■パネルディスカッション
「子供たちの教育環境を社会全体で豊かにするためには
〜校庭の芝生化を通じた学校と地域の協働を目指して〜」
・パネリスト
中島修一さん(練馬区立中村小学校長)
桜木則子さん(「中村小学校グリーンキーパーズ」)
櫻木茂さん(中野区立武蔵台小学校長)
長倉亮一さん(「芝生応援団グラスルーター」代表)
・コーディネーター
井上尚子さん(NPOスクール・アドバイス・ネットワーク副理事長)
☆「校庭の芝生化」とのかかわりについて
中島:
3年前に中村小学校の芝生化の工事が始まった。活用の方向と維持管理をどうしたらよいかを考えて、今年が維持管理を始めて2年目になる。芝生の運営を考える会が発足した。子供たちが芝生にどのようにかかわっていけるか、教育活動の計画。学校としてどのような管理運営体制がとれるか。そのようなことでスタートした。学校・行政・PTA・NPOアドバイザーと定期的に打ち合わせを行い、進めてきた。芝生は生き物であり、予想外のことが起こりうる。
桜木:
私は小学生2児の母でもある。学校・グリーンキーパーズなどさまざまな団体の参加で活動が成り立っている。実際に維持作業にかかわってみて「ここまでか」という思い。「なぜ小学校に芝生を作る必要があるのだろう?」「芝生化によってできなくなることがどれだけあるのだろう」と考えながら参加していった。一番のきっかけは、子どもが「芝生は楽しい」「おもしろい」と感じていること。雨が降った後でもすぐに乾くので、すぐに飛び出して行って短い休み時間でも元気に遊ぶ。そういう子どもの姿を見たときに、「もっと遊ばせてあげたい」という思いから、芝生化に賛同するようになった。今まで付き合いのなかった、グリーンキーパーズのお父さんたち、行政の方たちを通して、人間関係も築いていけるのだなあと思っているところ。
櫻木:
中野区では、平成18年度に提出した教育ビジョンより、毎年1校ずつ校庭を芝生化していくことになった。1校めは若宮小学校で、私ども武蔵台小学校は2校目で、8月に芝生化したばかり。芝生化に踏み切った理由は、このところ天候不順で地球環境問題ということが頭にあり、校庭の緑化は効果があるのではないかと思ったためだ。また、今年度本校は50周年の節目ということで、子どもたちの環境をよりよくしたいという思いもあった。
5月連休明けから芝生工事にかかり、夏芝養生を始めたところ、赤とんぼやばったがたくさん飛んでくるようになった。9月の晴れた日に表面温度を測ったところ、芝生と土とで10〜15度くらい差があった。また、子どもの遊びの種類も豊富になってきた。保護者や地域の皆様が喜んでくださる。これからどのように管理していくか、区の担当職員や、グリーンキーパーズの方がきて管理してくださっているため、安心だが、私たちもこれから学んで管理していかなければと思っている。
長倉:
私は芝生の専門家ではない。2001年に(芝生応援団グラスルーターを)結成した当初、芝生について知識を持つ者はゼロだったが、昨年よりグリーンキーパーを仕事として選ぶ者も出てきた。日本芝生化学会にて、校庭の芝生化が話題になったが、地域に校庭を芝生化した学校がなく、情報に乏しい所ほど、芝生化に消極的な傾向がみられるということだった。本日のシンポジウムでは、この場で知った者どうしが今後も情報交換していくことができる、という意味でこうした催しの開催に敬意を表したい。
「校庭の芝生はだめになるだろう」といたる所で話しかけられる。芝自体が傷むという意味であれば、そうだが、校庭の芝生化をあきらめるまでは、失敗も何もない。芝生の状態が悪化したら良くすることを考える、ということで芝生は維持できる。芝生が維持できずに放り投げてしまう、ということは、教育の場である学校では絶対にさせたくない。子どもたちに「努力するんだ」と口にするのであれば、子どもたちの見ている前で大人が、簡単に放り出してしまうことは、決してすべきではない。
では、そこまで思いつめなければできないことなのか、というと、実は芝生の維持はとても楽しい。小学生でも十分にできる簡単な作業。それもどの時期にどの量で、という判断になるが、作業自体は誰でもできるので、楽しい地域の活動ということになる。若い父親は、お祭りなど地域の活動にはなかなか入りにくい。昔から知っている人もいない。校庭の芝生化が新しい取り組みであれば、それがきっかけになって、お父さんたちが芝生のメンテナンスに携わってくれる。
☆校庭芝生化の課題―地域への呼びかけをどのように行うか
中島:
PTA保護者との話し合いをし、維持管理組織として、「武蔵台小の芝生を育てる会」を発足した。この中には行政、町会、スポーツ団体の方に入っていただいた。夏休みや長期休暇の際に、PTAや保護者に芝刈りの経験の機会を3回もうけた。1回目は20人、2回目は30人、4回目は40人と、だんだん参加者が増えて、参加者も保護者の父母、町会長、孫を連れていらした方もいる。30分ほどで芝刈りがすむような要領をだんだんと覚えていっている。今後は、地域の方が一緒に加わって維持管理をしていくことが課題である。
司会:
中村小学校のメンテナンスにはどのくらいの方がかかわっているのか。
中島:
毎週水曜日には芝生教育委員の皆さん方が作業してくださっている。芝生の状況にもよるが、朝夕方に水まきをしてもらったり、雑草が増えているようだったら抜いてもらったり。打ち合わせに基づいて活動。相当の人数がかかわっている。
司会:
やらなきゃいけない、というよりは皆さんが自然にやろうという意識が高まっていると?
中島:
子どもたちのために、ということで集まってくださっている。子どもたちがどのように芝生で運動しているかを知らせて、ご協力をいただいている。
司会:
芝生の養生期間に遊べなくなってしまうが、どのようにしているか。
中島:
児童数が多く、一人当たりの面積が少ない。本校では一人当たり3.7m2しかない。養生期間は全面養生では体育館、校庭の中のバスケットコートなど土の部分で子どもたちの活動をやっていく。部分養生では、活動の工夫として、土の上で行える活動を取り入れ、芝生上の活動を制限する。たとえば、縄跳び、マラソンを校庭の周囲とバスケットコートで行う。屋上もコンクリートだったのを下にマットをひいてもらって、活動できるようにしている。
櫻木:
体育の時間は、たとえば4月中に校庭を使った運動をし、5月連休明けから体育館を使った運動をし、6月中旬からはプールの期間など、うまく組むことができた。冬芝の時期は、9月末に運動会、10月から養生に。休み時間は、本校西側の区立中学校、東側には都立高校があり、使わせてもらった。
長倉:
芝生の上で勝手に遊びをやっているのは目にするが、一番多くみられたのは、小学校低学年の女の子がおままごとのようなことを芝生でやっていたことで、それはよかったと思った。また、これまで見かけなかったバッタやかまきりをみかける、そういうことが大事なのかなと感じる。
司会:
芝生化するにあたってルールがあるスポーツについては、できなくなるものがあったのではないかと思うのだが。
櫻木:
スパイクを使ったゲームができなくなるのではないか、という声はあった。
桜木:
できないならどうするか、工夫していくこと、みんなで寄り集まって相談することが大事。芝生でやることが楽しいから芝生との共存につながっていく。
☆これから校庭を芝生化する学校へのアドバイス
中島:
昨年度全校生徒にアンケートをとったところ、9割の子どもたちが「芝生にしてよかった」と回答している。卒業生や最高学年の子どもたちは、「芝生を校風・伝統にしていってもらいたい」という話をしていたので、ぜひ続けていきたい。ネットワーク、専門性、迅速な対応が必要であり、学校だけではできない。そのようなことをいかに持続していくか。知恵を絞って手を携えていけばよりよい芝生化ができると思う。
桜木:
芝生の維持管理はPTAがやるものなのか、行政とも話をしていきたいと思う。子どもたちを締め付けることなく、地域が一体となれるような大きな柱をもってやっていただければ、私たちもその一助になれるのではないかと思う。
櫻木:
地域保護者の協力だけでなく、教育面で子どもがかかわっていくことも大事。養生期間と学校行事を両立させ、支障のないような活動をしていくことが必要。専門的な知識・技能を持つ方のアドバイス・フォローしてもらえるようなシステムを教育委員会でも考えていくことが大事。
長倉:
ひとつの学校の芝生の管理・運営については皆さんの話のとおりだと思う。プロの技術者のタイムリーなアドバイスをいかにして得るか。東京都全体を見渡したら、芝生応援団という組織ができるが、こういう活動に関心をもつ人が、経済的支援・協力できる組織を立ち上げ、企業と連携して効果的な活動を進められたらと思っている。









