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<資料>【水の安全】非常事態宣言まで出たフリント市の水道汚染は「構造的人災」

2017-07-11 06:02:55 | 資料

非常事態宣言まで出たフリント市の水道汚染は「構造的人災」

2016年01月28日(木)16時00分   Newsweek
 

フリント市の住民には飲料水が配給されているが、安全な水道水が復旧する目途は立っていない 

 ミシガン州フリント市で、水道水が高濃度の鉛で汚染されて健康被害まで確認され、オバマ大統領が「非常事態」を宣言する事態に

なっています。一体、何が起きているのでしょうか?


 フリント市は、デトロイト市から北西に50キロ離れた中規模都市で、自動車産業の拠点として有名でした。最盛期は60~70年代で、

この頃の人口は20万人弱に達していたのですが、自動車産業の衰退とともに人口は減少して現在は9万9000人へと半減していま

す。


 また一時期の高福祉政策の結果として流入した貧困層のために、市の人口に占める貧困線以下の住民は26%に及んでいます。ま

た人種ということではアフリカ系が57%、ヒスパニックが4%、非ヒスパニックの白人が36%となっています。こうした状況を受けて、市

の財政は破綻し、現在は「財政非常事態」と認定されて「管財人の管理下」つまり、事実上はミシガン州の管理下に置かれています。


 このフリント市の盛衰に関しては、同市の出身である左派のドキュメンタリー映画監督であるマイケル・ムーアが出世作である『ロ

ジャー・アンド・ミー』(1989年)で描き出しています。GMがリストラで利益を確保している一方で、フリントのコミュニティは根本から破壊

されたということを、当時のGMのロジャー・スミス会長に「アポなし取材」で対決するという「ストーリー」がタイトルの由来です。


 ちなみに、ムーア監督は日本でも有名で人気がありますが、、そもそもデトロイト、そしてフリントの自動車産業を「破壊」したのは日本

車であることから、根っこの部分では日本に対しては複雑な感情を持ち続けているようです。


 そのフリント市で、水道水の「鉛汚染」が発覚したのです。鉛は重金属の中でも人体に深刻なダメージを及ぼすことで有名で、赤血球

の重要な成分であるヘモグロビンの生成を阻害します。特に子どもの場合、長期的には神経障害などの重篤な症状を招く恐れがあり

ます。

 その鉛の含有率ですが、飲料水の場合に一般的な安全基準としては10ppb(ppmの千分の一)とされています。

日本でも安全基準は10ppbです。ちなみにアメリカの規制値は15ppbとなっています。


 ワシントン・ポスト紙などの報道によれば、ミシガン州のトロイ市では1.1ppb、デトロイトの平均も2.3ppbに収まっている一方で、フリ

ント市では、全市のサンプルから上位の極端な10%を除外した90%の総平均でも27ppbと危険な値を示しているのです。


 では、その危険な上位10%ではどうかというと、バージニア工科大学が検査した家庭の水道水からは158ppb、市の調査員のデー

タでは、ある家庭で397ppbを検出しています。また、このバージニア工科大学の調査チームによれば、158というのは「上澄みの数

値」であって、一定量を溜めておいて良く混ぜて検査したケースでは、200あるいは397、さらに最悪のサンプルからは1万3000ppb

などという極端な数字も得られているというのです。


 健康被害も出始めています。4~13歳という子供たちの中には鉛中毒特有の皮膚炎が発見されており、中長期的には神経障害など

の深刻な症状へ移行することが懸念されています。成人の中には頭髪が抜けるなどの症状も出ています。


 先進国のアメリカで全く信じられない話ですが、現時点では以下のような経緯があると理解されています。


 フリント市の上水道は、長年デトロイト市から供給を受けてきました。ですが、デトロイトを含む広域圏が五大湖の1つであるヒューロン

湖から取水してより効率的な上水道供給をするための「新公社」を設立する際に、フリントは利用料が払えないということになったので

す。


 それはフリント市民や、市民の選んだ行政の判断ではありませんでした。破綻自治体のフリントの場合は、管財人の判断としてそう

なったのです。デトロイトへの給水は新公社に移行したのですが、支払い能力のないフリントはその新公社からの給水を拒否され、他

に選択肢のなくなったフリントは、2014年4月からは市内を流れる「フリント川」から上水道の取水を開始しました。


 この「フリント川」の水質が問題でした。と言っても、川の水が鉛で汚染されていたのではありません。そうではなくて、質の悪い水を上

水道として流したために、老朽化していた市内の「鉛水道管」が急速なペースで腐食され、その鉛が水道水に溶け出したのです。


 汚染源は、長年のGM工場からの硫酸塩を含んだ排水が原因という説と、多雪地帯のために融雪剤として使われた塩が大量に流れ

こんだためという二説がありますが、いずれにしても、質の悪い水源へスイッチしたための現象ということはほぼ立証されています。


 この問題は、直ちに激しい政争を巻き起こしています。


民主党系の世論はカンカンです。例えば、マイケル・ムーア監督は自ら抗議行動の先頭に立って「リック・スナイダー知事(共和党)の逮

捕」を要求しています。辞任ではなく逮捕というのは、知事自身が「フリント市の財政を管財人の管理下に置くことで、新公社からの給水

ができなくした張本人」という見方が成立するからです。


 ムーア監督は「これは公害事件ではなく、人種差別であり、人種へ向けたジェノサイドだ」と語気を荒げていますが、そうした抗議の声

は、図らずも「自分は社会民主主義者」だとして「格差是正」の看板を掲げるバーニー・サンダース大統領候補への支持と重なりつつあ

るとも言えます。


 一方の共和党は知事を擁護する立場です。「問題は深刻だが、発覚後の知事の行動は立派。責任があるのはミシガン州の硬直化し

た官僚主義」というのが共和党の立場です。


 そんな中で、現在は2つの大きな訴訟が成立しつつあります。1つ目は住民がミシガン州を相手に訴える民事訴訟です。2つ目はミシ

ガン州政に違法行為があった可能性に関する刑事訴追です。アメリカの司法システムでは、ミシガン州の州検事というのは刑事事件

の起訴を行う一方で、州の法的代理人を兼ねます。ということは、州検事は民事訴訟では州政府を防衛しつつ、刑事訴訟では州政府

の起訴を検討するという「利害相反」に立ち至ります。そこで2つ目の刑事訴追に関しては、常設の州検事ではない「特別検察官」を設

置して対応することになりました。


 では、現在の市民生活はどうなっているのかというと、全国の民間企業から何百万という単位で「ミネラル・ウォーターの無償提供」が

されているので、当面の飲み水には困らない状況です。ですが、「フリント川の汚染水」で極端に腐食の進んだ「市内に張り巡らされた

水道の鉛管」を交換するような財源はどこにもない中で、安心して飲める水道水が戻ってくるというメドは立っていません。


冷泉彰彦(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)



ミシガン州フリントで起きたこと。 アメリカ化学会の学会誌(website)より。

2016-06-13

 

水道水への高濃度の鉛の混入や茶色く濁った水道水などで政治問題にまで発展したフリント市の上水道ですが、デトロイト市の上水道

では使っていた、たった1つの化学品をフリント市上水道施設で使わなかった事が、これら全ての原因であることが分かっています。 

それが、リン酸塩です。

 

フリント市がコスト削減のため、今までデトロイト市から引いていた(買っていた)上水道を、自前で処理すべくフリント川から引いたのが

事の始まり。 

 

日本で報道されている記事を見ると、“フリント川はすごく汚染されており、それが原因で上水道に鉛が混入した” という、“汚染された

フリント川”の上水道への使用が鉛混入の原因としている記事がほとんどのようです。

 

そして、この問題はほとんどが、汚染された河川を水道水に利用した事、フリント市の黒人比率の高さ、行政の対応の遅さ、といった観

点から、科学的視点よりも、環境的人権問題、さらには人種差別として語られることがはるかに多いと思います。

 

フリント市上水道で起こった事をもう少し化学的に見ると、違う事実が見えてきます。

 

語られていない、科学的(化学的)な視点:

鉛のパイプが上水道に使われているのは、フリント市だけではありません。米国東海岸の都市、ボストンやワシントンD.C.には、何十

年も使用されている多くの鉛のパイプ(あるいは鉛を含んだパイプ) が今も残っています。 

 

このようなパイプは、ミネラル層(mineral crust)がパイプの内側に堆積していて、そのミネラル層がある種、鉛の水道への溶出を防

ぐ役割をしています。 そしてこのような都市では、鉛が上水道に溶け出さないように、上水道の水質をコントロールしています。


その1:リン酸塩の使用

リン酸は鉛や鉄と反応し、その表面に不動態を形成する(passivation) 性質があり、これがその金属表面の酸化を防いでいます。デ

トロイト市を含む多くの古い鉛パイプが残る都市では、リン酸塩を水道水に加え、鉛(鉄などの金属を含む)の水道水への溶出を防いで

います。フリント市の水道施設では、リン酸塩を加えていませんでした。


その2:pHのコントロール

リン酸塩のみならず、pHのコントロールも鉛の溶出防止には重要な働きをしています。 アルカリ性pHは鉛の溶出を防ぎ、酸性pHは

鉛の溶出を促します。例えばボストン市では、上水道のpHを年間を通して 9.6 位にコントロールしています。 フリント市では、水道の

pHが1年を通して下がり続けており、pHがコントロールされていなかったことが伺えます。

 

実際にフリント市で起こったこと:

2015年4月25日に水道水をデトロイト市から切り替えて間もなく、問題が出てきました。はじめに、赤っぽい色の水ととても不快な匂い

が報告されました。これは、リン酸塩を水道水に加えていないため、鉄や鉛の水道パイプの内側にあるミネラル層が分解され、水道水

と共に出て来たことが考えられます。

 

2015年の8月と9月に、フリント市は大腸菌の水道水への混入を認め、各家庭で煮沸殺菌するように警告を出しました。これは、水道

水の2次感染を防ぐために加えられている残留塩素が、ミネラル層が分解された後の鉄や鉛の水道パイプと反応して消費され、その

役割を果たさなくなったためと考えられます。

 

こうして、ミネラル層が分解された鉛の水道パイプが、水道水への非常に高濃度の鉛の溶出へと繋がって行きました。

 

下記 Website の要約になっています。

アメリカ化学会の学会誌に掲載された、“なぜ鉛がフリント水道水に混入したのか”

How Lead Ended Up In Flint’s Tap Water | February 15, 2016 Issue - Vol. 94 Issue 7 | Chemical & Engineering News

“Most important, the treated Flint River water lacked one chemical that the treated Detroit water had: phosphate.” 
- 最も重要なことは、フリント上水道には、デトロイト上水道には含まれていた化学品が1つ欠けていた事です。それがリン酸です。


“The entire Flint water crisis could have been avoided if the city had just added orthophosphate”
- 全てのフリント水道クライシスは、もしフリント市がリン酸塩を加えてさえすれば防ぐことが出来たであろう。


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