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★望郷

2006-11-18 | 映画30年代
「ペペルモコよっ!ペペルモコっ!」
何事かと振り向くと、70歳を超える小さなおばあさんが叫んでいた。おばあさんは、孫のお嫁さんらしき女性に、嬉しそうに棚にあった「望郷」のビデオの説明を始めた。その時一緒にいたRちゃんと私は、顔を合わせそっと微笑んだ。そのおばあちゃんが少女のように可愛らしくみえたからだ。
これは、数年前、図書館の無料ビデオ貸し出しコーナーで遭遇したちょっとした事件です。このおばあちゃんにとってジャン.ギャバン演じるペペ.ル.モコは永遠のヒーローだったのでしょう。

異国の地アルジェ港が見下ろせるカスバという街が舞台。
カスバは無法地帯で人種のるつぼ。町並みは迷路のよう。テラスや屋根で繋がっているので、自在に逃げる事が出来る。そのうえ、ここの住人はすねに傷持つような人たちだから、連盟して警察の手入れなどがあると一瞬のうちに知れ渡ってしまう。そんな街、カスバ。ただしこのカスバの街から一歩でも外に出ようものなら、警察に捕らえられてしまう。
ペペは、パリから逃亡してきた名の知れた大泥棒。カスバでは人気者。彼を捕まえようとしているスリマン刑事の言葉を借りれば「仲間には笑顔。敵にはナイフ。素敵でしょう?」
ただ、ペペはカスバの街に守られてはいるが、何年も同じ場所に縛られ飽き飽きしている。
そんな時、観光客の女ギャビーが現れる。パリ育ちの宝石のような女、地下鉄メトロの臭いのする女、ギャビー。そして、密告による仲間の死。密告者の処刑。ペペはカスバが何もかも嫌になって、パリへの望郷の念が爆発する!そして。。。

ワンコインDVDいわゆる500円DVDを本屋さんで買って、思い出したよう見るんですが、何回見ても面白い!ねずみみたいな風体のスリマン刑事とペペの、気の聞いた会話。捕らえる側と捕われる側の信頼関係さえ感じる頭脳と感情の攻防戦。ワクワクします!そして、ギャビーの贅沢で綺麗な事!宝石、ネックレス、ブレスレット、イヤリングがキラキラ。絹のブラウスがテカテカ。丹念に化粧された陶器のような肌、深紅の口紅、細いアーチを描く眉。洒落た受け答え。まさに宝石のような女。その彼女がパリの話をすると。。。それまでペペは宝石を盗もうか?なんて思ってるんだけど、もう駄目。その時のジャン.ギャバン演じるペペのキラキラ夢見るような瞳は何とも言えないです。そうそう、ギャビー、ペペ、カスバの女の三角関係もいい!カスバの女は切ない。ぺぺは、彼女が嫌いな訳じゃないけど、カスバの女はカスバの女なのだ(何言ってるんだろ?)
どうしても涙が出ちゃうのは、ペペの仲間カルロスのかみさんが唄うシャンソン。カルロスが帰ってこないので心配しているとペペがやって来る。このかみさんもパリに居たシャンソン歌手。若い頃は売れたらしい。今は太って醜くなったかみさんは「つらいときは昔の写真(驚く程綺麗)を鏡のように見て、あの頃を思い出して唄うの」とレコードに針を落とし涙を浮かべながら唄うのですよ!歌詞がまたいい!アメリカを夢見て移民したパリ人が、貧乏だけど呑気で幸せだったパリ時代を懐かしむ歌。
ぺぺじゃなくても、って私も望郷の念が彷佛。ああ、カスバを出たい!なんて思うのだった。何だかとりとめがなくなってきたのでこの辺で。。。

後、この映画の良い所は重くならない事。ハッピーエンドでは決してないのに、涙なんか出ちゃったりするのに、まさに望郷の念を感じちゃったりするのに、楽しかった気分が残る。何でなんだろ?30年代の映画ってそうなのかな?時を超えて素敵な映画を見る事が出来る現在って幸せ。贅沢いうなら名画座が復活すればいいのになって思ちゃいます。
(1937/仏 監督:ジュリアン.デュウィウィエ)


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