読書日記と読書ノート第二部(2009年8月~2011年1月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。その日に読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

106、網野善彦『中世の非人と遊女』(講談社学術文庫)

2015-09-07 06:56:54 | 読書記録
(1)日記から
・2010年5月6日(木)
『中世のと遊女』を読了。南北朝以前は、は蔑視・差別される存在ではなかった。死者の葬送など、”きよめ”の仕事によって、神社・仏閣の寄人や、天皇直属民となっていた。職能民、芸能民だった。聖なる存在に仕える聖なる身分だった。それが、南北朝期以降、天皇の権威失墜とともに、彼らも蔑視される存在に転化した。仏教の、死を”穢"とする思想もそれに輪をかけた。だけでなく、商業・金融業に携わる者たちも、土地所有を基軸原理とする近世社会に移って、その地位を低下させた。仏教のケガレ、エの観念が、ライ病者を嫌悪するのと同じ意識で、死牛馬の処理に当たる者を蔑視するようになった。東国の場合は肉に対する嫌悪が少ない。沖縄も。このことが被差別の分布に関係している。肉食のタブーと仏教の殺生を不可とする思想、それらと被差別民の生成との関係。興味深かかった。


(2)ノートから
①仏教思想の育んだケガレの観念によって、殺生を業とするものに対する差別観が育てられていった。
②公的な国家の成員から排除された僧侶、女性が主として商業・金融に携わった。農本主義的な国家の周縁-文明化の外部に位置づけられ、神仏、呪術的世界、いわば『未開』の世界で営まれた。このことが、その後の商業・金融業に携わる人々の社会的地位にも大きな影響を与えた。
③国守や官司の請負制を末端で支えた運輸業者、金融業者が取得した利潤・利子は、神仏など世俗の世界を超えた世界との関わりで正当化され、その担い手は神仏に直属する神人、寄人、山伏、山僧であり、神仏にささげる『初穂』『上分』が資本だった。
④東国では、商人・金融業者は世俗的な主従関係、土地制度の中に位置づけられていた。
⑤博打、双六の徒。最初は神意を占う職農民に位置づけられたが、やがて人の意志の及ばない世界を業とする悪党とみなされるようになった。悪党の出現は流通・貨幣経済の社会への浸透による。
⑥一向宗、キリシタンを弾圧して成立した徳川農本主義国家では、商業・金融業の社会的地位が低下し、、、博徒、遊女が視されていった。
⑦職能民とは…専門とする技能・芸能を持って、神仏や天皇に奉仕し、その代わりに平民が負担する年貢・公事の負担を免れていた。は清目を芸能とする職人身分だった。

(了)


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