*** june typhoon tokyo ***

磐田×FC東京@ヤマハ【J1リーグ】

 士気、一体感の消失。チーム崩壊への歯止めが急務。

 S指定席で観戦していた自身にとって最もワクワクした瞬間は、入口から目の前を通って座席へ着く石川直宏選手を間近で見たことだった。無論、本心ではない。ただ、そうとでも考えないと、FC東京のポジティヴな要素が見えてこないのも現実だ。 

 6月に入って、G大阪に3-0、前節では浦和に4-2と上位陣を倒し、好調をキープしている磐田。この試合でFC東京を破ればFC東京の順位を上回り、さらには磐田を長年支えてきたレジェンド、前田遼一の古巣対戦ということも重なってか、チケットは完売。当初は雨も降りコンディションが心配されたが、それも次第に止み、磐田にとっては上位を目論む試金石的な大一番として意気軒高に試合に臨んだはずだ。

 一方、FC東京は中盤期に入ってもまだチームとしての形が構築されず、一進一退を続ける状況。結果として残留争いに足を踏み込んではいないものの、それはあくまで結果上であり、勝利した試合はいずれも個の力で何とか振り切ったという不安定なもの。6月は清水戦に勝ったが、その後は横浜F・マリノスにいいところなく敗れ、天皇杯ではJ3の長野パルセイロ相手にPKで敗戦するなど、チームの低迷が顕著となってきている。さらには、先日ネイサン・バーンズの契約満了が発表され、質とコマを揃えた選手層の厚さが注目されていた当初の印象は消え去り、相変わらず豊富なタレントを使いきれないジレンマに陥っている。

 磐田にとっては上位進出への試金石、FC東京にとってはチームテコ入れへの分水嶺とも言えるべき一戦は、ホームのサポーターの後押しを得た“サックスブルー”が躍動。今季初の3連勝を果たした磐田が、上昇気流に乗る勢いを示した。

 しかしながら、磐田が圧倒的だったかというと、正直そうは見えなかった。中村俊輔や川辺の動きが目立った程度で、ゴールを決めた川又も脅威だったかといえば、それほどでもなし。アダイウトンも吉本と競り合って頭を切るファイトを見せたが、制空権も五分といった印象で、唸ってしまうほどというパフォーマンスでもなし。どちらかといえば、FC東京が自滅している印象が強く、そこにアダイウトンのシュートブロックのスライディングやカミンスキーの冷静なセーヴなどモチベーションの高い磐田の奮闘ぶりが加わり、磐田のゲームとなったのだと思う。

 実際、FC東京はビハインドで迎えた後半、約15~20分間くらいは磐田ゴール前へ何度も攻め込み、いつ得点しても可笑しくない展開を続けていた。中村俊輔の運動量も落ち始め、前線の動きも鈍っていた磐田へ追撃、さらには逆転まで考えられる展開ではあった。
 だが、相変わらずビルドアップが遅く、ゴール前でなかなかシュートを打たない。選手との意思疎通が疑心暗鬼ゆえボールを出す前に“感じる”ことも少なく、ボールの行方を見てから動き出すため、反応が一歩、二歩遅れ、それがシュートチャンスに磐田のブロックが間に合う原因にもなった。
 また、前半の大久保の負傷も痛かったが、采配や選手起用など指揮官とチームとの意思統一がなされていないことも再び露呈。ここは前田に交代かと思いきや永井を投入。縦へのロングボールで永井を走らせる戦術をとると、ドリブルでアタックをかけたい中島へボールが渡る数が極端に減り、ボールをもらいに最終ライン近くまで下りてくる悪循環に。東は運動量豊富に走るも、いまいち周囲と絡めずに無駄な走力を使ってしまっていた。高萩はパスを散らそうとはするものの、肝心な場面でミスパスをし、カウンターの餌食になる場面を増やすと、橋本は攻守どっちつかずなポジションとなることが多く、前へも後ろへも後手を踏むことに。
 そのなかで、東に代わって米本、中島に代わって河野を投入。米本はまだ怪我明け後に実戦での連係に積み重ねがないこともあるが、橋本が米本との距離や受け渡しに苦労し、守るべき自分のスペースが中途半端になったところを磐田に突かれ、アダイウトンの追加点に繋げてしまった。スルーパスへの対応が遅れた森重や林のセーヴィングにモノ申したい人もいるだろうが、修正すべき本質は何かといえば、そのスルーパスの起点を作ってしまった中盤の対応にあることを見逃してはならない。
 そして、指揮官の河野の投入意図は何か。中島が警告を1枚貰っていたこともあるが、ドリブラーという意味では中島と同じだが、積極的にゴールへ素早く仕掛ける中島と、テンポを落とし味方を使って細かくパスを繋ぎながらゴールへ進もうとする河野ではまったく戦術が異なる。案の定、中島がピッチを去ってからは攻撃へのスイッチが極端に入らず、磐田は疲労も見えていた中村俊輔らが巧妙にスローダウンしながら、ボールをキープして時間を進めるという“大人のサッカー”で対応されてしまう。そもそも河野や阿部は先日のルヴァンカップや天皇杯で精彩を欠いていたが、そのパフォーマンスでもベンチ内メンバーに入っているのことも微妙だ。ピーター・ウタカがボールをことごとく収め、相手を翻弄する切り返しなどを随所に見せていただけに、それを活かせない周囲との連係不足は非常に効率が悪い攻撃ばかりを生み出し、さすがにウタカ一人ではマークを強めた磐田ディフェンスを掻い潜れない。

 それでもまだ攻め込む機会はあったが、最近では特に顕著なのが太田の不振。セットプレーでのフリーキックは精度を欠き、中央へのクロスもGKが難なく取れるボールばかり。少なくとも守備面ではそれほど貢献を期待出来ない一方、精度の高いクロスで相手に脅威を与えるというのが太田のスタンスであるから、精度の高いクロスが供給出来ない時点で、攻撃の停滞や得点力の減少は必然になる。この日は室屋の右サイドから中央へ折り返す場面が多かったが、ピッチ上の選手が右サイドから攻撃を構築しようという意志が強く働いたのも、太田の不振という証拠といえる。もちろん、室屋の出来もそれほど良いとは言えないが、前へ仕掛けようというチャレンジと運動量は評価出来るし、これから多くの経験値を積む選手という意味では、試行錯誤しながら学んでいく時期でもある。だが、太田は海外を経験し、東京にタイトルを取らせるという決意のもとで復帰したはずだ。守備、運動量では大いなる期待が見込めないだけに、このまま低調が続くようであれば、左サイドからの攻撃も有効な手段となりえなくなる。

 そして、守備も綻びが続く。11分の失点は、ボールに触りにいったものの触れなかった林の判断ミスではある。だが、吉本や森重らDF陣がしっかりとマークを出来ずにいたところに危機感を察知した林がフリーで打たれることを避けるため慌てて飛び出したのようにも見える。このあたりもGK林とDF陣との連係がしっくりと来ていないことの証明となってしまった。
 
 周囲との連係はいまだ構築出来ずも、刺激を与え続けていたという意味で大久保嘉人は大きな存在だったが、もし怪我が長引くようであると、精神的な部分でも影響を及ぼすことは想像に難くなく、再びネガティヴな思考で路頭に迷う流れにもなりかねない。何が正しく、何が間違いなのかは容易に判断出来ないが、少なくとも覚悟を持った判断や決意は必要だ。

 2017年のFC東京はシーズン前に“TOKYO GRIT ~すべての力を~”というスローガンを発表した。最後まで諦めずにひたむきに目標を成し遂げるために戦い抜く強い決意、選手やスタッフだけでなくファン・サポーターを含むFC東京ファミリー“すべての力”を目標達成のために結集するということだったと思うが、果たしてこれはなされているのか。あまり根拠が薄く、ネガティヴな流れを避けるだけのためにポジティヴな要素を挙げるだけというのは個人的には感心しないが、当初の意気込みに立ち返って、何をすべきかを考え、共有し、実行しなければ、この苦難からは逃れられそうにない。

 リーグは次にアウェイでC大阪、ホームで鹿島と対戦。仮にここで成果を見せられないようであれば、“残留へ向けた取り組み”が現実問題となる。その前にはアウェイ広島でのルヴァンカップのプレーオフが待ち構えている。東京自身が一皮剥け、成長するためには避けて通れない苦難をどうやり過ごせるか。今季の山場となりそうな期間にあらん限りの力を結集させられるか、覚悟して臨まなければ明日はない。

◇◇◇

【明治安田生命J1リーグ戦 第16節】
2017年06月25日(日)18:03 試合開始 ヤマハスタジアム
入場者数 13,816人
天候 曇 / 気温 25.4℃ / 湿度 62%
主審 山本雄大 / 副審 岡野宇広、西尾英朗 / 4審 数原武志

 磐 田 2(1-0 / 1-0)0 FC東京

≪得点≫
(磐): 川又堅碁(11分)、アダイウトン(78分)
(東):

◇◇◇

【FC東京 メンバー】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 02 室屋 成
DF 03 森重真人
DF 04 吉本一謙
DF 06 太田宏介
MF 08 高萩洋次郎
MF 37 橋本拳人
MF 38 東 慶悟  → 米本拓司(69分)
MF 23 中島翔哉  → 河野広貴(81分)
MF 13 大久保嘉人 → 永井謙佑(23分)
FW 09 ピーター・ウタカ

≪サブスティテューション≫
GK 01 大久保択生
DF 05 丸山祐市
MF 15 永井謙佑
MF 17 河野広貴
MF 44 阿部拓馬
MF 07 米本拓司
FW 20 前田遼一

≪監督≫
篠田善之

◇◇◇



























































◇◇◇

【2017明治安田生命J1リーグ FC東京 日程】
第01節 02/25(土)14:00〇FC東京 1-0 鹿 島(A・カシマ
第02節 03/04(土)15:00〇FC東京 2-0 大 宮(H・味スタ
第03節 03/11(土)19:00✕FC東京 0-3 G大阪(A・吹田S
第04節 03/18(土)19:00〇FC東京 3-0 川 崎(H・味スタ
第05節 04/01(土)16:00△FC東京 3-3 鳥 栖(H・味スタ
第06節 04/08(土)19:00✕FC東京 1-2 札 幌(A・札幌ド
第07節 04/16(日)14:00✕FC東京 0-1 浦 和(H・味スタ
第08節 04/22(土)16:00〇FC東京 3-0 新 潟(A・デンカS
第09節 04/30(日)15:00〇FC東京 1-0 広 島(H・味スタ
第10節 05/07(日)14:00〇FC東京 2-0 仙 台(A・ユアスタ
第11節 05/14(日)15:00✕FC東京 1-2  柏 (H・味スタ
第12節 05/20(土)19:00△FC東京 1-1 神 戸(A・ノエスタ
第13節 05/28(日)16:00△FC東京 1-1 甲 府(H・味スタ
第14節 06/04(日)13:00〇FC東京 2-0 清 水(A・アイスタ
第15節 06/18(日)18:00✕FC東京 0-1 横浜FM(H・味スタ
第16節 06/25(日)18:00✕FC東京 0-2 磐 田(A・ヤマハ

第17節 07/02(日)19:00 FC東京 vs C大阪(A・金鳥スタ
第18節 07/08(土)19:00 FC東京 vs 鹿 島(H・味スタ
第19節 07/30(日)19:00 FC東京 vs 新 潟(H・味スタ
第20節 08/05(土)19:00 FC東京 vs 川 崎(A・等々力
第21節 08/09(水)19:00 FC東京 vs 大 宮(A・NACK5
第22節 08/13(日)19:00 FC東京 vs 神 戸(H・味スタ
第23節 08/19・20・18※ FC東京 vs 浦 和(A・埼 玉
第24節 08/26(土)--:-- FC東京 vs 横浜FM(A・日産ス
第25節 09/09・10※   FC東京 vs C大阪(H・味スタ
第26節 09/16・17※   FC東京 vs 仙 台(H・味スタ
第27節 09/23(土)--:-- FC東京 vs  柏 (A・ 柏 
第28節 09/30・10/01※ FC東京 vs 磐 田(H・味スタ
第29節 10/14・10/15※ FC東京 vs 甲 府(A・中銀スタ
第30節 10/21・10/22※ FC東京 vs 札 幌(H・味スタ
第31節 10/29(日)--:-- FC東京 vs 清 水(H・味スタ
第32節 11/18(土)--:-- FC東京 vs 鳥 栖(A・ベアスタ
第33節 11/26(日)--:-- FC東京 vs 広 島(A・Eスタ
第34節 12/02(土)--:-- FC東京 vs G大阪(H・味スタ




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