トランプ氏、北朝鮮問題で強硬発言 自ら窮地に陥る恐れも
2017.04.26 Wed posted at 11:53 JST CNN
(CNN) 米国のトランプ大統領が北朝鮮への強硬姿勢を一段と鮮明にしている。核武装を進める同国の現状は容認で
きないと強調して同国に対する制裁強化を訴える一方、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に対しても公然と非
難の言葉を口にする。
ただこうした動きは北朝鮮から挑発と受け取られ、かえって事態を悪化させる可能性がある。トランプ大統領の政治的
な立場も危うくしかねないとして、専門家が警鐘を鳴らしている。
「我々が話し合いたいと思うかどうかを問わず、これは世界にとって現実の脅威だ」。24日に開かれた国連安全保障理
事会理事国大使との昼食会で、トランプ大統領はそう力説。「北朝鮮は大きな世界問題だ。我々は最終的にその問題を
解決しなければならない。何十年もの間目をつむってきたが、今こそこの問題を解決すべき時だ」との持論を展開した。
この発言と前後して、米軍は北朝鮮に対して軍事力を見せつける狙いで、原子力潜水艦「ミシガン」を韓国に寄港させ
た。ホワイトハウスは26日、上院議員を招集し、政権高官が北朝鮮の脅威について説明する。米政府がこうした措置を
講じるのは異例。
トランプ大統領はまた、保守系メディアを集めたレセプションの席上、金委員長について、自分で見せたがっているほど
強い指導者だとは思わないとの認識を示し、「(金委員長が)自分で言うほど強いとは、私には全く確信が持てない」と発
言した。
北朝鮮は25日で朝鮮人民軍の創設から85年を迎え、大規模な実弾砲撃演習を実施していた。
トランプ大統領が繰り出す強硬発言について、評論家からは、北朝鮮を巡って自らを窮地に立たせるものであり、政治
的に危険な立場に追い込まれかねないと危惧する声が出ている。
「これまであらゆる圧力や瀬戸際政策、軍事的手段や戦術、駆け引きを展開しておいて、今度は言葉で北朝鮮の指導
者を直接的に罵倒するのは、再びスズメバチの巣をつつくようなものだ」。核廃絶を訴える団体「プラウシェアーズ財団」
のポール・キャロル氏はそう解説する。
「このような言葉で緊張を高めるだけでなく、同地域に軍装備を送り込んでおいて、北朝鮮が何らかの対話再開を模索
するための出口や抜け道がない状態にしてしまえば、悪い事態が起きるだろう」とキャロル氏は言う。
中国・北京にある国際政策研究機関の研究員、トン・チャオ氏も、このような形で金委員長を追い詰めれば、挑発するこ
とになりかねないと警告する。
「(米大統領が)弱い指導者と決めつけたのは、私の記憶ではこれが初めてだと思う。この発言は、北朝鮮を挑発しかね
ない。弱いと言われれば、もっと強く見せようとして増長するばかりだ」。チャオ氏はCNNにそう語った。
米原子力潜水艦ミシガンは25日、韓国・釜山に入港した。同艦は巡航ミサイル「トマホーク」を154発まで装備でき、海
軍SEALなどの66人までの特殊部隊を密かに展開させることもできる。
チャオ氏は言う。「これは真の警告だと思う。同潜水艦は巡航ミサイル150発あまりを搭載している。その攻撃力は強大
だ」「北朝鮮がどんな反応を示すかは予測できない」
米軍の空母「カールビンソン」は韓国へ向かっている。韓国軍と米海軍の駆逐艦は25日、黄海で合同軍事演習を開始
した。
軍事展開の一方で、ホワイトハウスは26日午後、上院議員全員を招集し、北朝鮮問題について説明する。
「事はさらに重大だ。米国は、北朝鮮が米本土に対する核能力を手に入れようとする決定的な岐路に面しているとの認
識だ」とチャオ氏は解説している。
説明会に出席できるのは上院議員のみ。説明はティラーソン国務長官と、マティス国防長官、ダンフォード統合参謀本
部議長が行う。
米国と東アジアの主要国との北朝鮮を巡る外交協議も活発化している。25日には東京で日本、韓国、米国の代表者会
合が開かれた。トランプ大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席は24日夜、過去数週間で2度目となる電話会
談を行っている。