世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

すまひ歌

2017-04-22 04:17:33 | 歌集・こてふらん

浅茅生の小野のかたへの青楠に銀の小栗鼠の棲むを見る月    銀香炉

月読は小萩がもとに頭を下げてかそけき紅を露にもらひぬ    銀香炉

はかなくて野に生ふよりは白神の森の小橅とならましものを    夢詩香

森に生ふ橅の思ひは青みつつさざきも棲めぬ枝に月を恋ふ    銀香炉

やすらはで捨てましものをつらぬきて悲しきまでの月を見しかな    夢詩香

久方の月の桂はやすらひてたれ見ることもなき夢の野に生ふ    銀香炉

夢見てはうつろふ色を世の中の人の心の花に染めてき    夢詩香

月読の心の花は玉に生ひとこしへの音をしじまにぞ積む    銀香炉

おしなべてものを思はぬ魚にさへ心も萌ゆる月の思ひ出    夢詩香

しろかねの鮒は歌ひて貝玉の琴のを指も慕ひつるかな    銀香炉

さらぬだに高きがゆゑに銀香炉その歌ならぬ歌な重ねそ    夢詩香

夢うつつ詩の香りをたふとびて銀の香炉は貝と閉づるも    銀香炉

鳴りとよむうづの浜辺に月を見む白き香炉は情けを焚かむ    夢詩香

星月夜都の小寺桔梗咲きほたるつどひて宴を張りぬ    銀香炉

野の夢をちさくきざみて椀に盛りままごとの飯月めしたまへ    夢詩香

久方のあめのかはづはちひさくて野に散る玉のあかしかと見る    銀香炉

まぼろしの朱きすみれは降り来たり野のなよたけを天路にさそふ   夢詩香

天の川岸辺に生ふる白菊の声も流れて琴を染むかな    銀香炉

わらはべのまなかひにすむ白玉に光そへむと歌うたふ月    夢詩香

浅茅生の野に見し夢を風語りとはの月影うすものとなる    銀香炉

こほろぎのひそむ青野のゆふべにてあかずながめしゆふづつと月    夢詩香

雨のごと流るる星をただ見つつかこつ心は子を思ふ月    銀香炉

白雪の鶴は衣を織りつつも甘き飴の実子のために積む    夢詩香

白飴は銀の小瓶に投げ入れてしじまの絹と緒で蓋をせよ    銀香炉

しじまとは月の岩戸の戸のごとき開かぬ神の口かとぞ問ふ    夢詩香

風渡る空行く雁の鳴かぬ音もくすしき神の心かと見る    銀香炉

玉光る天つ乙女は野辺に立つ楠のもとにて神の空見る    夢詩香

奥の間にとほとの笛を聞きとめてつひに去りぬるとはの浄原    銀香炉

去りて後子を恋ふ親のここちして月を求めて野辺をさまよふ    夢詩香

さまよひて散る露の香もあはしまのあはで見ぬべき光かと見る    銀香炉

霧隠るとほとの笛を吹くものは月の露をぞ玉となすらむ    夢詩香

玉藻なすなびく群雲月に映え失せし玉をぞ露にも落とす    銀香炉

手に取りてはかなくも散る白露のおく月影に泣けや雁群    夢詩香

刈り菰の乱れし草に露こもりあをきかはづの玉をやしなふ    銀香炉

夏草の茂く歌へば白鶴の声もとぎれぬ休みませ銀    夢詩香

春風の栞はさみて書をたたみ窓あけぬれば野に梅を見き    銀香炉

野に生ふと君が教へる梅の香は春の心をいかにかは染む    夢詩香

春の風のみや知るべき窓を開け君は知るべし野梅の空を    銀香炉

うすらひに冬引き絶えてまぼろしと見てし春をぞ野梅はよばむ    夢詩香

あからかに光染めむと咲く梅のこころざしをぞたれやつくりし    銀香炉

さきがけの花の香を愛でうたふ君したひつつ問ふいつしまふかと    夢詩香

窓閉ぢているかの星もまどろみぬ神の心を流せ野梅よ    銀香炉

春は来て花はしみらに咲きつもる香りを夢に注ぐよしもがな    夢詩香

眠る子の夢はかひごの時をたり親鳥のごと花や抱かむ    銀香炉

薄紅に染井吉野は群がりて弥生の空もしらみはてなむ    夢詩香

後戻りせぬ佐保姫をかきくどき袖つかみてもおしとどめむか    銀香炉

篠原をまどひありけばなよたけをはぐくむ竹にあひみてむかな    夢詩香

まことなきをのこ玉もて試みぬその裳裾だに触れられもせず    銀香炉

天伝ふ月の通ひ路知りつつもとどかぬものは人の世の風    夢詩香

月影の照らす園生にひとりゐて目も凍て果つるしのびなるかな    銀香炉

かりそめの色をやしほにとどめむとくりかへし凝る痴れ者の群れ    夢詩香

猿楽の舞衣染む花色をなよたけに請ふわらはべの帯    銀香炉

ぬばたまの髪を真葛の緒で結びそよと去りゆく月の面影    夢詩香

思ひてもかなふものかはさしこもる月の白珠神を見つれば    銀香炉

花の色はうつろひゆくもうつろはぬものこそあらめ常世辺の月    夢詩香

春ゆきつ花はかはりつひとはゆく玉の形見を目にも染めつつ    銀香炉

ときはぎの人生航路銀香炉まことを焚きていつはり焚かず    夢詩香

砂を噛む人の心に染む香を練りてまろめつ花をめぐりつ    銀香炉

花を見てたゆたふ夢に踊りつつ人はどこまで朽ち酒に酔ふ    夢詩香

明日見る宴の後の人世草風になびきて憂ひもあへず    銀香炉



    *

  3月3日から5日にかけてツイッターで行われた夢詩香と銀香炉の歌争いを再録しました。




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