信濃民俗ノート

長野県にかかわる民俗の記録を集めました

『伊那民俗』第105号

2016-06-20 20:42:00 | 雑誌情報

2016年6月15日発行
柳田國男記念伊那民俗学研究所(〒395-0034飯田市追手町2-655飯田市美術博物館気付)

 

餅投げ、ウチマキが意味するもの-下伊那南部の「オクヨ」を手がかりに-・・・・・・今井 啓

下伊那南部の方言「オクヨ」
『長野県方言辞典』(2010)の109ページに、「おくよ」という項目がある。説明はごく短く、「棟上げ餅。[阿南]」と素っ気ない。上棟式の際に餅を撒くしきたりは全国的だが、この時の餅をオクヨと呼ぶのは珍しいだろう。柳田国男が監修した『綜合日本民俗語彙』(1956)にもこの語は見当たらない。飯田下伊那の他の地域では「投げ餅」という呼び方が一般的である。
 『阿南町誌』下巻(1987)の薮原繁里氏の調査によると、「棟上げ餅」を意味する方言は、恩田(阿智村浪合)、吉岡(下條村)、中谷、川田、和合、新野(以上阿南町)がいずれも「ナゲモチ」で、売木(売木村)の古い言葉としてのみ「オクヨ」が記載されている。『新野民俗誌稿』(1979)でも、新野の建前(上棟式)で投げる餅の名は「俵餅」もしくは「ナゲモチ」とある。
 しかし筆者が聞き取りした限りでは、「オクヨ」は売木村のほか阿南町新野や天龍村大河内で、今も生きた言葉として使われている。また上棟式に限ったものではなく、行事や祭礼で撒かれる餅、もしくは餅撒きのことを総じて「オクヨ」とか「オクヨナゲ」と呼んでいる。売木村では、春分の日の太田稲荷神社祭典(「お練り祭り」で知られる)や白鳥神社祭典(4月29日)の際に餅投げが行われ、これをオクヨと呼ぶ。

 

阿智村伍和丸山の豆腐作り・・・・・・熊谷文世

民俗学入門講座第Ⅳ期 柳田国男の民俗学・その仮説から学ぶ 第6回 祖霊から穀霊へ 福田所長講演要旨・・・・・・(今井啓)

報告 2016年度総会、記念講演会

 



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