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東芝と東電の双子の危機で原発に黄信号

2017年04月13日 | 経済

 

原発存続論は現実に勝てるか

2017年4月13日

 東芝という世界的な巨大企業が原発事業でつまづき、一瞬にして存亡の瀬戸際に追いつめられました。数年前に遡れば、これも日本で最大級の東電が原発事故を起こし、実質的な経営破たんに陥り、原発不信の暗雲を世界中に広げました。東芝危機と東電危機は連動しています。東芝の将来より、原発の将来をどう考えるが本当の問題ですね。


 東芝は原子力事業から撤退、買収した米WH社は連邦破産法の適用申請です。世界の原発ビジネスを支えてきたのは、東芝ーWH、三菱重工ー仏アレバ、日立製作所ー米GEの3陣営ですから、その一角が消え去ります。東芝の経営危機は、世界の原発事業が先細りしかねない将来を暗示しています。85年以降、世界の原発は約400基で横ばいに転じたままです。


 国内の報道に接していいますと、東芝が半導体メモリー部門をいくらで売却できるかとか、上場を維持できるかとか、銀行が救済融資に応じるかどうかなどに、関心が集まっています。そうしたことよりも原発のが将来どうなるか、どうするかが極めて重大な問題です。原発には世論の逆風が強く不人気なので、政府は深入りを避けているようです。


事故が起きると企業は破滅


 東芝の損失は原発関連だけで7000億円です。まだまだ増えるでしょう。事故を起こした東電の処理費用は廃炉・賠償除染費用22兆円と、当初見込みの2倍に達する見込みです。事故が起きれば、どんな大企業であっても、破滅的な損害が発生します。安全性は軽視、人命を軽く考え、国土が広い中国はともかく、先進国では現実論として難しいビジネスとなりました。


 日本では、新規稼働は09年が最後で、原子力産業は既存の原発の安全対策工事で食いつないでいます。新増設はもちろん、建て替えも困難で、運転延長の期限が切れたものから、次々に停止に追い込まれていきます。


 原発を支える技術の衰退、技術者の減少、関連企業の脱落など、暗い見通しばかりです。温暖化ガス削減、石油・石炭・天然ガスなどの枯渇を考えると、現実論として、原発をなんとか維持していかないと、経済産業活動に影響がでるということは否定できません。その原発肯定論も、新たな技術開発、廃棄物の処理方法が生み出されていかない限り、説得力に欠けます。


将来への芽は残すという考え方


 原発をめぐり、廃止論、存続論が対立し、交わることはありません。廃止すればするで、経済社会を維持するうえで、困難な問題がでてくる。存続させたらさせたで、巨大なリスクを抱え込む。数十年まえに、現在の社会の姿を見通せなかったように、数十年後に、技術的に新たな進展があるかもしれません。人類は今後、百年単位、千年単位で生き延びるのでしょう。将来につなげる芽を摘んでしまうべきでないとも、考えます。


 福島原発で事故が起きたといといっても、原子炉そのもののメカニズムの失敗ではありません。堤防の高さを15m程度にしておけば、あるいは非常用発電機を建屋の屋上に設置していたら、事故を防げたかもしれませんね。チェルノブイリ、スリーマイル、福島を除けば、世界の他の地域では事故なく操業されています。


 「原子炉そのものより、何らかの人為的なミスで起きた時の災害が怖い」という指摘も、そうなのでしょう。「原子炉を稼働させるより、事故が起きた時に対応できる技術があまりにも開発されていない。事故を防ぐ技術ばかりではく、事故後の対応技術が不十分」も、否定しようのない事実です。原発存続論はこれをどう乗り越えるかですね。


 東芝、東電という双子の危機は、原発存続が企業経営として、困難さが増していることを示しています。特に日本ではそうです。原発に反対し、停止させなくても、現実論として徐々に原発は減り、依存度は結果として下がっていく。肯定派も否定派も、現実論に立脚して考えていく必要あると思います。

 

 

 

 



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4 コメント

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原子力の将来は明るいですよ! (こかげ)
2017-04-13 23:59:13
今後、自動車が電気に代わってゆきますから、必然的に原発に依存せざるを得なくなるでしょう。
原子力の将来は明るいですよ!

例えば日本の場合、全ての全ての自動車を電気に替えると2~3倍程度の電力が必要になるのでは?
そうなると、ベースロードが大きく上昇する事になるでしょうから、原発が必須になるでしょう。

短期的なことで、馬鹿げた騒ぎは無意味ですね!
Unknown (Unknown)
2017-04-14 10:02:57
核のゴミを冥途に持っていけない世代は、口を差し挟む傲慢を戒めましょう。

今まで散々使ってきたくせに、どの口が言うのだ、人生の半分が終わった人たちは黙っていなさい。どうせ死ねば何も感じない。

若年層に委ねます。ゴミを残していく無責任を許してください。
Unknown (通りがかり)
2017-04-15 08:23:48
電費6km/kWhのEV6千万台が、年間8,900km走ったとして、急速充電器の効率を0.9、送配電効率0.95とすると、1,041億kWh・・・2015年度電力10社発電電力量8,850億kWhの12%弱。
火力の高効率化を狙っても、CCSは2040年時点で世界の排出量の13%の見通ししかないので処理料の高騰は必至。対象は決め手がない鉄鋼・セメント・化学工業に回す。
幸い、LNGだとCO2▲80%で2千億kWhくらいまでなら発電できる。
原発やめて送電線空けて、洋上風力の風車作ってメンテもやれば、雇用は作れる、コストも安くなる。
それをやるかやらないかだけの話。
ASTRIDでは減容・無害化するのに1ロット100年以上でマイナーアクチノイドのみ。せめて50年で使用済核燃料1.7万tとプルトニウム47tの減容・無害化の技術が見通せるまでは、ラボで研究に専念。実証炉なんてもってのほか。
有事やテロの考慮 (へのへのもへじ)
2017-04-16 01:05:07
米国の原子炉は重火器で武装された警備員にガードされていますが、日本の原子炉はほぼノーガードです。
旅客機が原発に墜落した場合の安全性は考慮されているようだが、バンカークラスタ爆弾が直撃したら?

原発なしで本当にやっていけないのだろうか。
たとえば、化石燃料による発電でも、発生した二酸化炭素を吸収する方式も研究されている。自然エネルギーによる電気を貯蓄す直流蓄電池の研究も進んでいる。そのような研究に大きくシフトした方が、中長期的に望ましいのでは?

日本が原発、なかでもプルサーマルにこだわるのは、原子爆弾の製造技術を国内に温存したいからではないのか?

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