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事実上の“完全雇用”でいよいよ賃金は上がるのか

2017-07-13 08:19:18 | 労働
 経済の人手不足感が強まっている。ではそれによって賃金は上がっていくのか。BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎さんに聞いた。【聞き手は経済プレミア編集部、平野純一】
 --人手不足が深刻になってきています。賃金上昇につながる可能性はあるのでしょうか。
 ◆河野龍太郎さん 日本の名目賃金は1990年代後半から減少傾向が始まり、足元でも大きな回復は見られていません。実質賃金も同様です。
 ただ、失業率はいま3.1%(5月)ですが、私の分析では2017年末は2.5%、18年末は2.3%まで下がると見ています。かなり労働需給は逼迫(ひっぱく)してきています。19年になっても世界経済の拡大が続いていれば、賃金上昇が一気に加速していく可能性は十分あります。
人手不足は深刻で賃金が上がる条件は整ってきた……
人手不足は深刻で賃金が上がる条件は整ってきた……
 25~64歳の労働力を見ると、男性は2000年ごろをピークに減少に転じました。女性はずっと増え続けてきましたが、最近ではほとんど伸びていません。この労働力不足を補ってきたのは65~69歳の世代です。ここ数年で急激に伸びています。
 いわゆる「団塊」の世代ですが、今年団塊の世代の最も年齢の高い人たちは70歳になりました。やはり人間は70歳を超えると労働意欲も衰えてくるもので、今後一気に労働市場から退出するでしょう。人手不足は一層深刻になっていくと思います。
短期失業率で見れば1.7%
 --賃金が上昇する環境はかなり整ったということでしょうか。
 ◆そうだと思います。さらにこの30年の労働市場の変化で顕著なことは、非正規労働者の増加とともに、1年以上の長期失業者が非常に増えたことです。
 1年以上職についていない人は、やはり働くことに対する資質が残念ながらかなり落ちてしまっているので、そこをカウントしないで1年未満の短期失業率を見ると、実は1.7%まで下がっています。
バブル崩壊後に日本の労働環境は大きく変化……
バブル崩壊後に日本の労働環境は大きく変化……
 1.7%という数字はいわば「完全雇用」です。働いていない1.7%の人たちも、自分には能力があると考えていて、すぐにもっと良い職が見つかると思っているので、職探しのため、一時的に働くのをやめているにすぎない「自発的失業」です。
 労働市場は「臨界点」に近づいていることは明らかで、いつ賃金上昇が加速してもおかしくありません。もしかすると、19年を待たずに18年後半にも一気に賃金が上がっても不思議ではありません。
正規労働者は今後も給与は上がらない
 --ただすべての人が平等に上がるというわけでもないですね。
 ◆終身雇用で働いている人たちは、今後もあまり上がらないのではないでしょうか。いま全体のうち6割が正規雇用、4割が非正規雇用ですが、仮に失業率が2%程度まで落ちても、正規雇用の人たちのベースアップはほとんどできないと思います。
毎年恒例の春闘。ただ正規雇用者の賃金は上がりにくくなっている
毎年恒例の春闘。ただ正規雇用者の賃金は上がりにくくなっている
 理由は、企業のトップが慎重だということだけではなく、固定費が上がってしまったら、終身雇用制度そのものが維持できないことを従業員、組合側もわかっているからです。
 かつて非正規労働という形態は若者や主婦だけのものでしたが、いまは40~50歳まで広がっています。同じ仕事をしても給与は6~7割です。正規労働の人たちにしてみれば、給与は現状維持でも終身雇用の方がいいわけで、ベアは期待していません。
 つまり、労働需給が逼迫して賃金が上昇するのは需給に敏感な非正規雇用です。そこが上昇して全体を押し上げるという構図になるでしょう。
中国経済の混乱が大きなリスク
 --気になるのは世界経済、日本経済の行方です。経済が崩れてしまうと賃上げも水の泡でしょうか。
 ◆結論を先に言えば、19年に賃金上昇が加速する前に、6割くらいの確率で景気拡大が先に終わってしまうと考えています。
 世界経済は2008年のリーマン・ショック後、世界の中央銀行の金融緩和や財政出動に支えられて、09年6月を底に景気拡大が続いています。米連邦準備制度理事会(FRB)はすでに利上げに転じ、欧州でもドイツの長期金利が上がり始めるなど、欧州中央銀行(ECB)による金融引き締めが意識されるようになっています。
 景気が過熱ぎみであれば、中央銀行が引き締めに転じるのは当然ですし、各国の中央銀行は、次の景気後退に備えて、金融緩和で即時に対応ができるように「バッファー」を蓄えにいっている行動とも読めます。
中国経済の先行きに不安も(上海)
中国経済の先行きに不安も(上海)
 大きな問題は中国経済です。中国は世界第2位の国内総生産(GDP)まで成長したにもかかわらず、人民元は事実上ドルにペッグ(連動)しています。経済実態以上に通貨高になっています。米国が今後も利上げを続けると、中国も利上げをせざるを得ず、そのことが過剰生産設備、過剰債務を抱える中国経済に悪影響を及ぼす恐れがあります。秋の共産党大会までは追加財政で大丈夫でも、その後が心配です。
 ひるがえって日本銀行は、次の景気後退がくるまでの間にマイナス金利から脱却できる可能性は小さいと思います。つまり備えができていないまま、次の景気後退に入ってしまう可能性が高い。それはあまりに無策です。
 完全雇用状態で金融緩和や積極財政を続けることは、所得配分や資源配分をゆがめることはもちろん、財政規律を失わせ、弊害が大きいことを認識すべきだと思います。

(2017年7月11日 毎日新聞)
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