人材育成社のブログ

 人粒を実らす人材育成の日々
(一粒=ひとつぶ)

改善して、カイゼンする

2016年03月09日 | コンサルティング

「これはこのプレス機を作動させるスイッチです。本来、作動させるスイッチは1つでもいいのですが、敢えて2つにしています。なぜだかわかりますか?」

これは先日、名古屋駅近くのトヨタ産業技術記念館を訪ねた際に、あるプレス機の前に来たときにガイドの学芸員さんにかけられた言葉です。そこには、直径8センチ位の大きさのスイッチが2つ、45センチほどの間隔を開けて並んでいました。

しばらく理由を考えていると、「答えは安全のためです」との説明がありました。

「プレス機のスイッチは、本来は1つあれば作動させられるけれど、1つだと片手で押せるから片方の手が空いてしまう。その時にもし機械のトラブルが起きると、慌てて空いている方の手で機械に触れてしまう可能性がある。

それを防ぐために、両手でスイッチを押さなければ機械が動かないようにしているのです。でも、初めから今のこの状態で2つのスイッチを付けたわけではありません。最初は、2つのスイッチを押すことを面倒に感じた人がどこからか棒を持ってきて、棒で1度に2つのスイッチを押す人が現れました。そこで、改善して棒では押せないようにしたのですが、今度は肘を使って片手で2つのスイッチを同時に押す人が出てきてしまったのです。そこで、さらに改善して肘を使っても同時に2つのスイッチを押せないように間隔を広げました。それが現在の状態です。安全のために改善に継ぐ改善をした結果なのです」とのことでした。

この話を聞いて、あらためて「世界のトヨタ」ができた理由がわかったような気がしました。

現場での一つ一つの作業に対しておざなりな対応をするのではなく、ひたすらにどこまでも安全を追求する姿勢。こうした細やかな対応こそが、品質や生産性向上を目指したQCサークルをはじめとした「カイゼン」と呼ばれる活動のなせる技なのだと強く感じました。

その他にも1980年代の半ばのロボットがラインに登場したばかりの頃には、溶接ロボットに「聖子ちゃん」や「百恵ちゃん」などの名前を付けて愛情を持って接したりと、現場発の創意工夫を随所に見聞きすることができました。

ちなみに、冒頭の写真はかつてトラックをお客さんに納品した後に故障が起きて、修理にかけつけた豊田喜一郎元社長の様子です。自ら車体の下に潜り込んで、修理をしていたそうですが、そういう時には、必ず2台の車でかけつけて、修理にあたったとのことです。2台でかけつけた理由は、1台は故障車の代車としてお客さんに提供するために、もう1台は現場にかけつけた社員達が乗って帰るための車だったそうです。

現場にすぐにかけつける、こうしたところにも今のカイゼンにつながる姿勢を感じることができましたし、さらにもう1つ印象に残ったことは、説明をしてくださったガイドの学芸員さんの対応です。自社であるトヨタに対しての誇りと共に、自社製品に対する限りない深い愛情を持っていることが、言葉の端々や表情から見て取れました。

改善を追求する姿勢と自社製品に対しての誇り、そして愛社精神、これらの3点はばらばらに生まれるものではなく、3つがつながって始めて芽生えるものだと思います。学芸員さんの説明の数々から、トヨタが長い歴史をかけて培ったものがはっきり見えたような気がした瞬間でしたし、長年トヨタ車を好んで運転してきた自らの選択までもが誇らしく感じました。

それにしてもこのトヨタ産業技術記念館、とても広い博物館で3時間程度の見学では一部しか見ることができませんでした。

次はもっと時間をとって、ゆっくりと見学したいと思います。皆さんも名古屋に行かれた際には、ぜひ一度訪れてみてはいかかでしょうか。

(人材育成社)

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