[1] 特定非営利活動法人 動物愛護社会化推進協会(HAPP)

動物愛護社会化検定専門級試験 公式テキスト『現代社会と家庭動物』(2009年)
『(子犬を親や同胞から引き離して家庭でペットとするのに最適な時期は)犬は生後12週以降が最適時期、猫の発達段階は個体差が大きく犬ほど明らかに区別不能だが、社会化期は2週目に始まり7〜9週目に終わる
※猫の完全な離乳は8週齢前後とされている。
『アメリカの心理学者、スコットとフラーの実験結果から彼らは子犬を親や同胞から引き離して家庭でペットとするのに最適な時期は8〜12週であるとしたが』
生後8週目頃は社会的刺激に対して敏感すぎるため新しい飼い主に買われていくのに最適な時期とは言いがたい
『アメリカの行動学者フォックスも12週〜14週齢に育ったもう十分に大きな子犬ならどんな環境にも人にもよく馴れる。物事に過敏にビクつくことはなく8週齢の子犬に比べて、順応性に富んでいるとしている』

『犬と猫の行動学 基礎から臨床へ』内田佳子(獣医動物行動研究会副会長)・菊水健史共著(2008年)
8週齢頃になると次第に新奇刺激を避けようとする行動が発現し、この時期に恐怖経験をすることで、生涯にわたる恐怖記憶が記銘されやすいので注意が必要

生後12週齢未満の子犬、生後8週齢未満の猫は、親や同腹子から引き離すべきではない。

[2] 獣医動物行動研究会会長 森裕司氏(東京大学大学院・農学生命科学研究科教授)

2〜9週齢までは親や兄弟から社会のルールやコミュニケーションを学ぶ大切な時期(社会化期)なので、親元で暮らさせる
くらしとバイオプラザ21講演「動物に学ぶ2 ペットたちの行動の意味するところは?」2006年9月2日・上野国立科学博物館講義室 

生後10週齢未満の子犬は、親や同腹子から引き離すべきではない。

[3] 公益社団法人 日本愛玩動物協会

愛玩動物飼養管理士 2級テキスト 『動物のしつけ 犬と猫の社会化』(2011年)
犬では『感受性の時期を考慮し、6〜8週齢までは引き離すべきではない』とされ、『人間の側から見れば、離乳期(7〜9週)が子犬を飼い始める最適な時期』とされています。
猫は『母猫や兄弟姉妹から引き離して新しい家庭で飼うのは7週齢以上になって離乳してからが好ましい』とされています。

『人間の側から見れば』というのは人の都合であって、本来は離乳後が望ましいことから9週齢以下は引き離してはならない。また、引き離すべきでない6〜8週と離乳期7〜9週の平均とすれば、8週齢未満となります。
猫の場合は「7週齢以上離乳後」が最適な時期といえます。

生後8〜9週齢以下の子犬、生後7週齢であっても離乳していない子猫は、親や兄弟から引き離すべきではない。

[4] 公益財団法人日本盲導犬協会

●盲導犬パピー育成プログラム
『盲導犬は通常、生後60日から1歳になるまでの10ヶ月間、パピーウォーカーと呼ばれる一般家庭で育てられます』

生後8週齢未満の子犬は、親や同腹子から引き離すべきではない。

[5] 社団法人日本警察犬協会

●犬の知識あれこれ 家庭犬のしつけ方10 
「出産後も直ちに母犬アズキの目の前で新生子をまず家のものが手の中に入れて触り、他人にも同じことをしてもらうのです。この時、母犬は静かに落ちついて静止していなくてはなりません。そのことを生後六十日くらいまで続け育った子犬は、その将来、愛犬家の家庭で落ち着きのある従順で温和な子犬として、しつけも施しやすく人との密なる絆を築き、飼い主と幸せに共生することができるのです」
1999年(社)日本動物愛護協会の発行誌「動物たち」(PD公認一等訓練士 藤井聡)

生後8週齢未満の子犬は、親や同腹子から引き離すべきではない。


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【 海外の基準 】

[1] 英国獣医協会 動物福祉財団(BVA−AWF)

『Puppy socialization and habituation−what,why and how?』によると、
『5から8週齢で離乳が始まり、顔の表情が表われ、兄弟とよく遊ぶようになる。この時期に人や他の犬と対面させ、いろいろな音を聞かせるなど多くの経験をさせる。最も大切なのは、この時期の終わりに新しい家に行くのに備え、時折兄弟から離して過ごさせることです。そして、8から12週齢の時、新しい飼い主のもとで生活を始めるべきです』

生後8週齢未満の子犬は、親元から引き離してはならない。

[2] 英国動物医療病院(PDSA)

『Puppy and dogs−behavior』によると
『3から8週齢の間に子犬は、新しいことを全て知りたがります。しかし8週齢になると新しい発見ではなく、新しい物に対して神経質になり、遠ざかるように脳が変化してしまいます。人や動物や違う場所を経験するは8週齢前にした方がいいでしょう。社会化は子犬達が生まれた場所で始まるのですから、そこで子犬を受け取るべきなのです。この頃の子犬は新しい人や状況に慎重になるので、子犬を扱い場合は恐れさせず、リラックスさせることが大変重要です』
PDSAは、93年間もの歴史を持ち、イギリス全土に43の病院を持ち、1,500人のスタッフを雇用するイギリス最大の動物病院です。その費用は公的支援や寄付で成り立っているチャリティ団体です。

9週齢未満はブリーダーの場所から離してはいけない。

[3] 動物行動情報研究所(ABRI)

●ABRI代表R.K.Andersonの見解『Puppy Vaccination and Early Socialization Should Go together』によると
『7から8週齢まではブリーダーの元で過ごし、後の8週齢以降から12週齢までに新しい家族の元で過ごすのが理想である』とされている。
この見解書はアメリカだけでなく、ヨーロッパでも基準として採用されています。Anderson代表は、その名を冠した獣医行動学論文の最高賞や愛護動物寄付基金まである、世界的に著名な動物行動学の権威です。

生後8週齢未満の子犬は、親元から引き離してはならない。

[4] タツフ大学獣医学部カミングス校動物行動クリニック所長 Nicholas Dodman教授

『Puppy’s First Steps』(2007年) ISBN-13/978-0618663040
子犬は8〜10週齢まで、母親と兄弟といっしょにいるべきだ。家に招き入れるのは7〜12週齢とよく考えられがちだが、7週齢では少し早すぎる。11〜12週齢まで待つ必要はないが、10週齢あたりが新しい環境に置かれるにはよいだろう』
Nicholas Dadman氏は、世界的に著名な動物行動学者です。ACVB認定獣医行動学者。特に臨床行動学のスペシャリストとして知られています。

生後10週齢未満の子犬は、親や兄弟から引き離すべきではない。

[5] 動物行動心理学獣医学会(AVSAB)

『子犬の社会化期に関する指針』(2008年)によると、
『一般に、子犬の社会化の訓練クラスは、生後7から8週齢のできるだけ早い時期に始めることができる』ので、『はじめのクラスを受ける少なくとも7日前に、最低限のワクチン接種を受けるべきである』としている。

社会化訓練を受講する場合は、少なくとも7日前にワクチンを受け、生後7〜8週齢のできるだけ早い時期に始める

[6] ペット行動カウンセラー協会(APBC)

『Lack of Socialisation is Still the Main Csuse of Aggressive Dogs』(2006年)
『新しい飼い主は子犬を生後7週齢で受け取り、できるだけ早く社会化訓練クラスを受ける必要があります。近年のワクチン接種は早い週齢で打つことができるようになりました』

社会化訓練を受講する場合は、生後7週齢で受け取り、ワクチンを打った上で始める。

[7] 米国ペットドッグトレーナー協会(APDT)

『Chronicle of the Dog』会報誌(2006年)
『子犬は社会化訓練を受講する7〜10日前にワクチンを接種すれば、7週齢から参加しても病気に罹らないという合意ができつつある』

社会化訓練講を受講する場合は、最低限のワクチンを受けた上で、生後7週齢から始める。

[8] 米国動物愛護協会(HSUS)

『子犬行動の基礎』(2010年)によると、
『子犬は通常6から7週齢で乳離れする。理想的には子犬は同腹子達と少なくとも12週齢まではいっしょにいるべきである』

生後12週齢以下、少なくとも8週齢未満の子犬は、親や兄弟から引き離すべきではない。

[9] 全米猫科獣医協会(AAFP)

『猫の社会化』
『KarshとTurnerの研究(1988年)によって、子猫の感受性が高く敏感な社会化期は2から7週齢であることが明らかにされた。ブリーダーの家で過ごすこの時期は、猫や他の動物と交流する大切な能力に最も影響する』

生後8週齢未満の子猫は、親や兄弟から引き離すべきではない。

[9] 米国獣医師会(AVMA)

●米国獣医師会ジャーナル・理事会発表(2011年1月15日)
『方針により獣医師の役割と責任を明確化』によると、
米国獣医師会の理事会は、子犬子猫の社会化に関する方針として、社会化とワクチン接種を同時に実施することを支援することを提案した新方針を、承認しないことに決定した。Dr.Scamahorn理事長は、社会化は非常に重要であり、そのような方針を採用することは獣医師会にとって必要ないと判断したと語った』

[10] 環境省資料


※検討委員会では、上から3番目のSurpell氏の6〜8週齢を取り上げて、
 「7週齢が一番科学的根拠あり」「いや、無理だから45日齢に」と言っているわけです。



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【 科学的根拠となる主要な研究 】

動物行動学者及び獣医師によって長年に渡って研究された科学的根拠は、日本で著名なものだけでも、以下の報告が知られています。

●Feddersen Petersen(2004年)
「犬の心理学」(Hundepsychologie)
●Feddersen Petersen(1994年)
「様々な犬種及ぶ狼の行動発達比較」(Vergleichende Aspekte der Verhaltensentwicklung von Wölfen und Haushunden verschiedener Rassezugehörigkeit)

「自然な環境で育った子犬」と「変化のない閉ざされた環境で育った子犬」の行動調査から、周辺環境への認知が7〜12週齢頃で最もピークを迎え、その中に行動成長の急加速を見せる時期6〜8週齢があり、この時期の社会化が不十分であると、周囲への不安・恐怖・不確実さが見られる。

●Slabbert & Rasa(1992年)
「母親から早期分離した子犬への影響」(The effect of early separation from the mother on pups in bonding to humans and pup health)

生後6週齢で母親から引き離した子犬と、生後12週齢で母親から引き離した子犬を比べた結果、6週齢で母親と別れた子犬においてストレス行動や疾患率・死亡率が高い。

●Serpell James(1995)
「犬―その進化、行動、人との関係」(The domestic dog: its evolution, behaviour, and interactions with people)

7週齢以下で親から引き離された子犬は、健康上の問題が増え、問題行動が多くなる。

●Scott & Fuller(1965年)

社会化期は3〜12週までであり、離乳をふまえ、子犬を親から引き離すのに最適なのは8〜12週齢である。

●Fox(1971年)

12週〜14週齢に育ったもう十分に大きな子犬ならどんな環境にも人にもよく馴れる。物事に過敏にビクつくことはなく8週齢の子犬に比べて、順応性に富んでいるとしている

●FoxとSteiznerの実験では、苦痛や困惑に対して異常に敏感になる時期が約8週齢頃にあることが判明した。

下記は猫の報告で有名な動物行動学者及び獣医師。

●Karsh&Turner(1988年)
●Bonnie V Beaver(2003年)
●Karen L Overall(2004年)

Comment ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
ツイッターからとんできました (ai)
2011-11-30 18:51:24
はじめてコメント致します。
社会化期にたいする全記事、大変参考になりました!
勉強させて頂いております。ありがとうございます。

データが曖昧で恐縮なのですが、委員でもある
水越美奈先生の講義中インドの野良犬の生体研究でも
7〜8週齢が社会化のピークであるとおっしゃっていま
したよ。

以前のわたしのブログでもこの件さらりと触れました。
勝手にリンクまでしてしまっています。。。
すみません。

ご参考までに。
 
 
 
Unknown (みるく)
2011-11-30 18:55:20
例え8週齢まで親・兄弟と過ごしても、
その後、数か月も小さなガラスケースの中にいて、
基本的なしつけもされず、人との触れ合いもなかった子は
やはり問題が出やすいですよね。
逆に、親が育児放棄した子でも、乳母猫や月齢上の子猫と遊ばせると
ちゃんと社会化するんですよね。
生体展示販売は、社会化の面からも良くないですね。
うん、でも、問題の関連性を取沙汰して議論を複雑にするよりも
1つずつ、解決していくことも大切ですね。
 
 
 
hana*さんすごすぎ! (spring*)
2011-12-04 01:56:47
世界中の英知をもってしても " 良く解らない " って事が良く解りました。

文中下に「 7週齢が一番科学的根拠あり 」とありますが、科学の出番かな?
離乳期や引き離しの時期を1番良く知ってるのは、
むしろブリーダーさんと、母猫・母犬でしょう。

犬猫の種類・母親やブリーダーさんの性質も含めた環境・個々の性質体験等、
どうやって、科学でもって 正確な証明ができるのでしょう。

" 8週を否定できる科学的根拠も無い " 訳ですね。
ありがとうございます。 勉強になりました。
 
 
 
ご苦労さまです (ねむり猫)
2011-12-04 21:02:32
よくお調べになりましたね。
欧米が進んでいるので横文字イヤだとは言ってられないのですが…。

たとえ売物でなくても早く親から離してしまうとハンディは出ますね。母が仔犬の扱いに慣れているからと2ヶ月未満で小型犬を親戚から貰い受けてきたら「分離不安」になっちゃいました…。30年以上も前の話です。
 
 
 
参考にさせて頂きました (299House)
2011-12-05 14:27:18
「動物愛護管理のあり方について(案)(「動物取扱業の適正化」を除く)」に関する意見と一緒に『犬猫幼齢動物を親等から引き離す日齢について』ももう1度意見しようと思い、ツイッターで国内各団体の教本などをお調べになっていることを知り参考にさせて頂きたく拝見しました。

これだけの資料が揃っているととても助かります。
本当にありがとうございました。
 
 
 
先住犬猫が視野に入っていない (まりも)
2011-12-07 18:16:53
個体差があるので、一概に、何週齢とは言えないと思います。
先住猫がいれば、相性にもよりますが、充分、社会化への協力はしてくれます。
時期は、ブリーダーと、相談して決めれば良いのです。
 
 
 
科学 (ぺそぺそ)
2011-12-07 18:38:07
科学で犬猫の気持ちが解る様になったのですね。
すごいですね。
 
 
 
Unknown (いの)
2011-12-07 23:06:43
常日頃動物たちの法律改定に興味がありましたが、自分ではこんな風な文章は作れませんでした。
コピペで使わせていただきました。
hana*さん本当にありがとうございます!
 
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