パオと高床

あこがれの移動と定住

司馬遼太郎『モンゴル紀行』(朝日文庫「街道をゆく5」)

2006-08-24 23:12:17 | 国内・エッセイ・評論
何だか久しぶりの読書日記だ。

司馬遼太郎の『街道をゆく』は、読むたびに空間と歴史の広がりのただ中に連れて行かれる心地よさがある。
「うだつ」を追いかけて江南に行く旅や半島に歴史のつながりを見極めていく旅。「蜀犬日に吠ゆ」から始まり三国への地理歴史的考察から普遍と文明や辺境への思い、また古代の技術の深さを語る旅。それぞれに面白かった。
そんな中の一冊。モンゴルへの興味から以前読んでいたのだが、今回再読。実はこの夏のモンゴル旅行のための読書だった。
距離の遠さがそのまま想いの深さを表すようなハバロフスクからの困難な入国は、国家の体制とそこに生きる人との交流を語りながら、やがて奇跡のような場所モンゴルにたどり着く。
少年の日からの司馬遼太郎の想いが溢れるような紀行文である。さらに、不幸でもあった日本との関わり、日本とモンゴルの現代史への考察が縦横に語られ、それは、歴史の時間を行き来しながら、やがて遊牧の文化への語りに繋がる。そして、現地モンゴルに立つ作者の感覚も解放され、草原と砂漠のそして人々の暮らしの様子が記述されていく。
朝青龍らモンゴル人力士を除くと日本人が一番知っているであろうモンゴル現代人ツェベックマさんの案内に引かれながら、当時のモンゴルの今をも語る、まさに歴史とは過去と現代との対話であるということを実践している魅力的な一冊だ。
それにしても、モンゴルはすばらしかった。



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