Reading Digest 18

とにかく本好き。活字中毒者の備忘録です。

久々の2週連続

2008-06-15 08:46:35 | Weblog
昭和16年に総力戦研究所が設立され、当時の三十代の優秀な若手官僚、民間人36人を集め、日米開戦の是非について自由研究を行った。その結果、物量、輸送力の差で日本敗戦の結論が出るも、結局は当時の「時代の空気」に押され実際の政治に採用されることはなかった。「時代の空気」はたまた「世論」、むかしも今もかわりませんねえー。しかし、これだけインターネットが発達し、様々な意見、情報を個々が取得できるのにも関わらず、より「世論」が刹那的、流動的になっているのはどういうことなんでしょうかね?全体の理解力、判断力が低下しているんだろうか?猪瀬直樹、強面であまり好きではないですがこの本「空気と戦争 (文春新書 583)」は考えさせられました。

頻繁にボノやアンジェリーナ・ジョリーらと名を連ねる経済開発界のスター、ジェフリー・サックスの一般読者向けに出した「貧困の終焉―2025年までに世界を変える」を遅ればせながら読みました。専門家の評価はどうなっているのか知りませんが、臨床経済学アプローチを駆使し、時には専門外のマラリア撲滅にも目を配る、八面六臂の活躍ぶりはすごいです。彼を敵に回す(?)、IMFや世界銀行は大変でしょう。まあきっと色々物議はあるのでしょうが、彼が「開発」をひとつの流行にした立役者の一人であるのはまちがえないないでしょう。ところでいつも思うのですが、ボノって???

ご無沙汰しております。

2008-06-08 16:29:04 | Weblog
ずいぶんとご無沙汰をしてしまいました。その間にもどんどん本は読んでいるのですが、あまりグッとくる本がなかったのと、元来の不精で止まっていました。

さて、一冊目「スティーブ・ジョブズ神の交渉力―この「やり口」には逆らえない! (リュウ・ブックスアステ新書 48)」はスティーブ・ジョブスがどんなに嫌なやつか分かる本です。「神の交渉」というより「自己中心的交渉」といったほうが適当です。ただ、それでもそれを押し通して現在のアップルの登場はたまた復活があったのはジョブスの力量ですし、まあたいしたものです。ビルゲイツと違いもともとから技術者ではなかったんですね。

2冊目「裏方―プロ野球職人伝説 (角川文庫 き 31-1)」は1冊目と真逆の本。プロ野球の選手ではなく、その周辺の職業(トレーナー、スコアラー等)に光を当てた本です。これが、どの登場人物たちも渋い。職人であるが故に必ずしも脚光を浴びることなく、そのプロ意識を糧に地道に生きている。人には色々な生き方があるものです。でもこっちのほうが、人間としてはまともだなあ、本当に地道だけど。

またサボらずにがんばって追加しますのでよろしくお願いします。

もうすぐ期末

2008-03-16 07:17:46 | Weblog
大下英治著「黒幕―昭和闇の支配者〈1巻〉 (だいわ文庫)」「政商―昭和闇の支配者〈2巻〉 (だいわ文庫)」、第一巻は戦後最大のフィクサーと呼ばれた児玉誉士夫、第2巻は一代で国際興業グループを築いた昭和の政商と呼ばれた小佐野賢治の伝記。二人とも徹底的に悪い。でも、なんというかそれなりに筋が通っているというか、昨今のホリエモンや折口雅博(グッドウイルね)なんかと全然迫力が違う。まあ、時代が違うといったら身も蓋もないんだけれど。共に巨大な資金力をバックに保守政党に影響を与えていく過程は発展途上国の政治プロセスそのもので、これぞ「金権政治」。今もあんまり変わっていないのかもしれんが。ドラマチックに書かれているきらいはあるものの、裏昭和史面白いです。

次の本は全然別の内容。本書「常識破りの組織に変える 33人の否常識」は著者がビジネス界及び社会企業界の著名人33人に呼びかけて、いかに既成概念を打ち破り、成長していくかというヒントを書いている本。面白いのは全員が匿名で書いているので、誰がどれを書いたかが分からないこと。ビジネス中心だけど例えばこんな内容もある。「恐怖心はもっとも役立つ感情だ。しかし不安とは偽りの恐怖心であり、人生を崩壊させる感情だ。人が不安になるのは、目の前の現実を受け入れようとせずに、将来起こりうる悪い結果を思い浮かべるからだ」。大阪出張の新幹線の中で一気に読みました。

2月はやっぱり寒い

2008-02-17 09:53:27 | Weblog
また2週間間が空いてしまったんですが、今回はこの2冊。

カルチャー・クリエイティブ―新しい世界をつくる52人 (ソトコト新書 7)」。実は昨日、著者辻さんのトークショウにまで行って来ました。本の中では51人(本人曰く自分を含め52人)の「カルチャークリエイティブ」な人々が紹介されているのですが、じゃあその「カルチャークリエイティブ」な人ってどういう人というと、「豊かさの定義を物質的満足度から精神的満足度(よって生活はシンプルかつスロー)に再定義し、他者との異質性を理解しながら個々で創造して生活する人。」ということになるのでしょうか。公演を聴いて思ったのだけど、一方で今流行の社会企業家的視点(僕的には非常にビジネス寄りの視点だと思っています)よりももう少し思想的な変革を訴えているという印象でした。51人のそれぞれの紹介は短くてイマイチですが、全体を読み通すとなんとなく彼の言いたい「カルチャークリエイティブ」のイメージが湧く本です。

さてさて、一見その対極にある本「ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)」。でも以外に共通点があるんだよねえ。まずウエブの出現で「時間」と「距離」と「無限」の概念が覆されている。あたかも「高速道路」を疾走するが如くのスピードで効率よく過去の知識を無限に吸収できる世界、それがウエブ時代であるというのは、さっきの「カルチャークリエイティブ」と真反対の方向に行きそうなんだけど、だからこそある程度の高みまで到達することは誰しもできるのだからその先は「好きなこと」をベースに働かないと個々人の強みが出てこない。それは例えばオープンソースの思想だよってところでアレッ、なんとなくさっきの話とシンクロしてくるのです。梅田さんはその個々が創造力を持って生きる道を「けものみち」って書いているのだけれど、それって「カルチャークリエイティブ」ってこと?両者の対談を是非見てみたいなあ。

大雪注意

2008-02-03 10:33:33 | Weblog
久しぶりに小説「テロル(ハヤカワepiブック・プラネット) (ハヤカワepi ブック・プラネット)」読みました。主人公はアラブ系遊牧民の出身で現在はイスラエルに帰化している優秀な医師なのですが、ある日、市内で起こった爆破テロがあろうことか彼の妻の手によるものだった。イスラエル当局をはじめとしたイスラエル、パレスチナ双方側から迫害を受け、ボロボロになりながらもなぜ妻はテロを実行しなければならなかったのか、その真実を追い求めて主人公はイスラエルとパレスチナ自治区を旅する。けっして口当たりの良い物語ではなく、むしろ心がざわざわする本だけど、パレスチナ問題の奥深さを感じさせる本。

ということで、背景を確認すべく「そうだったのか!現代史 (集英社文庫 い 44-2)」を読みました。第7章「イスラエルが生まれ戦争が始まった」うーんこれを読むとイギリスは悪い!まあでも一筋縄ではいかんわなあ。それとパレスチナ解放機構のアラファト議長ってそれなりの人なのね。やはり情報・教育がアメリカ寄りなので、ユダヤの敵は悪の権化的な刷り込みが激しいことを改めて実感。ほかの章もわかりやすい記述で、現代に起こっているごたごたの基礎を考えるいい本です。

謹賀新年

2008-01-14 11:57:04 | Weblog
あけましておめでとうございます。妻の帰国等なんやかんやで、すっかりご無沙汰でしたがその間にも少しづつ読みためていた本のご紹介です。

スパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79) 」早川文庫ということもあり、初めはフィクション物だと思って読んでいましたが、どうやらノンフィクション物らしい。佐藤優が自著「国家の謀略」の中でもスパイをよく知る本として褒めてました(ちなみにこちらの本はSAPIOに連載していた論考をまとめたもので、あまり面白くない。最近書きすぎなんじゃないかなあ、当初の迫力なし)。モサドで活躍した元エージェントが情報部の入り方、尾行の仕方等々スパイにとって重要な事柄をユーモアたっぷりに書いています。まあハウツー物としては遊びすぎの感がありますが、暇つぶしには面白いかも。

最近、社会学的な本をあまり読んでないなーと思い手に取ったのが「日本を降りる若者たち (講談社現代新書)」。色々な事情で社会に適応できず、普通だったら家に「内こもる」ところを、東南アジアに「外こもり」ひたすら日々を過ごしている人々を綴った本。確かに東南アジアの湿度が高く暑いユルーイ情況が、「生きるエネルギーが減少してしまった若者をこ惑する」というのはあるかもしれない。それでも「内こもる」よりはいいのか悪いのか…なかなか考えさせる本でした。

ということで本年もよろしくお願いします。

再開!

2007-11-11 19:34:49 | Weblog
ということで、無事引越しも終わり、インターネットも繋がったので再開します。いやー疲れた、疲れた。

再開第一弾は、「はり100本 鍼灸で甦る身体 (新潮新書)」。鍼の本である。未だかつて鍼治療は受けたことがないが、ともかく効きそう。著者いわく、現代人の体は「鬱の身体」となっていて気や血が滞ってしまい体が正常に機能していない人が多いそうだ。それを鍼を打つことで一度体をバラバラにしてまた組み立てなおす。なんかいいでしょ、この感じ。来週早速、鍼試してみようかな。ともかくあらゆる病状にいいらしい(腰痛、偏頭痛、アレルギー、糖尿病、高血圧、癌等々)。まあ自己治癒能力の活性化を促すわけだから万病に効いても不思議はないか。

久しぶりに村上春樹の職人芸を見た気がする。本書「走ることについて語るときに僕の語ること」はマラソンに関して村上春樹が自ら走りながら(そして小説を書きながら)考えてきたことをエッセイ集としてまとめた本ですが、何ともない日常を淡々と書いているのに(だって単に走ることを延々と書いている訳で)なんともしんみりと味わい深く一気に読んでしまいました。小説家って普通家に閉じこもり気味で、夜通しタバコなんか吸って黙々と書いている姿を想像しますが、村上春樹ってまったくの正反対の生活。なんたってウルトラマラソンにまで出場するようなとても健康的(?)な生活を送りながら書き物しているらしい。そういう意味では村上龍のほうがまだ今までの小説家像を踏襲していますな。エッセイじゃなくて、また長編小説書いてくれないかなあ~。

お知らせ

2007-10-26 13:25:53 | Weblog
Jさんに代わってお知らせです。今週末いよいよ待望の引越し!ということで、暫くブログをお休みするそうです。というのも、Cableがつながるまではインターネットが出来ないのだそう。(このままやめちゃったりして・・・ちょっと心配)

来週は引越し

2007-10-21 16:51:58 | Weblog
このところ引越し準備に忙しく、本は読んでいるもののブログ更新さぼってます。そんなことで、今日も一冊の収録。

君たちに明日はない (新潮文庫 (か-47-1))」主人公はリストラ請負会社に勤める社員で、短編毎異なる業種の会社からリストラ業務を請負い、リストラ対象者を辞めさせていく話。と書くとずいぶん暗い話に聞こえるかと思いますが、まあどちらかというと人情物かな。しかしアメリカだったら問答無用に「クビ」なので、労働基準法上、所謂「クビ」ができない日本ならではの話です。なかなかいいところに目をつけたなあ、著者は。

さて来週は引越し。すこし落ち着いたらまとめて書きます。

雨の体育の日

2007-10-08 20:01:36 | Weblog
この本「裁判官が日本を滅ぼす (新潮文庫)」読んだら怖くて裁判なんかできません。すべての裁判官がそうではないとは思うけど、少なくともこの本に登場する実在の裁判官のEQはゼロ。でも確かにいままでの制度では、一度も社会で働くことなくひたすら司法官試験を勉強し、合格した途端に神様のような扱いを受けて育ってきた人々なわけで、そんな裁判官が蔓延ってしまうのもわかる気がする。けっこう、社会に出てから揉まれて育ってきた部分あるからなあ。最近はロースクール制度が出来、社会経験がある人たちがどんどん増えてくると思うので一安心。でも裁判官を目指す人は結局、司法試験オタクみたいな人ばかりだったりして。陪臣員制度と合わせ今後も注目。

むかしから自然科学系の本は殆ど読まなかったのだけど(ブルーブックスでも苦手)、この本「生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)」はちょっと評判だったので読んでみました。感想は無茶苦茶面白かったー。遺伝子研究について書かれているのだけれど、ある時はミステリー物、ある時は人情物、そしてある時はサスペンスという具合にぐいぐいと引き込まれる文章で読み手を飽きさせない。一気に読みきってしまいました。内容事態は高度な話で必ずしもすべて理解は出来ないんだけど(というか結構よくわからない部分も多い)、研究者のダイナミズムを感じさせる本でした。