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米中戦争の偶発リスク、情勢楽観は禁物 偶発的衝突の危険性は日に日に高まっている

2016-08-30 12:27:19 | 戦争・内戦・紛争・クーデター・軍事介入・衝突・暴動・デモ

米中戦争の偶発リスク、情勢楽観は禁物

2016 年 8 月 17 日 16:00  THE WALL STREET JOURNAL

偶発的衝突の危険性は日に日に高まっている

青島港に入港する米軍艦を迎え入れる中国の軍楽隊(8日)

 【上海】米国と中国が最後に戦火を交えたのは1950年に始まった朝鮮戦争で、両国は休戦に至るまで戦いを続けた。

 その後、1950年代に冷戦が深刻化したことで、米中は再び衝突に近づいた。台湾を巡る緊張が高まるにつれ、当時のアイゼンハ

ワー大統領は繰り返し、「レッドチャイナ(赤色中国)」に対して核の脅威をちらつかせた。

  現在、米中間には途方もなく大きな利害が絡み合っているため、多くの人は2つの大国が武力衝突を起こすことはないと決めつけて

いる。両国はお互いが 最大の貿易相手国だ。軍事衝突が起これば膨大な通商の流れのみならず、学生交流や科学分野での協力、

テクノロジー面での共同プロジェクトなど、数え切れな いほどのことが脅かされるだろう。

そこでは世界1位と2位の経済大国と、それぞれの国民の運命と繁栄が切り離せないほど強く結びついているのだ。


米中戦争「あり得ないと考えることはできない」

 とはいえ、中国が南シナ海と東シナ海で力を誇示する中、空か海で偶発的な衝突が発生する危険性は日に日に高まっている。

 米国のシンクタンク、ランド研究所の最新調査リポートは、こうした危機が誘発する米中戦争を「あり得ないと考えることはできない」と

指摘する。

  同リポートは、暴力は一瞬で火が付く恐れがあると警告している。なぜなら、両国とも精密誘導兵器を配備し、サイバー技術と宇宙開

発技術も持っているため、 中国が陸上に設置したミサイル発射台や米軍の空母など、相手側の軍事資産に壊滅的な打撃を与えるこ

とができるからだ。このため、両国には「使わなければや られる」という判断の一環として、最初に大規模な攻撃を仕掛ける強い動機

があるのだ。

 米陸軍の支援を受けて行われたランド研究所の調査 では、いったん制御が効かなくなれば、核兵器の利用までは行かないものの、

戦闘が長引く可能性が示唆されている。両国は軍事、産業、人口動態の面で、大き な損失を吸収しながらも前進するリソースを保有し

ている。朝鮮戦争のように、明確な勝者が出ない可能性もある。

 ランド研究所はリポートで、米中政府が「激しく、長く、制御できなくて壊滅的な、それでいて決着のつかない紛争の可能性を熟慮する

必要」があると指摘している。


仲裁裁判決で高圧的態度を強化

 国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が先月下した判決に中国が示した反抗的な態度を 見ると、これは気がかりだ。

仲裁裁判所の仲裁人(判事に相当)らは、南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶという中国政府の主張を退けたばかりか、軍用に転換可

能な滑走路が建設された人工島の建設を非難した。こうした人工島は、ベトナムやフィリピンなど領有権を主張する他の国々を脅かし

ている

中国は後退するどころか高圧的な戦略を強化している。同国はフィリピンから実質的に奪い取り、実効支配を強めているスカボロー礁

の上空に爆撃機を飛ばし、ロシアとの合同軍事演習を発表し、日本と領有権を争う海域に多数の公船を派遣した。

 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は人工島に格納庫が突然現れたことを示す衛星写真を公開した。これは明らかに空

からの攻撃への抵抗力を強化するものだ。

 今のところ、中国人民解放軍が人工島に軍用機を駐機させた形跡はない。

  来月には中国が初めて主催する20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる。西側専門家の一部は、中国がそれを台無しにしないよ

う時間稼ぎをしている可能 性を指摘。G20終了後、米大統領選(11月)までには、中国がさらに激しい動きを起こす可能性に注意すべ

きだとしている。


控えめな米国、勢いづく中国

 仲裁裁判所の判決に対する米政府の対応は明らかに抑制されている。米政府当局者は、「航行の自由」作戦の一環として人工島の

周辺海域に軍艦を派遣するといった挑発的な発言や行動を控えれば、次第に中国政府がスムーズに判決に従う方法を見つけやすくな

ると期待しているようだ。

  米国にとって、上手にバランスを取りながら懐柔と決意を表明することが極めて重要になる。ランド研究所のリポートが主張したよう

に、米中戦争は、周到に計 画された攻撃よりも、東アジアの同盟国を守る米国の意志を中国が読み誤ったり、

米国が同盟国に行きすぎた行為を促したりする結果起こる可能性の方が高い。

  実際、外交政策で一流の現実主義者である中国の指導者らは、今や勇気付けられたと感じているかもしれない。人工島は既成事実

化され、仲裁裁判所には判決を 執行する力がない。東南アジアは沈黙を保っている。欧州は相変わらずもがいており、中国からの投

資が活性化しないかと気をもんでいる。

 米ダートマス大学で東アジア情勢を専門とするジェニファー・リンド氏は「どの国も(中国を)押し返していない」と話す。リンド氏は中国

の戦略が成功してきたと考えている。「中国はより広い領域を支配下に置き、以前よりも影響力を増している」

 困ったことに、ランド研究所のリポートでは中国の軍事戦略家たちが自信を深め、短期集中型の勝ち目のある戦争に打って出る可能

性があると指摘されている。


見込み薄い「コミュニケーションの拡大」

 リポートは、米国が中国への先制攻撃を望んでいないことを明示し、「平時、危機時、戦争時において中国とのコミュニケーションを拡

大」すべきだと提案している。

  ただ、コミュニケーションの拡大について、歴史は励みにならない。2001年に起こった「海南島事件」では中国の戦闘機と米国の偵

察機が空中で衝突し、中 国のパイロットは行方不明になり、損傷を負った米軍機は海南島に緊急着陸せざるを得なかった。

当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領はホットラインで中国 の江沢民国家主席と連絡を取ろうとしたが、江氏はなかなか応答しようとし

なかった。

 (筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト)


ここに出てくるランド研究所は日中開戦についても机上の演習を試みています。

 

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