*** june typhoon tokyo ***

The night is still young...

脇田もなり@clubasia

2017-09-08 23:59:59 | ライヴ



 ソロとしての成長とポップ・シンガーとしての萌芽を見せた初ワンマン。

 脇田もなりにもう“元Especia”という惹句は要らないだろう。彼女自身が言及する際も“元グループ”と敢えて名を伏せた形で発することが多かったが、そういった気遣いもこの1年でピリオドでいい。ソロとして再始動してから約1年で辿り着いたソロ初のワンマンライヴ〈「I am ONLY」Release Party〉は、自身と観客ともに予想以上の手ごたえを感じたステージだったのではないだろうか。

 振り返れば、2016年3月でEspeciaを卒業した後、ソロとして復帰したのが2016年9月。レーベルメイトの星野みちるによる企画ライヴ星野みちるの黄昏流星群Vol.5のほぼシークレットゲスト扱いで登場したのが1年前。それからソロデビュー作「IN THE CITY」を皮切りにシングル3枚、アルバム『I am ONLY』1枚をリリース。インストアや企画イヴェントなどで精力的にステージを重ねながら実践力を身に付け、自身にとって待望の初ソロワンマンに漕ぎ着けた。不安と緊張が体内を巡り巡っていたと想像するには難くないが、蓋を開けてみれば300人収容の渋谷clubasiaのメインフロアから人が溢れるほどの集客。多くの観客の前で歌を披露すること自体はEspecia時代に経験しているとはいえ、ソロワンマン未体験の彼女としては窺い知る由もなく、ステージから眺めた景色は予想以上のものだったに違いない。事前の不安を払拭する大きな要因の一つにもなっていたはずだ。



 もう一つ彼女を勇気づけていた要因としては、バンドセットだということ。バンドマスターでギターのラブアンリミテッドしまだんとキーボードのKAYO-CHAAANのHealthy Dynamite Club勢を中心に、元カラスは真っ白でCICADAやShunske G & The Peas、CRCK/LCKSなどで活動するベーシストの越智俊介、Mop of HeadやAlaska Jamのドラマーの山下賢というライヴステージで場数を踏んでいる実力者のサポートに加え、「祈りの言葉」を手掛けた長谷泰宏(ユメトコスメ)をスペシャルゲストに招くという初ソロワンマンとしては充実の布陣。ソロデビュー1年の集大成を披露するには盤石の舞台が整っていた。
 熱気を帯びるフロアに白のドレス風コーデで満面の笑みを浮かべながら登場した脇田もなり。カジュアルな“白”を選んだのは、このライヴが“ソロの原点”と位置付けて真っ新な気持ちでスタートする意志の表われか。インドネシアの4人組イックバルの曲を自身の曲とした「Cloudless Night」から1stアルバム『I am ONLY』のリリースパーティは本幕を開けた。



 それにしても表情がクルクルと変わる。冒頭の「Cloudless Night」や「EST! EST!! EST!!!」などスタイリッシュながらもノスタルジックな色合いも感じる楽曲では、アンニュイだったり艶やかな表情を見せたかと思えば、「IRONY」や「泣き虫レボリューション」では以前からの屈託ないチアフルな笑顔が満開。楽曲が持つ世界観を自らの声に投影することを意識したようなヴォーカルワークは、Especia時代とは異なり、ソロとなってからの歌唱スタイルの着実な進化を物語るもの。曲間のMCでの観客を煽るコール&レスポンスもハイトーンからロー、さらにはウィスパーまでを繰り出して、楽しみながらも身に付けた力量を感じさせるようで、スタッフやアーティストとともに地道に磨きをかけていったヴォーカルを惜しげもなく披露していく。

 MCにてゲストの長谷泰宏も言っていたが、彼女の場合はCD音源よりもライヴでの声映えがするタイプでもある。以前はそれほど考えることなく資質だけで発していたものが、楽曲の世界観やその時の感情、思慮などを意識したヴォーカルへと確実に変化。それはアイドル・シンガーというよりもポップ・シンガーとしての境地と言っていい。長谷のキーボードを交えてのバラード「祈りの言葉」や「夜明けのVIEW」(冒頭のア・カペラによる導入アレンジはイマイチだったが)には、脇田もなりの表現力の引き出しが増えたことを如実に感じさせるものがあった。ラップも繰り出す「ディッピン」では彼女が持つ茶目っ気も巧妙に歌に採り入れて、多幸感と観客との一体感を融合。ステージを所狭しと左右に往来し、フロアを指差し腕を天高く突き上げながら歌う姿には、ライヴとの相性の良さも見て取れた。



 また、彼女のヴォーカルをよりライヴ映えさせていたのは、やはりバックバンドの力量も大きい。バンドマスターのしまだんによるギターカッティングが小気味いいテンポとファンクネスを生み出して曲を先導すれば、同じバンドで意志疎通も長けているゆえそれとぶつからずに適切な距離感でKAYO-CHAAANのキーボードが寄り添う。奇を衒うことなくタイトで正確なビートを刻む山下のドラミングも相まって、ヴォーカルを活かす豪華な土台となっていた。そこへ越智の黒いベースが安定性に“遊び”と“タメ”というアクセントを加え、ライヴならではのグルーヴ感を演出。CICADAでも見せる越智の過不足なく唸らせる“跳ね”と加速度のギアとなるボトムが、文字通り脇田もなりのヴォーカルをバックから後押ししていた。特に「EST! EST!! EST!!!」はその白眉といえよう。軽快なハウス・ダンサー「I'm with you」でもヴォーカルを上昇気流に乗せるような風という名のグルーヴを送り込み、フレッシュな彩りと爽快なリズムを構築していた。



 終盤は実際にスカートの裾を摘まんで翻す「赤いスカート」で明るく無邪気な“もなり”を演じたかと思えば、心の機微を何ともいえない物憂げな所作とともに感情を注ぎ込んだ「夜明けのVIEW」で一つ大人の階段を上った“もなり”を描出。本編ラストでは観客とのコール&レスポンスで盛り上がる「Boy Friend」、アンコールでは記念すべきソロ・デビュー曲「IN THE CITY」というキラー・チューンでヴォルテージを最高潮にさせて幕を閉じた。

 Especia時代からのファンやソロからのファンが入り混じる中のソロ初ワンマン。歌うかどうかも分からずにある意味で意地と未来への希望を探しに上京してきた彼女の帰するところがステージというのは、やはり歌に導かれたということなのだろう。そして、緊張と不安が過ぎるだろうなかで、歌うのみならず全力で愉しむ姿を惜しげもなく披露し観客と共有しようという姿には、これまで積み重ねてきた努力が少しずつ自身への架け橋になっているようにも感じられた。多くの観客の好意的な反応と歓声の数々に自信を深めたこのステージは、シンガーとして成長する起爆剤の端緒になるはずだ。



 しかしながら、気になる箇所がないといったら嘘になる。今回はユメトコスメの長谷泰宏を迎えて4曲を披露したが、そのうち3曲はバンドメンバーを一旦退かせて長谷とのアコースティック・ステージ枠を組み込んできた。自身がバラードを歌いたいと言うとスタッフや周囲が粗が出るのを心配したという逸話もMCで語っていたが、その話を踏まえての「祈りの言葉」は歌い慣れた自分の歌ということもあって隅々まで行き渡る浸透力と星空を見渡すような壮観をも持ち得たパフォーマンスで良かった。だが、続くBONNIE PINK「Tonight, the Night」では課題も。

 実際にBONNIE PINKのライヴで同曲を体感した経験から言うと、まだヴォーカル圧の弱さを感じた。BONNIE PINKはヴォーカルの声量や圧で勝負するタイプではないが、それでもそのインパクトや伝播力は確固たるものを持っている。BONNIE PINKと脇田もなりとはタイプは当然異なるとはいえ、その差は大きいと言わざるをえない。彼女はソロ以降、かつてのパンチあるハイトーンを武器にした歌唱スタイルを替え、抑揚を効かせた表現力に重心を移した歌唱に磨きをかけてきたことは、彼女のヴォーカルワークを向上させた成果の一つといえる。それにより“歌える”楽曲も格段に増えているのは確かだ。
 


 とはいえ、それらが全てのロケーションで通用するかというと、まだそこまでには至っていないのが現状だ。自らヴォーカルの表情を変えるスイッチを手に入れたことで、無意識のうちに小手先の表現に依拠するきらいもなくはない。それによる最大のデメリットはグルーヴが弱くなったことだ。以前のパンチのあるハイトーン・スタイルに戻せというつもりは決してないが、本来彼女が持ち得ていたヴォーカルには不安定ながらも瞬間最大風速のような圧倒的なインパクトを与える力を備えつつもしっかりとしたグルーヴを放っていたゆえ、その資質を活かさない手はないと思うからだ。厳しい言い方をすれば、この日のパフォーマンスはその吸収力の速さと成長力の向上に驚いたことは事実だが、それはあくまでキャパ300人のクラスでは具現化出来るということに過ぎない。喩えるなら、4回戦では多彩なパンチを繰り出し連戦連勝だったボクサーが、8回、12回戦でも同様のパフォーマンスが出来るとは限らない。ランクアップしたステージではレベルアップした相手に手も足も出ないで終わるというのは珍しいことではないのだ。

 ファンにとっては難癖をつけていると思うだろうが、彼女のヴォーカリストとしての資質には稀有な可能性が潜んでいると思うがゆえ、小さな世界で満足してもらいたくないからこその見解と捉えてもらえればと思う。そういう意味では、(アイドル)楽曲派出身のシンガーという殻を抜け出して、ようやくポップ・シンガーとしてのスタートラインに立ったばかり。歴戦のツワモノや次々と登場するフレッシュな面々が蔓延るシーンで生き残っていくことを考えれば、ヴォーカル訴求力の向上はシンガーとしての生命線だといえるのだから。



 もう一つ、上述のことに比べれば取るに足らない話だが、このライヴでは衣装チェンジが2回あった。ジョージ・マイケル「フェイス」作風の「泣き虫レボリューション」のアウトロで長谷泰宏を呼んだ後と、アコースティック・パートを終え、バンドメンバーを呼び込み「I'm with you」を演奏し始めたイントロでステージアウト&インしての2回。どちらもバンド演奏で衣装替えの時間を“作った”という感じに。楽曲数がまだアルバム1枚ほどしかないというのもあるが、このライヴハウスのクラスなら衣装チェンジは1回もあれば十分だろう。それでも衣装チェンジを組み込みたいならば、あからさまな“繋ぎ”セクションではない工夫を施しても良かったと思う。

 “もっと もっと 大きなステージで、大勢の観客の前で歌いたい”というのは彼女の心からの願いであり、目標であることには相違ない。だが、そこへ辿り着くだけでは辿り着いた時点で推進力が削がれてしまう。ソロ初ワンマンとしては非常に盛況で終えて“上々”以上の結果を出したことは見事。それゆえさらなる向上心でポップ・シンガー道を邁進して欲しい。脇田もなりのポップ・シンガーとしての航海は、ここからが始まりだ。


◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION(BGM“IN THE CITY”)
01 Cloudless Night(Original by ikkubaru)
02 IRONY
03 EST! EST!! EST!!!
04 泣き虫レボリューション
05 祈りの言葉(Special guest with Yasuhiro Hase from YUMETOCOSME)
06 Tonight, the Night(acoustic ver. with Yasuhiro Hase)(Original by BONNIE PINK)
07 サーカスナイト(acoustic ver. with Yasuhiro Hase)(Original by 七尾旅人)
08 JOY(acoustic ver. with Yasuhiro Hase)(Original by YUKI)
09 I'm with you
10 ディッピン
11 あのね、、、
12 赤いスカート
13 夜明けのVIEW
14 Boy Friend(Extended Mix)
≪ENCORE≫
15 IN THE CITY

<MEMBER>
脇田もなり(vo)

ラブアンリミテッドしまだん(g)
越智俊介 a.k.a オチザファンク(b)
KAYO-CHAAAN(key,cho)
山下賢(ds)
Special guest:長谷泰宏(ユメトコスメ)(key)

サリー久保田(VJ)

OPENING & CLOSING DJ:yuka(Tokoyo Midnight Homeless)


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【脇田もなりに関する記事】

・2016/09/23 星野みちるの黄昏流星群Vol.5@代官山UNIT
・2017/06/20 脇田もなり@HMV record shop 新宿ALTA【インストア】
・2017/07/28 脇田もなり@タワーレコード錦糸町【インストア】

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