付け焼き刃の覚え書き

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「シン・ゴジラ」 監督:庵野秀明

2017-03-23 | 怪獣小説・怪獣映画
「スクラップ&ビルドでこの国はのし上がってきた」
 最初に東京に核攻撃をすると言われたときの驚愕と怒りの表情、一転して「決定事項だ」と反対する矢口特命担当大臣を冷たく突き放し、そして最後に「せっかく崩壊した首都と政府だ」とこれを利用してやると野望に燃える赤坂内閣官房長官代理。この人の言動と表情を追いかけるだけでも満腹です。

 最近の邦画にお約束のラブシーンはないし、家族愛もないし、泣かせるドラマもないし、話題になりそうなジャニーズ系アイドルもお笑いタレントも出てないし、有名アーティストの主題歌も流れない。
 映画会社の広報担当がいうような「ウケる要素」はほとんどないけれど、逆に「ウケる要素」を詰め込んだあげく、映画の面白さにたいして貢献しないどころか、逆に興をそがれることの方が多かったので、これくらい思い切った作品は嬉しい。
 ラブシーンが要らないのではなく、話のテンポを悪くするだけのサービスシーンなら要らないんです。そこで唐突なシーンを入れるなら、もっと尺を割くべきシーンはあっただろうと。家族愛が要らないのではなく、家族を最優先したあげく回りを引っかき回すだけの主人公による愁嘆場がいらないんです。あと、死んだ肉親との再会も飽きました。宗教観もなしに、風物詩のごとく死んだ家族と話すとかね。
 アイドルやお笑い芸人は出るなというのではなく、浮いた演技しかできないキャストのために出番を増やすなというだけのこと。アイドルやお笑いの人でも、良い演技をする人はいくらでもいます。有名アーティストの曲だって嫌いじゃないですよ、作品の内容と合っていれば。

 話題作り優先で映画の出来が悪くなるような要素を詰め込んだ作品でなくて良かったなあと思いました(ただ、要望はあったらしく、その残り香がカヨコ・パタースンですね)。
 でも、まったく「ウケる要素」がなかったかというと、そんなことはなく、ただ疾風怒濤のセリフ回しと目まぐるしく変わる状況に翻弄されていく中にちりばめられていて、それを何回を見返していく中で掘り出す楽しみが与えられていたというリピーターが愉しめる造りになっていたのです。
 ヘドロかぶった前田敦子、可愛かったよね。
 嫁さん、KREVAさんの出番、あれだけ!ともったいながっていたです。
 森課長、家族と再会できているといいね。
 あとは「人の死んでいるシーンがない」って感想もありましたが、あの家族もあの人もあそこの人たちも助かりませんよね。直接的に人が死ぬ人が観たいなら、そういうフィルムを観てください。それくらい想像しなよ。(未使用映像やコンテ段階ではあったので、かなり切り捨てたようです)
 物語がリアルじゃないと文句をつける人もいないじゃないけれど、リアルと作劇におけるリアリティは違うし、そもそも現実にゴジラはいないからね?
 ただ、「俺は怪獣プロレスが観たかったんだ」という人は……それは仕方がありませんね。でも、そういう映画は今まで腐るほどあったので、たまにはいいじゃん。

 Blu-ray版については「マニアック!」のひとこと。劇場公開版と差異があるのはよくあるとしても、事細かにシーンごとに記録してるし、特典の予告編集はタイアップ版とか劇場毎やポップコーン版まで網羅してます。未使用フィルムも、同じシーンの同じテイクのカメラ違いまで収録しているし、使われなかったテレビのニュース映像やら通常番組やら延々と続いています。
 でも、やっぱり劇場で観たくなりますね。

【シン・ゴジラ】【庵野秀明】【樋口真嗣】【東宝】【長谷川博己】【竹野内豊】【石原さとみ】

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