読書日記と読書ノート第二部(2009年8月~2011年1月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。その日に読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

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77、濱口桂一郎『新しい労働社会』(岩波新書) -前半-

2015-07-11 07:06:24 | 読書記録
(1)日記から
・2010年2月24日(水)
熊沢誠さんの講演に触発されて、濱口桂一郎『新しい労働社会』を二度目に読み返した。一度目に読んだときには印象に残らなかったことが沢山書かれていて目を見張る思いだった。日本では職務給は採用時の条件からして実施できない。年功制にならざるをえないし、それが高度成長=技術革新時代の煩瑣な職転換に対応できた賃金システムだった。ただし、年功だけでなく、個々人について職能、つまり職務遂行能力を査定し、昇進・昇給に差をつけた。これが職務資格制度。年功+職能。この賃金体系が会社への忠誠=会社人間を生んだ。それゆえ、同一労働同一賃金の原則は持ち込めない。年功制により、若い時抑えられていた分、中高年になって労働分以上に支払われる生活給となる。ところが、このシステムは団塊世代が40~50代になった90年代に入って、企業の賃金コストを圧迫したため、成果主義が導入され、総賃金コストの抑制が図られた。このような賃金体系は男子正社員の終身雇用を前提とするものだった。それゆえ、経営不振による整理解雇に際して、雇用維持の観点から厳しい解雇要件が判例によって作られた。他方では、残業拒否や配転拒否に対する解雇を有効とするなど、個々の労働者を使用者の恣意から保護する上では不十分な法理だった。また、労働条件を決める労働政策の決定過程から労働者代表を排除する規制改革会議の動きは、国家と個人の間に中間団体をおくことを排除するもので、ポピュリズムに道を開くもの、と著者は批判する。間宮陽介は、これを新自由主義とファシズムに共通する特性だと指摘していた。


(2)ノートから
①非正規労働者の労務管理は正社員とはまったく逆。彼らは企業へのメンバーシップを有しておらず、具体的な(多くは単純な)職務に基づいて(多くは期間を定めた)雇用契約が結ばれる。したがつて、彼らには長期雇用制度も、年功賃金制も適用されないばかりか、企業別組合への加入もほとんど認められていない。
②彼らの賃金は時給であり、その水準は企業の如何を問わず外部労働市場の需給関係で決定される。
③無制限な時間外労働
三六協定を結べばいくらでも時間外労働を伸ばせる。なぜ上限時間を設定しないのか。
1)労使が決めること。労働者がおカネのためならいくらでも働くといい、使用者がおカネを出すからどこまでも働いてもらう、と言えば、そのまま認める。⇒健康を破壊し、家庭を破壊する。
2)経営不振でも首切りしないで済むためには、好調のときに残業で対応することが必要になる。人員を増やすと、不振になった時に首切りしなければならなくなる。⇒雇用維持のための残業規制なし。
判例
①時間外労働拒否→解雇。最高裁1991.11.28 解雇権の乱用ではない。
②配転・出向の拒否→解雇。最高裁1986.7.14 配転による家庭生活上の不利益は甘受すべきもの。
③正社員の解雇を回避するための有期労働者の雇い止めを容認。(1986.12.4)
批判
①裁判所は、企業が経営不振に陥って行う首切り=整理解雇には厳しい要件をつける。しかし、経営上解雇の必要があるとは思えない労働者個人の行為(残業拒否など)の懲戒解雇については規制がゆるやか。ヨーロッパの解雇規制は使用者による恣意的な解雇を認めないことに主眼がある。
②本当に必要な規制は生活との両立を守るための規制であるはず。企業から退出を迫られることなく発言することができる担保としての解雇規制であるべきではないか。


(つづく)
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