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【雇用のプロ 安藤政明の一筆両断】 「不合理な違い」にご用心

2016-10-14 12:56:52 | 労働
 正社員と契約社員との間に、どのような違いがあると思いますか? 「正社員」も「契約社員」も、頻繁に使われていますが、実は法律用語ではありません。だから、正社員、契約社員という単語の意味は、事業所によって異なる場合があります。しかし、それでも一般的な意味は、ある程度集約されています。

 最も大きな違いは、正社員は無期契約で、契約社員は有期契約であることです。無期契約は一度雇用されたら定年まで続く契約で、有期契約は契約期間が設定された契約です。もともと、契約期間があることから、契約社員という名称が定着したものと思われます。

 その他の違いとして、各種手当や賞与・退職金の違いがあります。一般に、正社員には各種手当や賞与、退職金が支給され、契約社員には支給されない(又は一部に限り支給)というものです。こうしたことは、ある程度、常識化していると思われます。

 労働契約は、個別契約です。事業所と一個人とが、賃金、労働時間その他各種労働条件に合意することで契約成立します。契約社員は、契約期間があり、手当や賞与・退職金がないことを提示され、これに合意して契約するわけです。このことを、合意原則といいます。ただ、当事者が固く約束しても、どのような労働条件で契約しても良いわけではありません。労働基準法などの基準を下回る部分は無効とされて、法の基準で契約したとみなされるのです。また、各事業所が定める就業規則の基準を下回っても、同様とされます。

 ところが、労働契約法第20条は、有期契約と無期契約との間で労働条件が違う場合は、その職務内容その他の事情を考慮し、不合理な違いであってはならないと規定しています。労働条件には、各種手当、賞与、退職金も含まれます。「不合理な違い」について、条文には具体的な基準などは全く書かれていません。事業所にとっては、あらかじめ対応したくても極めて困難であるとしかいえません。

 このような背景の中、労働契約法第20条に関する初めての高裁判決が示されました(ハマキョウレックス事件、東京高裁(平成28年7月26日判決)。ドライバーの事案ですが、職務内容は同一でないとされながらも、結論として契約社員に無事故手当、作業手当、給食手当を支給しないことと、通勤手当に差を設けることは違法とする衝撃の内容でした。退職金等については認められませんでしたが、今後油断はできません。事業所にとって、極めて脅威となる判決です。

 労働契約の原則は、個別合意だったはずです。そして、その個別合意の内容が、法や就業規則の基準を下回っていなければ有効であるはずです。

 もし契約社員の採用面接に際し、各種手当の支給を求める者がいれば、採用されないでしょう。各種手当が支給されないことに合意してはじめて、採用されます。それを採用後に訴え、しかも裁判所がその訴えを認めるわけです。「約束は破られるためにある」と言われることがありますが、破ることが前提なら、約束と言うべきではないと考えます。

 このような判決が出ると、事業所はどうするか。契約社員に手当を支給するのではなく、正社員への手当支給を見直さざるを得なくなります。また、正社員と契約社員の職務内容に、明確な差を設けようとするかもしれません。反対に、契約社員を採用せず、外注化することになるかもしれません。このことが、日本の雇用環境の将来にとって何かプラスになるのでしょうか。

 今回は契約社員に関する判決でしたが、もともと契約社員その他非正規雇用がここまで拡大した原因は、労働法による正規雇用の過度な保護にあります。正規雇用すれば、余程のことをしない限り、クビにできません。裁判所は、暴力を振るった者や、飲酒運転をした者でも、解雇無効と判断することがあるほどです。

 逆に解雇規制を緩和すれば、事業所は正規雇用を拡大しやすくなります。政府は正規雇用と非正規雇用の格差是正を目指しているようですが、本人が望めば正規雇用される社会を目指すのが、本当の格差是正だと考えます。

                   ◇

【プロフィル】安藤政明

 あんどう・まさあき 昭和42年、鹿児島市生まれ。熊本県立済々黌高、西南学院大、中央大卒。平成10年に安藤社会保険労務士事務所開設。武道と神社参拝、そして日本を愛する労働法専門家として経営側の立場で雇用問題に取り組んできた。労働判例研究会、リスク法務実務研究会主宰。社労士会労働紛争解決センターあっせん委員。警固神社清掃奉仕団団長。

(2016.10.13 07:06 産経ニュース)
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