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ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

シェールガス

2011-05-07 11:14:09 | 日記
 震災の翌3月12日、ロシアのプーチン首相がサハリンの天然ガス開発施設「サハリン2」に対し日本への供給量を増やすように命じ、その結果4月16日には千葉県富津の東電富津火力発電所にLNG運搬船が到着したニュースは記憶に新しい。尖閣諸島の漁船体当たり問題で中国ともめている隙をついて北方領土にやって来たメドベージェフ大統領を見て腹立たしい気持ちを持ったりしたものだが、そんな気持ちも急にどこかへ行ってしまった覚えがある。

 日本で大地震発生→天然ガス需要だ、と即座に考えられたのはなぜなのか、どうも気になっていた。普通、「大地震発生→救出機材」とか「大地震発生→医療支援、食糧支援」となるだろうと思うのだが、プーチン首相はいきなり液化天然ガスの支援に発想が飛んだ。天然ガスが大きな気がかりとして常に頭の中を占めていたのではないかと思う。連休でネットを眺めていたら何となくその答えが見えて来た。

 なぜプーチン首相の頭の中は天然ガスのことでいっぱいだったのか?ソ連を崩壊に追い込んだ経済の落ち込みからロシアは資源大国として急激に裕福な国に復活していたにもかかわらず、その代表格の天然ガスだが、ここへ来ていきなり大口の買手を次々と失っていたのである。ロシアの天然ガスの大口顧客といえば、ヨーロッパ各国、特にEUを支える工業国ドイツが挙げられる。これらヨーロッパ各国がロシアの天然ガスを大量消費することをやめてしまった。何とかしないとこれまでの安定した政権基盤がもたない。新しい売り先を考えなければ、そんな状況が起きていたようだ。

 しかし、なぜヨーロッパはロシアの天然ガス購入をやめたのだろう?それは、中東のカタールがヨーロッパ各国に向けて天然ガスの大安売りを始めたからだった。カタールと言えばサッカーファンなら忘れることの出来ない、あのドーハを首都に持つ石油の国であった。しかし、今や天然ガスで世界制覇を狙うLNG大国に変貌していたのである。日本で大地震が発生したというニュースを聞いた時、カタール首脳もプーチンさんと同じ思いを抱いたかもしれないが、その当時カタールはヨーロッパを新しい顧客にするために全力を注いでいた。そのため、プーチンさんに少し後れを取ったのだ。プーチン首相に遅れること1ヶ月あまり、4月16日のロイターニュースによれば、カタールは日本に対し追加で400万トンの液化天然ガスを輸出する、と表明している。世界の天然ガス販売競争は熾烈を極めている状況らしい。

 なぜそんな状況になっているのだろう?なぜカタールは急にヨーロッパに天然ガスの安売りを開始したのだろう?原因はアメリカにあった。アメリカの天然ガス生産量が大きく増え、世界のどこからも天然ガスを買い付けることをやめてしまったことが原因だった。カタールも今やLNGで生きていこうと決めた国だけに大口需要を失って慌てたことだろう。いや、今も慌てているはずだ。なぜなら、アメリカを発端にして、世界の多くの国々が今「シェールガス革命」と呼ばれる新しい天然ガス開発に沸き立っているからなのだ。

 稀土類と書いてレアメタルと呼ぶ、というぐらい地下資源に関する漢字表記とビジネス用語が渾然一体となって誰もが使用する日が来るとは思ってもいなかった。今度は頁岩(けつがん)と書いて「シェール」と呼ぶ。頁岩とは良く言ったもので、本のページのように、薄くはがれる岩のことを頁岩と呼ぶらしい。これまで天然ガスといえば、地下のキャップロック(帽岩)ドームに閉じ込められていたメタンガスや石油と一緒に噴出してくる大量のガスのことであった。さらに深い岩の中で岩のページに挟まれるように溜まっているガスの存在は以前から知られていたようだが、これを吸い上げる技術が無かった。それが近年、技術革新で吸い上げられるようになってしまった。アメリカの成果だ。シェールガスが利用できるとわかるとアメリカは一気にシェールガスラッシュとなった。で、今や世界一の天然ガス産出国である。そんなアメリカであるからカタールからだけでなく他のどの国からも天然ガスを輸入する必要が全く無くなってしまった。いきなり急に、だ。とんでもないことである。

 世界各国のエネルギー企業がアメリカのこの「シェールガス」ラッシュをだまって見ているはずが無い。自分の国にも「シェールガス」が埋蔵されているのではないか、と考えない国はない。カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ、そして中国があいついで新たな「シェールガス」埋蔵地帯を発見している。今や「シェールガス」は、どこにでもあるエネルギー資源と化しているように見える。そのため、当然ながら従来の天然ガスは大きく価格を下げている。ロシアやカタールが慌てている理由がわかるし、ドイツが一度は原発延長を決めておきながら、やっぱり原発やめ、に傾いたのも単に「Fukushima」のせいばかりでは無かったのである。温暖化を加速する資源であるかもしれないが、放射能のリスクが無く、中近東の国々の顔色をうかがう必要も無く、長期にわたって安く使える、と言うことになれば「シェールガス」を使わない手は無い。

 残念なことだが日本にはガス採掘できるほどの「シェール」は無い。だが海底資源「メタンハイドレート」がある。とりあえず「シェールガス」によって安くなった天然ガスを輸入して使い、早い時期に自国で産出するエネルギー資源「メタンハイドレート」を使った新しいエネルギーシステムに移行すべきだろう。メタンハイドレートを安全に安く使える技術開発が待ち遠しい。
 太陽光発電等の再生可能エネルギーへ完全に移行できるのは、もっと蓄電技術が進んでからになるのではなかろうか。大規模な超伝導蓄電システムの開発より、「メタンハイドレート」実用化のほうが、ずっと近い将来にありそうだ。(三)
 

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株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
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