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米国の新経済理論にすぐ飛びつく日本

2017年01月29日 | 経済

 

金融政策は失敗、次は財政赤字の拡大策か

2017年1月29日

 日本を振り回わすのは、トランプ新大統領ばかりではありません。米国発の金融理論の影響を受けた異次元金融緩和策が成果を上げられず、困り果てていたところ、今度は米国発の財政赤字の膨張論を賞賛する学者がでてきてきました。金融政策が手詰まりとなり、今度は財政赤字の拡大を認める根拠を探し求めているのでしょう。


 米国発の経済理論は、数式に基礎を置き、コンピューターを駆使したものが少なくありません。理論は精緻で、一定の条件を置いた中では、成立するのかもしれません。実際の世の中は、多くの要素によって構成され、それぞれの要素も変化しますから、理論通りの結果が得られるのは、前提となった条件に現実が合致する時のみという弱点があります。


 異次元金融緩和策もそうでした。貨幣数量説というのでしょうか、マネー(貨幣)を増やせば、物価が上がり、デフレから脱却できるという説を信じ込んだのが黒田日銀総裁であり、引きずりこまれたのが安倍首相です。円安、原油安、海外景気など、海外要因で黒田氏が置いた前提が狂ったのです。「2年で2%の消費物価上昇率を達成する」と、国民は何度も聞かされました。日銀は2年を3年に、3年を4年にと先送りし、異次元緩和論がまともに相手にされることは少なくなりました。


米国発の理論の発見、発掘


 首相の経済顧問格の浜田宏一氏(米エール大名誉教授)もその信奉者でした。「でした」と過去形にしたのは、浜田氏は「どうも間違っていたようだ」と気づき、マネタリズム学説から距離を置くようになりました。日本の経済学者には、米国に主張が左右されることを仕事にしている人は多く、浜田氏はいち早く、米国の新財政理論を見つけ、月刊誌(1月)に、論文を書き、紹介するという身のこなしようです。


 首相はアベノミクスが果実を生んでいると繰り返しています。実際は、その中核である異次元緩和政策は失敗であり、多くの人は批判する意味さえ感じなくなっています。さらに、首相の公約である「経済成長の果実で財政を再建する。20年度の基礎的財政収支を黒字化する」も、目標達成があやしくなってきました。


 その時を見計らったように、飛び出してきたのが浜田氏が推奨する財政理論です。「物価水準の財政理論」と称し、提唱者のシムズ米プリンストン大教授とのインタビュー記事を、日経(29日)、読売(27日)が掲載しました。政府の経済財政諮問会議が「20年度の基礎的財政収支は8兆円の赤字で、黒字化は無理」との試算を発表(26日)しました。「今後の財政健全化はどうなるのか」と皆が疑問を持つだろうタイミングです。


まるで異次元緩和論の財政版


 しかも、「脱デフレは金融政策では限界。消費者物価2%目標を政府が掲げ、それまで消費増税を凍結。インフレにして、政府債務(国債)の一部を軽減する。そう政府が宣言すれば、インフレ期待が起き、実現できる」という理論です。財政を拡張しても、最後はうまくいく。本当なの。限定した条件のもとでしか成立しないのでは」と、思います。しかも、安倍政権の財政政策に都合がいい理論です。さらに、黒田総裁による異次元金融緩和の財政版です。


 シムズ氏が新理論でノーベル経済学賞を受けたのは2011年、日本では注目されていませんでした。教授が昨年8月に講演したことが切っ掛けとなり、浜田氏が「目からウロコが落ちた」と評価したのが始まりです。教授のいう「消費増税の凍結、延期」はどうでしょうか。一強政権といわれる安倍内閣ですら、消費税10%を先送りしています。首相在任中は手をつけないでしょう。教授にいわれなくても、政治判断で消費税凍結です。「インフレ期待を高める」はどうですか。黒田総裁が再三、国民にそう暗示をかけたのに、失敗しました。


 「政府債務をインフレで帳消しにすると、政府が宣言する」はいかがでしょうか。インフレになったら、インフレ率分だけ政府債務(国債)が減価するのは確かだとしても、一方、国債の所有者はその分、損をします。あるいは、物価が上昇し、税収の名目値が増えるから、これを国債の返済に当てるという説明ではできます。この場合でも、国民や金融機関が所有する国債は目減りしてしまいます。政府が「これから国債の価値を落とすために、インフレを起こす」と宣言したら、支持率は急落するでしょう。政治的に無理な話です。


 教授は「デフレ圧力の下では、国は借金(国債増発)をしてでも、財政を拡大すべきだ」とも主張します。安倍政権下では、すでに国債は毎年、3、40兆円も増え続け、積り積もって1000兆円に達しています。教授がやるべきだということを、日本はすでに10年、20年も続けているのに、経済はよくならないのです。日本を含め、世界経済は長期的な停滞期に入っているのです。米国がIT革命で先行したように、次世代技術の開発、新興企業の育成などで、新局面を切りひらいていくことが不可欠です。


 









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2 コメント

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預金封鎖は冗句か? (案山子)
2017-01-29 22:44:58
私は経済のことは無知だが、それにしても巷から時々預金封鎖と言う。言葉が流れてくると、そんなことが日本で現実に起こったらと想像することがある。日銀は国債を買い漁り、日経225の筆頭株主ななる勢いで株を買う。これってプロフェッショナルの遣る金融政策なのだろうか。日本の将来は、快晴か暗雲か、国民も自分の身に擬えて考える時が来ているのではないだろうか。
今残されている手段は、新たに日本に欠けている産業を興す。私の勝手な考えだが、海底資源開発により、メタンハイドレート・レアメタル等低コストで開発する技術を取得し、そのエネルギーを電力に利用し、日本中にガス管を配管する。
レアメタルはまだコストを下げることは不可能だろうが、日本海側に眠っているメタンハイドレートは低コストで採取することが可能だと言う学者もいる。

トランプ大統領は日本に防衛費の増強を求めてくると思う。それで益々日本財政の赤字は大きくなる可能性がある。それに人工頭脳とロボットの伸長により、政府が同一労働同一賃金政策を進めても、結局は、低い賃金に収束しても、高くなるとは思えない。その結果格差社会は、大きくなるだけだろう。民進党の蓮舫議員がベーシックインカムを訴えていたが、日本は共産主義ではないので、問題外に思える。私は、景気を後退させる消費税を選択するのではなく、所得税の累進税率の幅を大きくし、資産税を見直して、低所得者に軽い負担高所得者に大きい負担、それが最善の方法だと自分勝手に考えてみました。支出の部で未だに残されている、護送船団に守られている、JA・医師会等改革しなければ、日本に覆われた暗雲は退かないだろう。

中韓関係が米中・日中・日韓関係より、非常に危険になる可能性があるように思う。
Unknown (Unknown)
2017-01-30 14:19:06
リフレ派の皆さん、何時になったら2%とGDP600兆円実現するの?

見苦しい言い訳のオンパレードは見飽きました。屋上屋ではありませんが、今度もシムズ云々(でんでん)とか外国の下らない学説を担ぎまわって過去の過ちを誤魔化すのですね。(笑)

バカは死ななきゃ治らない????

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