人材育成社のブログ

 人粒を実らす人材育成の日々
(一粒=ひとつぶ)

本気で叱ったときに出る言葉

2016年05月18日 | コンサルティング

 「声が汚い。ガマガエル!」「バカ!才能なし」

「おまえはブス、誰もが黙る演技力を身につけろ!」

 これは、先週亡くなられた演出家の蜷川幸雄さんが俳優に投げかけた、罵声と言ってもいいほどの言葉の数々です。

この言葉だけを並べると、間違いなく人格否定とも思われます。

 ビジネスパーソンを対象にした「ほめ方・叱り方」の研修では、叱り方のタブーとして「変えられないものを叱らない、人格否定をしない、脅しは禁物」と伝えていますが、まさに蜷川さんの叱り方はこれに該当しているように思えます。企業であれば、間違いなくパワーハラスメントに引っかかる発言でしょう。

 しかし、蜷川さんが亡くなって以降の数々の報道を見ていると、つながりのあった沢山の俳優が蜷川さんとの別れを心の底から惜しんでいるように感じました。

 「声が汚い、ガマガエル」と言われた藤原竜也さんに対しては「もっと苦しめ、泥水に顔をツッコんで、もがいて、苦しんで、本当にどうしようもなくなったときに手を挙げろ。その手を俺が必ず引っ張ってやるから」と紹介されていましたし、「ブス」と言われた寺島しのぶさんは「感謝しかないです。思いっきり本音が言い合える人がまたいなくなってしまいました。でも、いただいた言葉は私の細胞に植え込んであります。書いている間も涙で字が見えません」とおっしゃっています。

 蜷川さんが10年ほど前に一般公募(55歳以上、経験不問)によって立ち上げた「さいたまゴール・ドシアター」の団員に私の知り合いがいますが、稽古中の厳しさは言葉では表現できないくらいだと言っていました。でも、その厳しい稽古を経て何とパリでの公演も成功させました。

私も以前、「さいたまゴールド・シアター」の公演(本ブログでも紹介http://blog.goo.ne.jp/jinzaiikuseisha/d/20130616)を観に行ったことがありますが、当時平均年齢74歳の人たちが舞台の上で生き生きと演じられていました。数年前には舞台にすら立ったこともなかった人たちがここまで演じられるようになったのは、まさに蜷川さんの厳しいけれども、それだけではない指導があったからこそだと思います。

 では、蜷川さんの言葉がパワハラにならずに役者の心に届いたのはなぜなのでしょう?

それは、蜷川さんの言葉はただ感情をぶつけているようでいて、実は心の底からその俳優の成長を願ってやまない気持ちから出た発言だったからではないでしょうか。

 また、叱った後のフォローもきちんとされていたようです。

藤原竜也さんの「どうしようもなくなったときに手を挙げろ。その手を俺が必ず引っ張ってやるから」という発言もそうでしょうし、大竹しのぶさんの談では蜷川さんが別の俳優を叱った後に大竹しのぶさんのところに来て、「フォローしておいて」と言うこともあったようです。

さらには、さいたまゴールド・シアターの団員のインタビューによれば「蜷川さんは決して年上の人を呼び捨てにはしなかった」とのことです。

こうした心遣いが多くの人の気持ちをつかんだのでしょう。

 部下を「ほめる」「叱る」については、3日前のこのブログ「ほめたり叱ったり、上司は忙しい」でも書いた通りですが、この度、蜷川さんを偲ぶ言葉を聞いていると、本気で相手の成長を願った結果飛び出す言葉は、粗っぽくても伝わるということ。そして、少々言い過ぎたと思ったら、フォローをすること。この2つが揃っていたら、パワハラを心配することなく、部下の成長につながる叱り方ができるのだと思いました。

 (人材育成社)

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