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結局は中国を利するトランプの素人外交

2017-05-16 13:46:01 | 米国大統領

結局は中国を利するトランプの素人外交

This Isn't Realpolitik. This Is Amateur Hour.

2017年5月12日(金)10時00分   Newsweek  スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授)
 

先月末に就任100日を迎えたトランプ大統領だが外交政策の舵取りはいまだに素人レベル

<強気の発言はどこへやら、右往左往する素人集団のトランプ政権。一貫性を欠く政策に同盟国の信頼は揺ら

ぐ一方だ>

ドナルド・トランプ米大統領がフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待した。ドゥテルテといえ

ば、麻薬戦争で殺人も辞さず、「犯罪者」を自分の手で殺したと豪語するなど、人権侵害が問題視されている人物だ。


それでもアメリカの重要な同盟国の指導者には違いない。トランプは(歴代の米大統領と同様)倫理的な懸念よりも戦

略的インセンティブを優先し、アジア・太平洋という極めて重要な地域で現実的な政策を推進しているにすぎない

――。そうした見方もあるかもしれない。なるほど、表面的には現実政治の典型に見えなくもない。


しかしそうした見方は現実とは懸け離れている。リアリスト(現実主義者)にとって、アメリカの安全保障のカギは、南北

アメリカ大陸で地政学的優位を堅持し、競合国がヨーロッパやアジアの要所を支配したり、ペルシャ湾周辺の主要なエ

ネルギー資源を牛耳ったりしないようにすることだ。アメリカを除けば、世界で現在「地域覇権国」となる可能性がある

国はただ1つ――中国だ。


従って、リアリストにとってアジアにおける最優先課題は、中国がアジアでの優位を強化し、最終的には周辺国にアメリ

カとの安保協力を破棄させるのを阻止することだろう。協力を破棄されたら、アメリカは西太平洋や東南アジアで大規

模な軍事プレゼンスを維持できず、中国が事実上の地域覇権国になるはずだ。


中国はやがて今のアメリカのように他の地域でも意のままに力を誇示するようになり、南北アメリカでも安保協力を確

立しようとさえするかもしれない。


当然、アジアにおける現実主義的アプローチは、アメリカが中国の動向に目を光らせ、時にはアジアの協力国と微妙な

均衡の上に巧みに連携していくことを必要とする。これは難題で、一貫性と慎重な判断と賢明な外交、それに信頼でき

る軍事力が必要だ。トランプ政権になっても軍事力はまだ十分残っているが、それ以外の資質は十分とはいえない。


不信感を募らせる同盟国

トランプのこれまでの言動を振り返ってみよう。まず就任前、祝意を伝える台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統から

の電話を受けて、台湾を中国の一部と見なす「一つの中国」政策の見直しを示唆したが、その後に撤回。

就任4日目にはTPP(環太平洋経済連携協定)離脱を指示する大統領令に署名し、アジアの多くの国々との関係強化

につながる重要な協定を台無しに。合意に尽力した各国指導者たちの国内での支持や影響力に打撃を与えた。


オーストラリアのマルコム・ターンブル首相との電話会談では、難民受け入れをめぐり激怒し、一方的に電話を切った

と報じられた。これを受けて、アメリカとの長年の絆はオーストラリアにとってメリットがあるのか、との疑念に拍車が掛

かった。


朝鮮半島でもトランプは重要な同盟国との関係を危うくしている。現在配備中のTHAAD(高高度防衛ミサイル)の費用

を韓国が負担すべきと主張し、米韓の自由貿易協定(FTA)の再交渉もしくは停止を示唆したのだ。米国防総省が慌て

てTHAADの費用は合意どおりアメリカが負担すると訂正したものの、これではワシントンの一貫性や判断に対する同

盟国の信頼が強化できるはずがない。


トランプは北朝鮮との戦争の可能性も高めている(戦争になれば韓国への影響は破滅的だ)が、強硬姿勢を見せたと

思いきやなぜか実現すれば「光栄だ」と金正恩と会談する意向を示唆。自国の空母の所在を間違えた後だけに、アメ

リカの指導力に韓国側が懐疑的になるのも無理はないだろう。


問題はそれだけにとどまらない。トランプは中国をライバル、その台頭を抑止すべき相手と考えるどころか、中国にこ

びている。対北朝鮮政策などで支援を取り付けるのが目当てだ。


(トランプのビジネス上の利益ではなく)アメリカの国益が中国と一致するなら中国と協力して一向に構わないが、そう

したアプローチが中国の周辺国の疑念を呼ぶのは必至だ。中国がアジアのリーダーだという認識を強める結果にもな

る。実際にそうなったら、アジアのどの国がアメリカとの密な関係を維持したがるというのか。


ドゥテルテに衝動的に接近したこともトランプ政権の素人ぶりを露呈している。重要な同盟国との関係改善を試みたと

言えなくもないが、問題はトランプが誰にも相談せず、ドゥテルテ本人の意向も確認しないまま、招待を公表した点だ。


政治のプロなら承知しているとおり、ホワイトハウスに招待するというのは一大事。入念な下調べをし、当事者双方が

合意した上で公表するのが鉄則だ。あいにくドゥテルテは忙し過ぎて招待を受けられないかもしれないと発言、トランプ

の面目は丸つぶれになった。

 

まるでドタバタ喜劇のよう

言うまでもなく、こうした手法はおよそ外交政策の現実主義とは対極にある。現実主義者にとって国際政治は極めて

重要な問題であり、カギを握る地域と未来のライバルが絡んでいる場合はなおさらだ。現実主義は好ましいパワーバ

ランスを保ち、不可欠な同盟を巧みに管理し、何より、敵も味方もアメリカの行動に見合った行動が取れるようにするこ

とに重点を置く。


このことを指導者が承知している国であれば、人員不足の国務省や適任でない娘のイバンカやその夫のジャレッド・ク

シュナーを当てにしたり、重要な外交関係を検閲なしのツイート任せにしたりはしないはずだ。トランプ流の外交政策

は連続コメディーや喜劇オペラのネタとしては最高だろうが、アメリカにとっては破滅的であると同時に屈辱的だ。


アメリカは最悪の道を進んでいるようだ。トランプは次第に外交政策のエスタブリッシュメントに捕まり、吸収され、封じ

込められて、選挙運動中に公約した過激な改革は、マイケル・フリンやセバスチャン・ゴーカといった無能な大統領補

佐官らともども徐々にお払い箱にされている。


その結果どうなるか。アメリカは過去四半世紀の大半と同じように、野心的過ぎる外交政策を推進し、引き続き世界の

出来事のほとんどを管理しようとするだろう。ただし舵取り役はプロではなく、経験不足で衝動的で適性に欠ける人物

だ。


この不幸な状況は筆者のような職業の人間には題材の宝庫だが、アメリカにとってはプラスにならず、現実主義には

程遠い。そしてアメリカの不幸を願う連中にとっては思う壺だろう。

From Foreign Policy Magazine

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