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東京電力の点検データ改ざん事件(1)隠蔽を暴く

2011-08-20 08:36:20 | 原発・放射能

東京電力の点検データ改ざん事件(1)隠蔽を暴く

 

1.東京電力の点検データ改ざん事件

(1)東電の責任
・東電社内調査委員会によれば、自主点検データの改ざんは1986年の福島第一原発2号機の検査から
始まり、現在まで続く。かかわった社員は約100人に上り、本社原子力管理部の幹部(取締役を含む)数
名と3原子力発電所の現場担当者など社員30~40名が組織的に行っていた。

・福島第一、第二、柏崎刈羽原発の課長級社員が、原発の自主点検で機器の傷やその兆候が見つかった際、
現場担当者が独自に安全評価を行って安全に問題ないと判断した場合、国には「異常なし」と報告すること
をルール化し、実施していた。法令違反を意識しながら、維持基準を導入し、定期検査を計画通りの日程
でこなすことを最大の目標にし、国には虚偽報告を行い、バレるのを防ぐため隠蔽工作も行っていた。

・各発電所長がトラブル隠しを直接指示したケースは確認されていないが、報告は受けていた。

・原子力安全・保安院によれば、自主点検報告書の虚偽記載は1987~1995年に29件、シュラウドのひ
び割れや兆候がありながら報告書に記載しなかったケースが計9件あり、福島第一(5件)、第二(3件)、
柏崎刈羽(1件)のいずれもが行っていた。蒸気乾燥器のトラブルも3原発で虚偽記載。
法令違反の疑い6件(東電が多数のひび割れを確認しながら国に報告せずシュラウドを交換した福島第
一原発1・2・3・5号の4件、損傷の一部を隠してシュラウドを修理した福島第二3号の1件、
ひび割れを隠し無届けで蒸気乾燥器を交換した福島第一1号の1件。6件中5件で機器が交換され
損傷状態を確認できず東電が事実を意図的に隠ぺいした疑い有。ひび割れを確認していた場合)

▽福島第一原発1号1995、96年にシュラウドひび割れを発見、2000年に交換。発見から交換までの
間、技術基準適合義務(電気事業法39条)違反。

▽福島第一原発1号1989年に蒸気乾燥器に6本のひび割れ発見、3本を水中溶接で修理、記録を残さ
なかった。修理記録の保存義務違反。

▽福島第一原発2号1996年にシュラウドひび割れの兆候が、ひび割れに成長していると分かったが放
置。1996年からシュラウドを交換した1998年までの間、技術基準適合義務違反。

▽福島第一原発3号1994、95年にシュラウド全周にひび割れの疑いを発見したが放置。発見から
1997年のシュラウド交換までの間、技術基準適合義務違反。

▽福島第一原発5号1994年にシュラウドのひび割れを発見したが放置。発見から1999年の交換まで
の間、技術基準適合義務違反。

▽福島第二原発3号1997年にシュラウドの広範囲にひび割れの疑いを発見。2001年、発見日を偽っ
て国に報告し修理。1997年から修理完了までの間、技術基準適合義務違反。
通達違反の疑い5件(福島第一1号機の緊急炉心冷却システム系の機器損傷の隠ぺい。兆候だけの場合)
品質管理・企業倫理上の問題4件(レンチ紛失・回収の疑いがある福島第一3号機など。レンチ紛失・回
収では工具の管理記録をつけず)
問題なし14件(GEがサービスで修理をしたためにGEと東電の記録が食い違ったもの)

・東京電力は、1986.4のチェルノブイリ事故の直後から自主点検データの改ざんをルール化して組織
的に実行し、1989.1の福島第二原発3号炉の再循環ポンプ破損事故を経験しながらそれを改めず、
1995.12の動燃(現核燃料サイクル開発機構)による「もんじゅ」事故でのビデオ隠し、1998.4の関西
電力によるスイス・ベズナウ原発のでMOX燃料棒事故隠し(2000.8に発覚)、1998.10日本原電の100%
子会社原電工事による使用済燃料(MOX燃料)輸送容器の中性子遮蔽材データ改ざん、1999.9のJCO事
故、1999.12のBNFLによるMOX燃料品質管理データ改ざん等が相次ぎ、電力各社等はその都度、社内
体制を見直し、社内監査を充実させ、「原子力安全文化」の醸成に努めると主張してきた。それが真っ
赤な大嘘であった。


(2)経済産業省(旧通産省)、原子力安全・保安院の責任

i) 技術基準に適合しない可能性があるにもかかわらず、運転継続を容認
・原子力安全・保安院は8/29の東電による自主点検データ改ざん問題を公表した際、原発8基でひび割
れなどが修理されずに残っている疑いがあるにもかかわらず、「原子炉の安全性に直ちに重大な影響を
与える可能性はない」と運転継続を容認した。これは、保安院による維持基準の先取りであり、直ちに
運転を停止して検査・修理を求めるべきである。
保安院は、電気事業法経済省令62・告示501では維持基準を規定していないが、「ルールとして認め
ていないわけではない。特殊工事の認可を得れば要求事項を満たしたことになる」と現行法でも認めて
いると主張している。これはなし崩し的に「技術基準の適合義務」を放棄することにつながる。

・維持基準導入の前提は、①維持基準への適合を電力会社が自主判断する以上、維持基準遵守の技術者
倫理が徹底しており、厳格な監査体制が機能していること、②維持基準への適合を判定する点検データ
の精度が定量的に十分高く、ひび割れ等の度合いを過小評価することにならないこと(原発の場合には
検査に被曝が伴うことから精度の高い検査が困難な場合がある)、③供用期間中に起こりうる損傷の種
類(疲労や腐食を含めて)と許容値が構造物・機器別に明確に定められていること、④原発重大事故の重
大さに鑑み、通常状態とは異なる地震、航空機墜落、重大な過渡変化等の事態を考慮した維持基準とな
っていること、⑤維持基準による自主点検への国によるチェック体制が充実していること(単なる書類
検査に止まらない)、などが不可欠である。これらの条件が満たされているとはとてもいえない。
1996年発行のNRC報告書では、世界の沸騰水型軽水炉原発BWR22基で炉心シュラウドに欠陥が見つ
かったが、うち10基が維持基準に従って全く対策を施さずに運転していた。2000.3の調査では、米国
で22基に欠陥を発見、うち17基で評価の結果、対策なしで運転を継続していた。しかし、地震国の日
本で同じような維持基準で運転を継続するのは危険である。

・福島第一原発6号の定期検査の最終試験2002.8.30に行う予定だったが、保安院が中止を宣言したま
ま調整運転の継続を黙認している。1991年の美浜事故の際も調整運転のまま長期運転を容認したが、
これでは定期検査で合格しないままの営業運転を公然と認めることになる。

・原発の推進を行政目標の一つに掲げている経済産業省の下に置かれた原子力安全・保安院にとって、
原発の経済性追求は電力会社と共に至上命題であり、それを損なうような行政命令は下せない。保安院
が原発推進行政における規制当局としての役割を果たす以上、電力会社とのなれ合いや規制当局を含め
た違反をチェックするための独立した検査期間が不可欠である。

ii) 調査中に定期安全レビューで「妥当」と評価
・原子力安全・保安院は、東電から7/9に提出された柏崎刈羽1号、福島第二3・4号の定期安全レビュ
ー報告(約10年ごとに実施)を8.8に「妥当なもの」と評価していた。これら3基ともシュラウドにひ
び割れのインディケーションがあり、虚偽報告の疑いがあり、調査中であった。

・自治体の批判にあったため、福島第一原発1~5号、福島第二原発2~4号、柏崎刈羽1号の計9基
の定期安全レビューの評価結果を9/13に撤回した。

iii) 調査2年遅れの理由の虚偽報告
原子力安全・保安院は8/29の発表で、①告発当時、告発者はGE社員で不利益にならないよう慎重に
調査した。②告発者から身元を開かしての調査に同意を得たのが2001.11頃でGEへの問い合わせがそ
れ以降となった、と説明していた。しかし、①は、2000/7/3付け告発状で「身元が分かると再就職活動
に支障が出る」と記しGEを解雇された身分であることは当初より明白。保安院は、告発当時すでにGE
を解雇されていたと9/4に訂正、②は、2000/11/3付け2回目の告発状で「身元を明かしていい」と記さ
れていた。松永保安院次長が、当初発表より1年前すでに同意が得られていたことを9/12に発表。
2年以上かかった調査の遅れの責任を免れるため、告発者の身元秘匿要請に転嫁していた。
②について2000/11/21に届いた8/7付け回答FAXで「身元を明かさないでほしい」と記されていたの
は、あくまで8/7時点の話であり、保安院が混乱することはあり得ない。万が一混乱したとすれば、す
ぐに告発者へ照会すれば済むことである。

iv) 告発者を被告発者に売り渡す行為をとり、告発者が不利益を被らない措置をとらず
・通産省資源エネルギー庁は、2000.11.13に告発者から身元開示の同意を得ながら、GEへの調査は当
面しないことを内部決定。にもかからず、2000.12.25に「この作業に携わったGEの担当者を教えてほ
しい」と東電に調査を指示し、告発者自筆のサイン入り検査記録や、告発者が福島第一原発の東電側点
検担当者と交わした実名の会話記録などを添付し、告発者を被告発者に売り渡す行為を行った。いくら
本人が身元開示に同意したとしても、この件では告発者の氏名を被告発者に知らせる必要性は全くない。
告発内容の調査を行うべきであり、東電ではなくGEに直接照会すべき事柄である。


v) 法令に基づく立ち入り調査ではなく、東電に照会するなれ合い
・JCO事故の教訓から原子炉等規制法改定に基づき、2000.7.1に施行された内部告発者の保護と保安検
査の権限を使って、保安規定違反の容疑で、東電に対し立ち入り調査を行うべきであった。保安院によ
る2年間の告発放置は、JCO事故を全く教訓としないものである。

・告発を受けてすぐに米国在住の告発者と連絡をとって告発内容の確認を行うことなく、告発状の届い
た翌日に、被告発者の東電に告発内容を電話で通知した。これは告発内容に関するさらなる証拠隠滅な
どの偽装工作を東電に促す措置だといえる。

・告発を受けながら、基本的には東電社内での「自主調査」に任せ、9.28に任意の立ち入り調査を行っ
ただけで、GEへの調査も行わないと決定し、院内に設置した調査機関「申告委員会」を2000.12末か
らの約8ヶ月および2001末から約8ヶ月の延べ1年4ヶ月間に一度も開かず、告発を棚上げ状態に置
いた。GEIIやGEからの情報提供によって初めて、自らの責任が問われる段階になってようやく、仕方
なく本格調査に乗り出した。

・保安院の佐々木宜彦院長は2001.1の院発足当時から事実関係を把握していたが、平沼赳夫経済産業
相と村田成二事務次官が事実を知らされたのは公表前日の8.28であり、資源エネルギー庁岡本巌長官は
8.29午後に伝達された。JCO事故の教訓として原子炉等規制法を改正して設けた内部告発制度と保安検
査システムの適用第1号であるにも関わらず、また、その内容が悪質な虚偽報告であるにもかかわらず、
公表直前まで2年間大臣に報告されず、できればなかったことにしようとした姿勢は問題である。
東電は8.7の時点で、保安院へ調査に全面協力すると同時に、「プルサーマル計画を凍結させるため、
新潟県知事らへ『問題を抱えている』と内々に伝えさせてほしい」と要望し、さらに、プルサーマル計
画を当面凍結するよう原子力政策を担当する資源エネルギー庁への問題の伝達を求めていた。にもかか
わらず、資源エネルギー庁へは伝達せず、データ改ざんを知りつつ、プルサーマル計画を推進させた。

・保安院は「原子力施設安全情報申告制度」を新設する方針を打ち出した。原子力施設安全情報申告調
査委員会を設置し、告発から30日以内に対応方針を決め、3カ月ごとに処理状況を公表するというも
の。しかし、電力会社と一体になった原発推進行政の規制当局に内部告発の調査委員会を設置するのは、
告発もみ消しにつながるだけである。経済産業省から独立した告発受け入れ機関を設けるべきである。

・2002.9.12電気新聞によれば、保安院が基準担当チームの設置を計画しており、職員枠に限界がある
ため、2004.4設立予定の原子力規制に関する独立行政法人に規格審査・認証業務を一部移管すること
も検討しているという。原子力安全・保安院から独立した強大な検査機関による検査のダブルチェック
体制の整備が不可欠である。内部告発もこの検査機関が受け付けて調査すべきである。9/13に自主点検
で見つかった日本原燃の配管接続ミスも、経済産業省は書類審査だけのチェックで合格にし、ミスを見
抜けなかった。事業者任せと事業者とのなれ合いの検査が批判されており、それを防ぐには厳しい監査
システムが不可欠である。

vi) 東電の法令違反による刑事告発や行政処分を行わない
・保安院は「強度が十分に保たれているかどうかを確認しないで使い続けるのは、技術基準の適合義務
違反の可能性がある」などとしながら「問題のシュラウドはいずれも交換、修理されており、現時点で
明確な法令違反があるわけではない。刑事告発や行政処分は見送る」と調査途中の9/13、電気事業法や
原子炉等規制法の法令違反に関する東電の刑事告発や行政処分の見送りを決定。松永次長は、「我々は
原子炉の安全性を確保する立場。犯罪を捜査しているわけではない。誰が指示したかなどを解明するの
が目的ではない。」としているが、刑事告発がなければ警察は犯罪捜査に入らない。行政処分も行わな
いというのは東電との癒着以外の何者でもない。「原子炉の安全性を確保」するためには違反の徹底し
た摘発が不可欠であり、今の保安院にはその能力がないことを松永次長が吐露したに等しい。


vii) 法令適用の誤った指導と法令違反の助長
・通産省は、蒸気乾燥器の水中溶接には確証試験が必要と誤って東電に回答し、「法令上問題ないのに、
事実上不可とした。」

・元東電幹部の笛木謙右氏によれば、1970年代半ばに旧通産省の検査官が「配管にひび割れの兆候が
ある」という報告書を突き返し、「運転はいいが、インディケーションはだめだ。この話がもし表に出
たら、こっちは知らない」と突き放し、「異常なし」に書き替えた報告書を受け取ったという。ひび割れの兆候への対策を指示せず、報告書の書き方にクレームを付けることで事実上書き直しを迫ったのは
虚偽記載の共犯である。規制当局として、法令を形式的に遵守することだけに腐心し、「技術基準への
適合義務違反の可能性あり」と東電に指摘しなかったのは、法令違反の助長につながる。

 

次回、『東京電力の点検データ改ざん事件(2)隠蔽を暴く』記事に

続きを・・まだまだつづきます。



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