人材育成社のブログ

 人粒を実らす人材育成の日々
(一粒=ひとつぶ)

ビジネス書はきっかけに過ぎない

2016年07月31日 | コンサルティング

「その本を読んだことがきっかけではありました。」3年間連続でNo.1セールスをキープしているAさんの言葉です。そのとき私は、クライアントのある計測器メーカーから依頼されて「優秀なセールスパーソンのコンピテンシー」を調べていました。

Aさんは現在30代後半ですが、昨年から大きな営業所の所長として約20人の営業マンを率いる立場に就いています。彼は今でこそ全国で300人以上いるセールスパーソンのトップに君臨していますが、20代の頃は「最低最悪のダメ営業マン」だったそうです。

「入社以来、営業成績は下から10番以内でした。本社の営業部にいたのですが、毎月の営業成績がグラフで貼り出される月初は出社が辛くて仕方がありませんでした。」事務担当の女性社員からも”ブービーちゃん”と陰口をたたかれていたそうです。

「ブービーと言うより”ブービーメーカー”のときが多かったんですけどね。」そう言って笑うAさんからは、そんな暗い過去を一切感じません。

そんな「ダメ営業マン」のAさんが28歳の時に「その本」を手にしました。

「最初に配属された総務部から営業部に異動して2年が過ぎていました。ある日、会社に帰る途中に大きな書店があったので、ふらっとそこに入りました。」「転職しようと思って転職成功テクニックとか履歴書の書き方とか、まあ、そんな本を探そうと思ったんです。」

その時、何の気なしに手に取った「その本」がAさんの飛躍のきっかけになったそうです。

「それはビジネス書コーナーの端の方に1冊だけありました。タイトルに”気の弱い営業マンのXXX”と書いてあったのがちょっと気になって手に取ってみました。」「ぱらぱらと読んでみたのですが、特に”すごい!”と思ったわけじゃありません。ああなるほど、言われてみればそうだよな、くらいでした。」

Aさんは、取りあえずその本を買って帰りました。そしてすきま時間を使いながら、2週間ほどかけてその本を読み終えました。

「読み終わっても特に感動したわけでもないのですが、そこに書かれている”ある行動”をとりあえずやってみようと思ったんです。」「それは、お客さんとの会話をていねいに記録して、翌日に読み返し、今後取るべき行動など思いついたことを追記することです。そして、1週間後、1か月後、3か月後に読み返すのです。」

何だか地味な作業ですねと私が言うと、Aさんは「そうなんですよ」と言ってうなずきました。

「総務部にいたときに工場の空調機や配電盤の点検ノートを付ける仕事をしていたので、それに比べたら楽な作業だなと思って。」「簡単なイラストも入れたり、記録も自分なりに工夫して行くうちにいつの間にか1年近く過ぎたんです。もっとも、その間も営業成績はビリの方でしたけど。」

その営業記録ノートを1年付けてみて、結果が出なかったら転職しようと思っていたそうです。「ギリギリ20代なら転職も何とかなると思っていましたし。」とAさん。

「1年経ってノートも5冊目に入った頃です。何度も読み返すうちに、お客さんのパターンというか考え方みたいなものが、何となく見えてくるようになってきました。たとえば、T社はそろそろシステムを買い替える頃だな、予算規模から推測すると、設計と製造と品質管理も絡んでくるから”システム選定委員会”を立ち上げるな、とか。」

そうしてAさんはお客さんの行動に「先手」を打つようになりました。

成果が表れたのは30歳になってからでした。

「お客さんはものすごく忙しいから、自分の直近の仕事以外はわりと忘れていることが多いんです。そこを、ちょっとだけ早めにこちらから助けてあげるだけです。先手ってそういうことです。実はそれが結構効果的なんです。」

しかも、お客さん(顧客企業)の担当者が変わっても、過去の記録があるので仕事のつながりが切れることがないそうです。「新しい担当者に、引継ぎでは聞けなかった過去の情報を教えてあげることでとても感謝されたりします。」とのこと。

さて、私はAさんに「その本」を部下にも読ませているかどうか聞いてみました。

「いいえ。以前、ある若手に読ませたのですが、何の変化も起こりませんでした。確かに、私も取り立てて感銘を受けたわけでもありません。本はきっかけに過ぎません。それより、1つでも良いから”先手”につながる行動を続ける、これに尽きます。」

私は凡人ですと言い切るAさんですが、凡人こそ営業に向いているのかもしれません。

(人材育成社)


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