原発問題

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【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※2回目の紹介

2015-02-04 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第1章 避難計画の罠プロローグ」含むを複数回に分け紹介します。2回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「プロローグ」⇒「第1章 避難計画の罠」の紹介

前回の話:【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※1回目の紹介

 翌、元日の早朝6時から、官房長官の緊急記者会見が官邸で行われた。

「昨夜12時前、関東電力の高圧送電線の鉄塔が倒壊する事故があり、新崎原発が緊急停止いたしました。現在、原子炉を非常用電源で冷却中であります。

 周辺住民の方々は、冷静に対応願います。この事態によりまして、関東電力の供給区域内で、現在、50万世帯に停電が起きておりますが、順次復旧する見込みであります」

 緊張した面持ちで官房長官がこう述べた。


 新崎原発では、午前7時の段階で、原子炉を冷却中のバッテリー電源の残量がほとんどなくなりかけていた。そのため、非常用のディーゼル発電機を始動させようと、現場の当直の作業員が努力していた。

 前日夕方からの冷え込みは非常に厳しく、気温は、氷点下9・5度に達していた。キンキンに冷え込んでいるためか、ディーゼル・エンジンがかからない。

 午前7時半にバッテリー電源が切れたあと、原子炉の圧は急速に上昇し始めた。それに比例して、俄然、中央制御室の緊張が、ぐんぐんと上り詰めていった。

 テレビ会議システムでつながる関東電力本店や官邸のオペレーションルームも緊迫してきた。

 所長代理が外部電源者の出動を命じ、所員が原子炉のある海岸線から少し離れた高台の車庫棟に向かおうとするが、そこに行く道は50センチメートル以上の深い積雪に覆われていた。吹雪も強まっていた。

「外部電源車、出動できません!」

 そう、所員が報告する・・・海抜40メートルの高台にある車庫棟へ歩いて近づこうとしても、積雪が、夜からの冷え込みで、カチンカチンに凍結している。アイゼンもピッケルもない状況で、吹雪のなか車庫棟に登っていくのは至難の業だった。

 免震重要棟の緊急時対策室の所長代理が、

「除雪車を呼べ、すぐにだ!」

と、必死の形相で施設課長に指示する。

「原子力災害対策特別措置法に基づく15条通報です。原子力緊急事態です!」

 所長の留守を預かる所長代理が、官邸のオペレーションルームに報告した・・・。


 官邸のオペレーションルームから、資源エネルギー庁次長の日村直史がそっと抜けだしてきた。オペレーションルーム内部の喧騒が嘘のように、廊下は静かだった。

 そのまま側のトイレに駆け込む。個室の鍵を締め、慌てて携帯を取り出す・・・妻への電話だった。

 経産省から公用携帯として提供されているNTTドコモの災害時優先携帯電話ー通常の携帯は災害時には大抵不通になるが、災害時優先携帯電話は、災害対応のためという名目で、常時つながるようになっている。

 そしてこれは、政府関係者と、電力、ガス、鉄道といったライフラインを提供する事業者にだけ供給されているが、私用で使うこともできる。一種の役得といっていい。

※続き第1章 避難計画の罠プロローグ含む)は、2/5(木)22:00に投稿予定です。

 

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


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