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憲法学者の違憲論でつまずいた安保論

2015年06月06日 | 政治

 このままでは国民不信招く   

                        2015年6月9日

 

  ただでさえ理解しにくい安保法制論議が、さらにわけが分らなくなりました。衆院憲法審査会で憲法学者3人がそろって、安倍政権のやろうしていることは「憲法違反」だと、いいました。そのなかに与党が推薦した学者が含まれ、「そんなはずではなかった」と、与党はあわてふためています。G7サミット(首脳会議)直前に基本中の基本の政策が「違憲」判定ですから、安倍首相はぎょっとしたことでしょう。わたしもぎょっとしました。

 

 参考人を推薦した与党議員は、恐らく憲法と安保法制の関係、かれら特に与党側の参考人の日ごろの主張をよく飲み込めていなかったから、こんな事態を招いたのでしょう。安倍首相、中谷防衛相、高村副総裁の3人が新法制をぐいぐいリードし、他の閣僚、議員はついていけなかったと思われます。これでは国民に新しい安保法制を理解しろといっても、無理な話です。

 

 与野党間の対立だけならまだしも、憲法学者がいずれも野党側に立ち、一方、安倍政権は「行政府による憲法解釈の裁量の範囲内」と反論しています。どちらの主張が正しいのか、分らなくなり、国民は困惑しています。どうでしょうか、憲法学者を再度、国会に参考人に呼び、安全保障政策に詳しい閣僚、議員がかれらの真意を質したらどうでしょうか。

 

 このままでは国民不信

 

 このままの調子で国会論議を続け、野党が抵抗するまま、安倍政権が強硬採決に向ったら、国会は大混乱に陥ると思います。国民も政治不信に陥ります。政権側にたつメディアはこの問題への深入りを避け、反対派のメディアはチャンス到来と勇み立ち、真っ二つに分断されています。安倍首相は「安保法制の改革を国民に丁寧な説明する」といい続けているのですから、憲法審査会の再演はできるのでないでしょうか。

 

 3人の憲法学者の真意を改めて聞いてみたいのは、まず、かれらは憲法に詳しくても、安全保障問題に必ずしも詳しくはないからです。しかも「違憲」部分の発言はあっさりしすぎていて、なぜ「違憲」なのか、その理由がよく分りません。審査会のもともとの趣旨は立憲主義の説明だっだところ、民主党議員が安保問題について質問し、「違憲発言」を引き出したようです。

 

 安保法制の見解も聞け

 

 与党推薦の長谷部早大教授は「集団的自衛権の行使に踏み切るのは憲法違反。従来の政府見解の基本的論理の枠内では説明がつかないし、法的安定性を揺るがす」と、述べました。簡潔すぎてこれだけでは、なぜそうなのか理解しにくいですね。ネットなどで調べても、詳しい説明をしていないようです。しかも長谷部教授が日本をめぐる安全保障環境をどう認識しているかです。「日本は安保政策の基本も変える必要がない」といっているのか、「憲法違反になるから根幹を変えるな、変えられない」といっているのか不明ですね。

 

 民主党推薦の小林慶大名誉教授の発言には首を傾げます。「露骨な戦争参加法案だ」と指摘しました。戦争参加が本来も目的の安保法制ではないでしょう。あくまで日本の自衛が目的であるのに、「戦争法案」という俗耳に入りやすい表現で国民をあおるのは学者の仕事ではありません。「長谷部先生が銀行強盗をして、僕が車で送迎すれば、一緒に強盗したことになる」という発言は下品ですね。同盟国を助けるため海外に行くと、戦闘状態の中で一体化してしまうことをたとえたのでしょう。その場合、傍観するのですかね。

 

 もともと護憲論者が多い学会

 

 憲法学者はもともと護憲論者が多く、よく「憲法残って、国滅ぶ」という批判がよく聞かれます。正論を戦わすいい機会です。安倍政権は堂々と論戦に臨んでほしいですね。

 

 安倍政権のこれまでのやり方には強気、強引なところがありました。国会で論議が始まってもいないのに、日米首相会談や米議会演説で「戦後最大の安保法制の大改革を、この夏までに成就させます」と、言いました。昨年の総選挙では、安保法制の具体的な中味を示し、民意に問い、協力を取り付けるという努力を怠りました。ここは焦らず、はぐらかさず、堂々と憲法学者と論戦したらどうですかね。

 

 

 



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