シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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第五番 BPO の録音の系譜

2013年11月06日 | 楽聖様は偉大です
写真はベルリン・フィル演奏のベートーヴェンの5番 LP と CD。 左上から 47年フルトヴェングラー指揮 (33’) と53年ベーム指揮はモノーラル録音。 次いで58年クリュイタンス指揮 (33’)、61年フリッチャイ指揮 (38’)、左下から カラヤン62年盤 (31’)、77年盤 (30’)、82年盤 (30’) とアバド90年代盤がデジタル録音。
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交響曲の代名詞 ベートーヴェンの5番となると、まず 圧倒的にカラヤン指揮ベルリン・フィル (以下 BPO) ものが最も多く聴かれていると想像します。 ただし 彼の録音は DG だけでも3種類もあり、もちろん 録音が最もいいのは最後の80年代のデジタル録音です。 演奏はどれも大きな違いはなく、最初から最後まで緊張の連続ばかりです。

3種類のうち 意外と “世評が高いのが最初のステレオ録音の60年代盤” で、カラヤン自身も相当にリキが入っていたんじゃないかと想像します。 というのも、BPO の前常任指揮者のフルトヴェングラーによる戦後初の BPO 演奏会のライヴ録音 (左上) が “伝説のあの演奏会” といわれて高い評価だったため、前任者とは違う演奏にしようという意気込みがあったらしいのです。

誰が書いた記事か忘れましたが、「カラヤンは録音の前 29分台と早いトスカニーニ指揮 NBC 響のレコードを楽団の前でかけて、『オレはこれで行く』といって録音を始めた」と読んだ記憶があります__今 考えると、ホントかいなと疑ってしまいますが。 このベートーヴェン全集と、単売の「運命」「未完成」とのカップリングも 世界中で売れに売れました。 クラシック LP なら DGG (当時は Deutsche Grammophon Gesellschaft) というイメージが出来上がった記念碑的な録音ですね。
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最近 カラヤンと同じ60年代、しかも1年前に録音したフリッチャイ指揮 BPO の演奏を聴いてみたら、カラヤンのに似ていましたが、もっと叙情的で、演奏時間も長かったですね (特に第2楽章)。 フリッチャイが白血病で指揮活動を断念する2ヶ月前のものですから、もっと緊張感に満ちた演奏かと想像しましたが、意外と明るい部分などもあります。 それなりに良かったですね。

その8年前 ベームが指揮した BPO のモノーラル録音 (左上から2つ目) がありますが、ウィーン・フィルとの70年代ステレオ盤 (35’) があるため 余程売れる見込みがないのか 市場では全く見かけません。 いずれ見つけたら7番 (ステレオ?) とのカップリングでしょうから (?) 買って聴いてみたいと思っています。 また クリュイタンス EMI 盤が、このベーム盤とフリッチャイ盤の間に録音されました。 録音品質はそれなりのものと思います。 演奏もフリッチャイ盤に近いように思いますが、長くはありません。

ベームは結局 BPO と50~60年代に3、5(※)、7番を残し、フリッチャイは BPO と1(※)、3、5、7、8(※)、9番を同じ50~60年代に残しました (※ はモノーラル録音)。 そして60年代初めにカラヤンが一気に全曲を完成しました。 これらは全て DG 社が録音・LP で発売しましたから、DG はほぼ3人の指揮者で BPO と同時進行的にベートーヴェンの交響曲を制作していたんですね。
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ジャケットを見て気づきますが、フルヴェン/ベーム/フリッチャイまでは、ジャケットに写真や絵を使わず、文字を並べただけの無骨な、どちらかというと戦前の SP レコードのような作りで、現在の感覚からすると時代の古さを感じさせますね (左上のフルヴェンのは最近の再発売 CD のものです)。

DG のデザインが良くなるのは、カラヤンの60年代盤全集からですから、カラヤンの指揮ぶりだけでなく、そのデザインの良さも売れた理由の1つだと思いますね。 あれがアルヒーフ (DG の古楽専門レーベル) のような文字を並べただけでは、そんなに売れたかどうか? 録音も当時のものとしては抜群に良かった記憶があります (当時 私は中学生でしたが、”うん 流石にドイツプレスは凄くいい” と勝手に納得して聴き入ってました)。
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もう1つの有名楽団 ウィーン・フィルも様々な指揮者と DECCA が制作して録音を積み上げていましたが、全曲を初めて制作したのは確か イッセルシュテット指揮で60年代後半と記憶しています。 ところで皆さん この2つの楽団の違いが分かりますか? 私は LP や CD で聴くと、BPO との違いが殆ど分かりません。

“BPO は縦の線が美しく、ウィーン・フィルは横の線が美しい” といわれるそうですから、前者はリズムに、後者はメロディーに特徴があるのかも知れません。 ベートーヴェンの交響曲はリズムで聴くのか、メロディーで聴くのか?と考えると、メロディーは少し違和感がありますね。

LP や CD は購入者の主観的な好みで選択されますから、一般の音楽ファンも “ベートーヴェンの交響曲はリズムに特徴がある BPO の方がぴったりする” と感じて BPO ものを購入する例が多いと想像します。 これは制作する側もそう感じているからこそ BPO で次々に録音したのではないでしょうか? しかし アバドの90年代盤以降はまだ全曲盤が制作されていません。 その理由は?

これは、(私の想像ですが) 現常任のラットルが EMI で既にウィーン・フィルと全曲盤を制作してしまったために、BPO の常任になったからといって EMI は市場性がないと判断しているんじゃないでしょうか? 市場性があるなら制作するはずです。 因に アバドは最初ウィーン・フィルと、次いで BPO と全集を制作しました (どちらも DG で、私は個人的な好みで 室内楽的な編成の BPO よりウィーン・フィル盤の方がいいと思います)。

… と これだけベートーヴェンの交響曲について書く気を起こさせるのですから、彼は偉大な存在ですね。 楽聖が亡くなって200年近く経っても、世界のクラシック音楽はまだ彼の影響のもとにあるのかも知れません。 勿論 当時の演奏規模よりは遥かに拡大して、生前のベートーヴェンが現代の BPO やウィーン・フィルの自分の交響曲演奏を聴いたら、びっくりしてしまうかも … もっとも 彼は30歳頃から耳が聞こえ難くなってしまったのですから、どこまで聴けるかどうか。 それを克服して 多くの名曲を残してくれた楽聖にただただ “感謝” のひと言です。

今日はここまでです。

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