議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

廃棄物の定義[2]

2005年12月08日 17時41分02秒 | 余談コーナー
廃棄物の定義問題で、これまでに最も大きな話題を集めたのは、処理費を払っている場合でも、廃棄物ではないという判断がされたという下記の判例でしょう。

水戸木くず判決

この判決は建設リサイクル法なども引用しており興味深いのですが、それはとりあえずおいとくとしまして、処理費の支払いに関してこの判決文の最後のほうの、「4 本件木材の取引価値の有無及び事業者の意思について」の「(2) 有償性について」に注目してください。

ここでは、総合判断説のひとつの判断材料である取引価値の有無について、「再生利用を予定する物の取引価値の有無ないしはこれに対する事業者の意思内容を判断するに際しては,有償により受け入れられたか否かという形式的な基準ではなく,当該物の取引が,排出業者ないし受入れ業者にとって,それぞれの当該物に関連する一連の経済活動の中で価値ないし利益があると判断されているか否かを実質的・個別的に検討する必要がある」としています。

"一連の経済活動"というのがポイントとなりそうです。そして、具体的には、

「被告人会社Aについてみると,被告人会社Aは,前記第2の2(1)のとおりの設備を持つ牛久工場において,木材に同(2)のとおりのような工作を加えてチップを製造してこれを売却しており,本件木材はまさにその原料となるのであるから,被告人会社Aにとって本件木材は取引価値があると認められる。また,甲社外4社にとっても,前記第2の3のとおり,牛久工場以外に本件木材を持ち込んでいれば処分料金を支払う必要,ないしは,より高額の処分料金を支払う必要があったのであるから,本件木材を牛久工場に持ち込んだことによりその支払分や差額分について利益を受けたことになり,かような利益を享受することができたのは,本件木材に価値が認められることの裏返しということができる。加えて,乙社においては,前記第2の3(2)のとおり,再生利用可能な角材については木くずの受入れ料金が安く設定されており,このことからしても,乙社がかような角材についてはその排出(牛久工場への搬入)段階において利益(前記第2の3(2)5段落目参照)を得られると判断していたことが推測される。」

つまり、焼却や埋め立てなどに比べ、再生という方法を取ることにより価値が上がるわけです。その結果として処理費がゼロになるところまで価値が上がらなかったとしても、焼却や埋め立てより処理費の減少につながるのであれば、そのものには価値があると認めるべきである、といっているようです。


実際、副産物を他社ユーザーに納入しつつも、それを使用するために必要な経費の補助をしている例は他にもいくつか聞いたことがあります。その場合の副産物の品質管理はしっかりしていますし、ユーザーは納入品のランダムサンプリングによる品質チェックを行い、問題が発生するとクレームが出されます。製品の品質に直接影響が及ぶので、当然のことです。このような例について廃棄物ではないと考えるのは、廃棄物処理法の目的(生活環境の保全等)にまったく反しないと考えられるのではないでしょうか。

そもそも、不法投棄するならば品質管理などするわけありません。品質管理をするならば、不法投棄の意思は基本的にない(偽装もあり得ますが)と考えるべきでしょう。廃棄物処理法は、品質管理前までの規制で十分です。


ただ、この件については、日経エコロジー2004年8月号で特集が組まれています。環境省もこの判決について反論(?)しているので、次回これについても考えてみます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 一つの契約書による複数の事... | トップ | 廃棄物の定義[3] »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

余談コーナー」カテゴリの最新記事