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青森県も驚いたMOX(混合酸化物)で核兵器ができるという事実

2012-01-30 23:30:51 | 原発・放射能

青森県も驚いたMOX(混合酸化物)で核兵器ができるという事実

3月9日、訪日中の韓国の核拡散問題の専門家姜政敏(カン・ジョンミン)博士が、米国人の専門家二人とともに、青森県三村知事に対し、六ヶ所再処理工場が核拡散を制限しようという国際的努力に与える脅威について日本に存在すると見受けられる「独りよがりの安心感」に関して懸念を表明する書簡を送付しました。カン博士は、10日、青森県庁を訪れ、不明点について政府の説明が得られるまで同工場のアクティブ試験の開始を認めないよう知事に求める要請書を手渡しました。また、13日には、ピースボートを初めとする日本の5団体とともに経済産業省を訪れ、同様の趣旨の二階大臣宛て要請書を手渡しました。

米韓専門家3人の書簡概要

米韓の専門家ら、六ヶ所再処理工場のもつ核拡散問題上の懸念について青森県知事に書簡──日本政府の「独りよがりの安心感」を批判:六ヶ所再処理工場の製品(ウランとプルトニウムの混合酸化物粉末は核兵器に転用可能

カン博士の他、先月青森県を訪れた米国「憂慮する科学者同盟(UCS)」のエドウィン・ライマン博士及びプリンストン大学のフランク・フォンヒッペル公共・国際問題教授が署名した書簡は、六ヶ所再処理工場が核拡散に与える影響についての懸念を表明したマサチューセッツ州のエドワード・マーキー議員を初めとする6人の議員に対し加藤良三大使が2月14日に送った返答に言及し、返答が「六ヶ所工場においては、純粋なプルトニウム酸化物単体が存在することがないように、ウランと混合したMOX粉末(混合酸化物粉末)を生成するという技術的措置も講じられている」と、この混合酸化物が酸化プルトニウムと非常に異なり、核兵器用物質にするのが極めて難しいかのように述べているのは根拠がないと批判しています。

書簡は、ライマン博士が2月21日、エルバラダイIAEA事務局長の特別補佐官を務めたこともある外務省国際原子力室長の小溝泰義氏に面会した際に、マーキー議員らへの書簡におけるステートメントとIAEAの手引きの間の矛盾に関する日本政府の立場について説明を求めたが、小溝氏は、ライマン博士や米国議員らに対し日本政府の文書による回答を後日送るとの約束をすることをも拒否したとし、県として、政府の詳細な技術的説明を求めるべきだと指摘しています。そして、もし日本政府が、技術的に健全な説明を提供することができなければ、県は、六ヶ所再処理工場の運転開始を許すべきではないと述べています。

書簡は、最後に、カン博士が知事や県職員に本件やその他の関連した問題について説明する用意があるとして結んでいます。

カン博士略歴:

核問題アナリスト(ソウル)

1965年生まれ
ソウル大学原子力工学学士・修士号
東京大学原子力工学博士号
1998-2000年 プリンストン大学研究員
ピーター・ヘイズの主宰するノーチラス研究所の研究員
韓国「大統領持続的発展委員会」原子力問題諮問委員

最近の論文に、米国で提唱されている「核拡散抵抗性」再処理技術が実は「抵 抗性」が高くないことを分析したものがある。(プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル教授との共同論文。「科学と世界的安全保障」誌。)

背景説明

  1. ポイント
  2. MOX(混合酸化物)と核兵器
  3. マーキー議員らの書簡後のやりとり整理
  4. 資料

1.ポイント:

六ヶ所再処理工場の運転が核核拡散に与えるマーキーらの書簡(1月26日)に対し、日本政府は、同27日発表の政府見解において

「六ヶ所工場においては、純粋なプルトニウム酸化物単体が存在することがないように、ウランと混合したMOX粉末(混合酸化物粉末)を生成するという技術的措置も講じられている」

と述べているが、

これは、「テロリストたちによる核兵器の獲得」についての懸念に応えるものになっていない。強い放射能を持つ核分裂生成物から分離されてしまったウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)からプルトニウムを取り出すのは簡単であり、IAEAの保障措置用語集(2001年版)にある「完成したウランまたはプルトニウム金属構成要素への推定物質転換時間」の表においても、二酸化プルトニウムと同じカテゴリーに入っていて、その転換時間は、1‐3週間とされている。

2.MOXと核兵器

六ヶ所ではウランとプルトニウムの酸化物を50:50の割合の「混合酸化物(MOX)」として取り出す。六ヶ所村に建設予定のMOX燃料工場では、この混合酸化物(MOX)にさらに劣化ウラン(ウラン238)を加えて「MOX燃料」を製造する計画。

1)MOXからプルトニウムを取り出して核兵器の金属構成要素にするのにかかる時間

──1-3週間(IAEA保障措置用語集2001年版)

そもそも、二酸化プルトニウムを金属プルトニウムにする技術を持っているような集団であれば簡単にMOXからプルトニウムを取り出して金属にできる。8kgのプルトニウムで核兵器が一発できるとして、混合物なら16kg盗めば良いわけで、重さにそれほど差ができるわけでもない。

2)さらに50:50のMOXは、金属にすればそのままでも核兵器になる。

混合酸化物を金属の混合物にすれば、そのままでも長崎型の核兵器に使える。(MOX粉末のままでも核兵器になるとの議論もある。)

3)MOX燃料からも金属プルトニウムを取り出して核兵器にできる。

MOX燃料の場合には、1体の重さが約500kg。プルトニウム富化度を6%とすると、30kgほどのプルトニウムが含まれていることになる。これを盗むのは、放射線の遮蔽をする必要がないから、トラックを使えば可能。

いずれにしても、六ヶ所で取り出したMOXが核兵器に使えないから核拡散につながらないと言うような日本政府の主張は、国際的には全く通用しない。マーキー議員らは日本が核武装計画を持っていると非難しているわけではなく、世界で現在以上に核兵器転用可能物質が蓄積されることが核拡散に与える一般的影響、テロリストによる奪取などを心配している。

参考:

『再処理の危険』ハロルド・ファイブソン
(プリンストン大学科学・世界安全保障プログラム上級研究政策科学者)

MOX燃料輸送と核拡散 ─ 原子炉級プルトニウムでできる核兵器

日本・核兵器・原子炉級プルトニウム

3.マーキー議員らの書簡後のやりとり整理

1)米国エドワード・マーキー議員ら日本大使館・加藤良三大使宛て書簡(1月26日付)

「私たちは、2006年の六ヶ所でのアクティブ試験を中止し、それを六ヶ所再処理工場の運転を延期するというより広範な合意の一環とするよう要請します。・・・なぜなら、このような行動が、核軍縮と核拡散防止を推進し、テロリストたちによる核兵器の獲得を防止するのに役立つだろうからです。」

2)加藤良三大使から米国エドワード・マーキー議員らに返答の書簡(2月14日付け)

(*基本的に1月27日に発表された日本政府見解の翻訳)

「六ヶ所工場においては、純粋なプルトニウム酸化物単体が存在することがないように、ウランと混合したMOX粉末(混合酸化物粉末)を生成するという技術的措置も講じられている。」

3)憂慮する科学者同盟(UCS)エドウィン・ライマン博士、外務省に(2月21日)

「このような混合物は、核兵器に直接使うことができるものです。さらに、この混合物は、分離プルトニウムと比べて、放射能が強くもなければ、取り扱いが難しいわけでもありません。このため、国際原子力機関は、この物質を、核兵器を製造にとって分離プルトニウムと同じ有用性を持つものであり、転用や盗難への脆弱性も分離プルトニウムと同じものであるとみなしています。」

4)外務省国際原子力室長の小溝泰義氏(2月21日)

*エルバラダイIAEA事務局長の特別補佐官

「専門家でないので答えられない。後日文書で回答することも約束できない。」

5)青森県担当者 ライマン博士に (2月24日) 

「IAEAがMOX混合物が核兵器に転用できるとしているとは聞いたことがない。しかし、六ヶ所に建設予定のMOX工場で作られるMOX燃料は、核兵器には転用できないのではないか。」

6)姜 政敏(カン・ジョンミン)博士 青森県担当者に(3月10日)

「このように混合酸化物が酸化プルトニウムと非常に異なり、核兵器用物質にするのが極めて難しいかのように述べているのは根拠がない。」

*カン博士は、青森県が日本政府に以下のように求め、回答が得られるまで六ヶ所再処理工場の運転を許可しないよう要望

      1. (1)MOXが核兵器に転用できないとの主張についての技術的に説明すること。
      2. (2)六ヶ所再処理工場における各年毎のプルトニウム累積貯蔵量の推移をグラフによって示すこと。
      3. (3)六ヶ所で使われるピューレックス法は核拡散につながり、廃棄物対策にもならないとする米国の国際原子力パートナーシップ(GNEP)構想を支持しながら、核拡散につながる六ヶ所再処理工場の運転を今開始しようとしていることの矛盾について説明すること。
7)青森県担当者  カン博士に(3月10日)

原子力政策大綱・・電気事業者の利用計画・・透明性の向上・・原子力委員会も妥当と認め・・平和利用に徹し・・

*これは基本的に1月27日発表の政府見解を読み上げていたに等しい。ただし、添付資料2)にあるように、政府見解は、1)原子力政策大綱 2)利用計画 3)MOX粉末という技術的措置 4)平和利用 5)核燃料リサイクル推進の決意という構成になっている。このうちの3)の議論には根拠がないとのカン博士の指摘に対し、他の部分を読み上げてみても何の反論にもならない。カン博士は、日本が核武装計画を持っているのではないかなどとは一言も言っていない。そもそも、カン博士は、青森県担当者に政府に代わって答弁することを求めたわけではない。青森県は、3)に関して政府の言い分を信じ込んでおり、IAEAの見解さえ知らなかったわけだから、県知事が県民に代わって、この件について詳細な技術的説明を求め、納得できる回答が得られるまで再処理工場の運転を許可すべきではないと提言しているだけである。

青森県担当者は、GNEPについては、日本政府は将来新しい再処理技術の開発をすることも検討しているとこれまた日本政府代表のような発言をしているが、これも今六ヶ所再処理工場の運転を開始することを問題にしているカン博士の指摘に対する応えに全くなっていない。この件でも、カン博士は、矛盾があるから政府に釈明を求めるように提言しているだけであって、青森県担当者に外交官の代わりをすることを求めているわけではない。

資料8)から明らかなように、この日の青森県担当者の対応は、経産省のそれに非常に似通っている。2月にライマン博士から、MOXが核兵器に転用できると聞かされたときは非常に驚いていたが、今回は、それについて県民を代表して政府に詳細な説明を求めるのではなく、論点を避ける政府の返答をただ繰り返すという方針を決めていたようである。

資料

米韓専門家の書簡

2006年3月9日

青森県知事 三村申吾殿

私たちは、六ヶ所再処理工場が核拡散を制限しようという国際的努力に与える脅威について日本に存在すると見受けられる「独りよがりの安心感」に関して懸念を表明するために、筆を執っている次第です。貴職が許可を与えられれば、貴県のこの工場は今月末にもアクティブ試験を始めてしまう可能性があります。最終的に使用済み燃料から4トン以上のプルトニウム──長崎型爆弾500発以上を作るのに十分な量──を分離するという試験です。

この「独りよがりの安心感」の1つの例は、加藤良三大使が2月14日にマサチューセッツ州のエドワード・マーキー議員を初めとする6人の議員に送った書簡の中に見られます。これは、計画されている六ヶ所工場の運転開始が核兵器の拡散にとって持つ意味合いについて懸念を表明した議員らへの返答として出されたものです。大使の書簡は、「また、六ヶ所工場においては、純粋なプルトニウム酸化物単体が存在することがないように、ウランと混合したMOX粉末(混合酸化物粉末)を生成するという技術的措置も講じられている」と、この混合酸化物が酸化プルトニウムと非常に異なり、核兵器用物質にするのが極めて難しいかのように述べています。

米国と日本が東海再処理工場にこの措置を導入することに同意したのは事実ですが、この措置は、酸化プルトニウムとの比較において、重要な核拡散抵抗性を提供するものではありません。そのことは、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の手順にも反映されています。手順は、混合酸化物を製造する工場とプルトニウム酸化物を製造する工場の間で何も差がありません。この点に関して、私たちのうちの一人、エドウィン・ライマン博士は、2月24日に貴県商工労働部資源エネルギー課課長の桜庭洋一氏にお渡しした貴職宛の書簡で、次のように述べています。

「日本政府は六ヶ所再処理工場は、分離プルトニウムを作らず、プルトニウムとウランの50対50の混合物を作るから、保安リスクを伴わないと述べています。しかし、このような混合物は、核兵器に直接使うことができるものです。さらに、この混合物は、分離プルトニウムと比べて、放射能が強くもなければ、取り扱いが難しいわけでもありません。このため、国際原子力機関は、この物質を、核兵器を製造にとって分離プルトニウムと同じ有用性を持つものであり、転用や盗難への脆弱性も分離プルトニウムと同じものであるとみなしています。」

「六ヶ所再処理工場の運転開始を許可する前に、貴職は、日本政府に対して、なぜMOX混合物は純粋なプルトニウム酸化物よりも核兵器にとっての有用性が、大幅に低くなるかという点についての詳細な技術的説明を求めるべきです。もし日本政府が、技術的に健全な説明を提供することができなければ、貴職は、六ヶ所再処理工場の運転開始を許すべきではありません。」

桜庭氏は、MOX混合物と酸化プルトニウムを同様に扱うIAEAの手引きについて聞いたこともないと言われました。氏には、貴職の参考にと、IAEA保障措置用語集(1987年版)の日本語訳をお渡ししてあります。翻訳は、旧科学技術庁の監訳となっております。(現行の2001年版にある若干の改訂は、この問題に関する私たちの結論に影響を与えるものではありません。)

2月21日のライマン博士との会合において、マーキー議員らへの書簡におけるステートメントとIAEAの手引きの間の矛盾に関する日本政府の立場について説明を求められた外務省国際原子力室長の小溝泰義氏は、自分は技術的専門家ではないからと説明を断りました。エルバラダイIAEA事務局長の特別補佐官を務めたこともある小溝氏は、ライマン博士や米国議員らに対し日本政府の文書による回答を後日送るとの約束をすることをも拒否しました。

日本政府がこのような重要な問題に関しこうした誤情報を貴職や貴県職員、さらには青森県民に提供し続け、MOX混合物がプルトニウム酸化物と比べ核拡散の懸念が少ないとの主張に関し技術的正当化議論を出すことを拒否しているのは不幸なことであります。

もう一度繰り返します。六ヶ所再処理工場の運転開始を許可する前に、貴職は、日本政府に対して、なぜMOX混合物は純粋なプルトニウム酸化物よりも核兵器にとっての有用性が、大幅に低くなるかという点についての詳細な技術的説明を求めるべきです。もし日本政府が、技術的に健全な説明を提供することができなければ、貴職は、六ヶ所再処理工場の運転開始を許すべきではありません。

私たちのうちの一人、カン・ジョンミン博士が3月10-11日に青森県を訪れる予定ですので、貴職や貴県職員の方々にお会いして本件やその他の関連した問題についてご説明できれば幸いです。

エドウィン・ライマン
「憂慮する科学者同盟(UCS)」世界的安全保障プログラム上級科学者

フランク・フォンヒッペル
プリンストン大学公共・国際問題教授

姜政敏(カン・ジョンミン)
核問題独立アナリスト

カン・ジョンミン博士の青森県知事宛要請書

2006年3月10日

青森県知事 三村申吾殿

昨日、米国「憂慮する科学者同盟(UCS)」のエドウィン・ライマン博士及びプリンストン大学のフランク・フォンヒッペル教授とともにお送りした書簡にあるとおり、六ヶ所再処理工場が世界的核拡散問題に与える影響について日本政府が青森県に対して行っている説明には誤りがありますので、同工場のアクティブ試験の許可を与える前に、日本政府に以下のことを求めるよう要請します。

  1. MOX混合物がなぜ純粋なプルトニウム酸化物よりも核兵器にとっての有用性が大幅に低くなると考えるのかについて詳細な技術的説明を行うこと。
  2. 六ヶ所再処理工場でプルトニウムが分離され始めた場合、電力会社などの消費計画によってそれがどのように消費されていくのかを説明するため、六ヶ所再処理工場における各年毎のプルトニウム累積貯蔵量の推移をグラフによって示すこと。
  3. 国際原子力パートナーシップ(GNEP)構想は、六ヶ所再処理工場で採用されているようなピューレックス(プルトニウム・ウラン抽出:PUREX=plutonium-uranium extraction)法という再処理方式は核拡散の危険性が高いからユーレックス・プラス(ウラン抽出プラス:UREX+=uranium extraction+ )という新しい再処理法などの開発を目指すとしているが、日本がピューレックス法を批判するGNEPを支持するとしながら、核拡散の危険性の高いそのピューレックス法による再処理を六ヶ所で開始しようとしていることの論理的矛盾について説明すること。

姜政敏(カン・ジョンミン)

連絡先

130-dong, 504-ho
Seoul National University
Shilim-dong, Kwanak-go
Seoul 151-742, ROK

カン・ジョンミン博士の経済産業省宛要請書

2006年3月13日

経済産業省大臣 二階俊博殿

去る9日に米国「憂慮する科学者同盟(UCS)」のエドウィン・ライマン博士及びプリンストン大学のフランク・フォンヒッペル教授とともに三村申吾青森県知事にお送りした書簡(添付)にあるとおり、六ヶ所再処理工場が世界的核拡散問題に与える影響について日本政府が米国のエドワード・マーキー議員を初めとする6人の下院議員や青森県に対して行っている説明には矛盾がありますから、同工場のアクティブ試験の開始前に以下のことを行うよう要請します。

  1. MOX混合物がなぜ純粋なプルトニウム酸化物よりも核兵器にとっての有用性が大幅に低くなると考えるのかについて詳細な技術的説明を行うこと。
  2. 六ヶ所再処理工場でプルトニウムが分離され始めた場合、電力会社などの消費計画によってそれがどのように消費されていくのかを説明するため、六ヶ所再処理工場における各年毎のプルトニウム累積貯蔵量の推移をグラフによって示すこと。
  3. 国際原子力パートナーシップ(GNEP)構想は、六ヶ所再処理工場で採用されているようなピューレックス(プルトニウム・ウラン抽出:PUREX=plutonium-uranium extraction)法という再処理方式は核拡散の危険性が高いからユーレックス・プラス(ウラン抽出プラス:UREX+=uranium extraction+ )という新しい再処理法などの開発を目指すとしているが、日本がピューレックス法を批判するGNEPを支持するとしながら、核拡散の危険性の高いそのピューレックス法による再処理を六ヶ所で開始しようとしていることの論理的矛盾について説明すること。

姜政敏(カン・ジョンミン)

連絡先
130-dong, 504-ho
Seoul National University
Shilim-dong, Kwanak-go
Seoul 151-742, ROK

日本5団体経産大臣宛て要請書

2006年3月13日

経済産業省大臣 二階俊博殿

六ヶ所再処理工場の運転が世界的核拡散問題に与える影響に関する
米国エドワード・マーキー議員ら6人の下院議員及び
韓国核問題専門家カン・ジョンミン博士の懸念に真摯に応えるまで
六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を延期するよう求める要請書

 去る1月27日、「米野党民主党のマーキー下院議員ら6議員は26日、日本原燃が使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)で計画する使用済み核燃料を使う試運転(アクティブ試験)をめぐり、核拡散上の「懸念」があるとして中止を求める書簡を日本政府に送った」との報道に際し、日本政府は、同日、内閣府、外務省、文部科学省、経済産業省の連名でこの書簡についての見解を発表しました。その後、2月14日、日本政府は、加藤良三大使名で6人の下院議員らに対し、この見解を基本とした返答を送付しました。

 見解及び大使の返答は、「六ヶ所工場においては、純粋なプルトニウム酸化物単体が存在することがないように、ウランと混合したMOX粉末(混合酸化物粉末)を生成するという技術的措置も講じられている」としていますが、これは、「テロリストたちによる核兵器の獲得」についての懸念に応えるものになっていません。強い放射能を持つ核分裂生成物から分離されてしまったウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)からプルトニウムを取り出すのは簡単であり、そのため、国際原子力機関(IAEA)保障措置用語集(2001年版)でも、MOXとプルトニウム酸化物は同じカテゴリーで扱われており、どちらも核兵器の「完成したプルトニウム金属構成要素への推定物質転換時間」は、1‐3週間とされているからです。日本政府の主張とIAEAの立場との矛盾について説明することを、エルバラダイIAEA事務局長の特別補佐官を務めたこともある外務省国際原子力協力室の小溝泰義室長は、自分は技術的専門家ではないからとして拒んでいます。

 見解及び返答は、さらに、電気事業者等が1月6日に公表した「プルトニウム利用計画」について原子力委員会が透明性の向上の観点から妥当である判断したと説明していますが、これは、マーキー下院議員らの書簡の懸念に応えるものになっていません。書簡は、日本の「余剰プルトニウムを持たないとの原則」を評価しながら、2003年末までに日本のプルトニウム保管総量が40.6トンに達している状況で「新しい再処理工場におけるさらなるプルトニウムの分離及び蓄積は、日本の方針に反するものであることは明らかです」と述べていますが、「利用計画」は、2004年末現在約43トンに達している日本の分離済みプルトニウムの利用について全く触れず、六ヶ所再処理工場で2005‐6年度に分離される予定のプルトニウムについて、MOX燃料工場の運転開始予定の2012年以降、いつか利用する意思があることを各社が宣言しているだけであり、約43トンのプルトニウムと今回発表された「計画」との関係が明らかにされていないからです。書簡が指摘している通り、高速増殖炉計画が頓挫している上に、2010年までに16‐18基の軽水炉で利用という計画が大幅に遅れ、軽水炉での利用が1基も実現していない現状からして、六ヶ所再処理工場の運転が計画通り進めば、日本の保有量は2010年末までに、約70トンの規模に達してしまいます。今後の消費計画が、すべてうまく行ったとしても、2020年の時点でこれが大きく下がらないことは、カン・ジョンミン博士らの研究も示しているところです。

 これらの点から、韓国の核問題専門家カン・ジョンミン博士の要請しているとおり、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の開始前に以下のことを行うよう要請します。

要請事項

  1. MOX混合物がなぜ純粋なプルトニウム酸化物よりも核兵器にとっての有用性が大幅に低くなると考えるのかについて詳細な技術的説明を行うこと。
  2. 六ヶ所再処理工場でプルトニウムが分離され始めた場合、電力会社などの消費計画によってそれがどのように消費されていくのかを説明するため、六ヶ所再処理工場における各年毎のプルトニウム累積貯蔵量の推移をグラフによって示すこと。
  3. 国際原子力パートナーシップ(GNEP)構想は、六ヶ所再処理工場で採用されているようなピューレックス(プルトニウム・ウラン抽出:PUREX=plutonium-uranium extraction)法という再処理方式は核拡散の危険性が高いからユーレックス・プラス(ウラン抽出プラス:UREX+=uranium extraction+ )という新しい再処理法などの開発を目指すとしているが、日本がピューレックス法を批判するGNEPを支持するとしながら、核拡散の危険性の高いそのピューレックス法による再処理を六ヶ所で開始しようとしていることの論理的矛盾について説明すること。
  4. これらについてマーキー議員らにも再度返答を送ること。

グリーン・アクション代表 アイリーン・美緒子・スミス
グリーンピース・ジャパン事務局長 星川淳
原子力資料情報室共同代表 伴英幸
原水爆禁止日本国民会議事務局長 福山真劫
ピースボート共同代表 川崎哲

連絡先
〒169-0075
東京都新宿区高田馬場3-14-3八達ビル2F
ピースボート共同代表 川崎哲

3月13日経産省の回答

カン博士及び日本側5団体の要請事項について、経産省担当者からだいたい次のような趣旨の見解が表明された。なお、1-3については、文書による回答を検討するとの約束がなされた。

  1. MOXの件は、保障措置、防護措置などの全体的措置の一部であり、1つだけ取り上げられては困る。盗まれないようにするので、盗まれた場合に、MOXと酸化プルトニウムの間で、どれだけ懸念に差が出てくるかというような質問には答えられない。盗まれないようにするから、「盗まれたら」などというのはない。
    IAEA保障措置用語集の見解については、反論はない。
    資源エネルギー庁原子力政策課企画官(国際原子力担当) 水元伸一氏
  2. ヨーロッパにあるプルトニウムを先に使うか、六ヶ所で分離されるプルトニウムを先に使うかといった判断は事業者が行うものであり、政府が指示をするようなものではない。余剰プルトニウムというのは量的概念ではない。[電気事業者が利用すると言っていれば、100トン、200トン、300トンと増えて行っても余剰と呼ばないのかとの質問に]利用計画がある限り、余剰プルトニウムではない。ただし、1万トンになっても余剰と考えないと主張していると思われると困る。
    資源エネルギー庁核燃料サイクル産業課企画調整一係長 宮本拓人氏
  3. 日本も新しい再処理技術について研究しているので、矛盾はない。
    資源エネルギー庁原子力政策課企画官(国際原子力担当) 水元伸一氏
  4. マーキー議員へは、大使の方から返答しているはずであり、要請の筋が違う。
    資源エネルギー庁原子力政策課企画官(国際原子力担当) 水元伸一氏
    (ピースボート川崎哲共同代表:我々は、返答は十分でないと考えている。)

転載元:http://kakujoho.net/rokkasho/kang_mox.html

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