人材育成社のブログ

 人粒を実らす人材育成の日々
(一粒=ひとつぶ)

魚とサメの関係・単純ではないが複雑でもない

2016年04月24日 | コンサルティング

アドリア海といえば、観光地として知られるベネチア(ベニス)を擁する美しい海です。今から100年ほど前、第一次大戦が終わり、戦争に駆り出されていた漁師達が久しぶりにアドリア海の港町に戻ってきました。戦争に行っている間、漁に出ることができなかったから、きっと魚が増えているだろう。大漁間違いなし!」と、はやる気持ちを抑えて船を漁場に走らせました。ところが、いくら漁をしても魚はあまり捕れませんでした。それどころか、戦争前より魚の数は減っていました。

どうやら、漁師がいなくなるとすぐに魚は増えたのですが、魚を餌にしているサメもそれにつれて増えたことがわかりました。その結果こんどはサメが増えすぎて、餌になる魚が激減したというわけです。

アメリカの統計学者ロトカとイタリアの数学者ヴォルテラは、この現象を食物連鎖のモデルとして定式化しました。

ロトカ・ヴォルテラの方程式(Lotka-Volterra equations)として知られるこのモデルは次のようにシンプルな構造をしています。

frac{dx}{dt} = a x - b xy 

frac{dy}{dt} = c xy - d y

理系の人はもちろん、文系でも経済学を学んだ人なら、xとyをそれぞれ時間で微分した連立式だということがわかると思います。

xは被食者(魚)の個体数、 y は捕食者(サメ)の個体数、t は時間で 、a、 b、 c、 d は正の実数のパラメータです。魚が増える→サメが増える→魚が減る→サメが減る→魚が増える→・・・という循環(振動)を表しています。

ロトカ・ヴォルテラの方程式は、捕食・被食の2生物間の個体数の変動を表す「生存競争モデル」ですが、非線形方程式の事例として非常によく紹介されています。

非線形とは線形、つまり「単純」ではないということです。y=ax+bのような形は線形ですが、世の中のあらゆる現象は、ロトカ・ヴォルテラの方程式のように基本的に非線形です。

ビジネスの世界では「物事を複雑にしようとすることは、間違いである」という認識が一般的です。「なにごともシンプルに、わかりやすくしなければならない」ということです。

それは基本的には正しいのですが、「単純=善、複雑=悪」という、まさに単純極まりない「線形思想」がまかり通っているようです。

世の中の動きを理解するためには、非線形の視点が必要です。ビジネスの現場でも日々起きていることはほとんどが非線形事象だからです。

もちろん、わざと複雑化して考えるのはナンセンスですが、複雑であることと非線形であることは別です。

もしも「わかりにくいから単純化しなさい!」という人がいたら要注意です。何でもかんでも「単純化」してしまうのは非常に危険なことだからです。

非線形で物事を考えるのは確かに難しいかもしれませんが、「本当に線形でいいのかな?」と、ちょっと疑ってみるだけでも大いに価値があります。

(人材育成社)

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